熊本藩士でありながら、福井藩から招聘を受けて松平春嶽の政治顧問となりました。多くの偉人が伝わる幕末にあって、一際高い評価を受けた人物でもありました。
活躍を始めるまで
1809年に、熊本藩士の次男として誕生しました。横井氏は鎌倉幕府の執権であった北条氏を祖とする名家でした。小楠は号で、諱は時存といいます。楠木正成(大楠公)の子、楠木正行(小楠公)にあやかって名乗りました。
若くから英明であった小楠は、藩校の塾長にも就任し、江戸遊学も命ぜられるほどでしたが、藩の思想とは方向性が異なり、藩内ではあまり快く思われていませんでした。
福井藩との関係
北陸地方の福井藩と、九州地方の熊本藩ではずいぶんと距離が離れていますが、小楠と福井藩は切っても切れない関係でした。
きっかけは、小楠の開いた塾で、福井藩士が学んだところからでした。小楠という人物を伝え聞いた福井藩では、熊本藩主に何度も要請を繰り返し、なんとか小楠を福井に招くことが出来ました。熊本藩の方では、藩に対して批判的な小楠を他藩に送り出すことを渋っていたようです。
小楠は福井の藩校、明道館で講師を務めたりしましたが、特に大きな功績としては、松平春嶽の政治顧問が挙げられます。春嶽の側近であった橋本左内が小楠を推薦し、他藩の人物を福井藩の家老よりも上位の政治顧問として、春嶽に仕えさせたのです。身分を問わず優れた人物を重んじる性格だといっても、かなり珍しい例になるでしょう。
小楠は期待に応え、『国是三論』や『国是七箇条』などを説いています。小楠の思想は非常に開明的、改革的で、身分にとらわれず優れた人間を用いることや、多くの人間の意見を引き出すことなどを説いています。これは確かに春嶽の統治にも現れておりますので、確かに小楠の思想は福井藩政に影響を与えたといえるでしょう。
また、国是七箇条の内容は坂本龍馬の『船中八策』ともよく似ており、龍馬は小楠の影響を受けたとみられています。
問題は酒癖の悪さ
小楠は酒癖が悪いことで有名です。江戸から帰還するように命令が出されたのも、酒のせいでした。あるいはまた、友人達と飲んでいたとき、刺客に襲われたことがあります。友が襲われているのに自分だけ逃げ出したことを咎められて浪人の身となりますが、これも酒の入ったときのことでした。
能力的には小楠を信頼していた春嶽ですら酒での失敗を指摘していますし、母も兄弟も小楠に酒をやめさせたがっていたようです。
けれども本人は酒をやめるつもりは毛頭ないようで、飲み過ぎないようにしますよとは言うものの、それだけでした。
明治にかけて
坂本龍馬が薩摩と長州の同盟の架け橋となるべく奔走していた時期、小楠とも会っています。二人はだいぶ以前からの知り合いで、何度も意見を交わしていました。龍馬の方も小楠を非常に高く評価し、尊敬していたようです。
しかし、そのときの話し合いでは議論が折り合わず、けんか別れとなりました。当時蟄居中であった小楠は、以前のようには世界の情勢を把握していなかったといわれています。二人はそれ以降会っていないようですが、龍馬は新政府の参議として小楠を推薦していますので、やはりその能力を高く評価していたと思われます。
新政府の方から熊本藩に小楠を出仕させるように要請が来たものの、小楠を快く思っていない熊本藩はそれを拒絶しました。結局は岩倉具視の強い要請を熊本藩は断ることが出来ず、小楠は参与となりました。
しかし翌年。
時代や思想の転換期であったこの時期には珍しくない話ですが、外国の事情に通じ、革新的な思想を持っていた小楠は、保守的な人々から見ればやはり敵でした。六名の刺客に襲撃され、命を落としました。五十九歳でした。
横井小楠の名言集です。
「書巻何ぞ須く句解の為にある」
「人必死の地に入れば、心必ず決す」
「政治は、万民のためを判断基準とする王道を歩むべきで、権謀術数による覇道を排すべきだ」
「送左大二姪洋行」小楠の甥(横井左平太、大平)を渡米させた際におくった送別の語
明堯舜孔子之道 堯舜孔子の道を明らかにし、
尽西洋器械之術 西洋器械の術を尽くす。
何止富国 何ぞ富国に止まらん、
何止強兵 何ぞ強兵に止まらん、
布大義於四海而巳 大義を四海に布かんのみ。
有逆於心勿尤人 心に逆うこと有るも人を尤(とが)むること勿れ、
尤人損徳 人を尤むれば徳を損ず。
有所欲為勿正心 為さんと欲する所有るも心を正(あて)にすること勿れ、
正心破事 正にすれば事を破る、
君子之道在脩身 君子の道は身を脩(おさ)むるに在り。
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