藤堂高虎「己の立場を明確にできない者は頼りにならない」名言に学ぶ ビジネスプロフェッショナルの条件

戦国武将 名言集

戦国時代から江戸時代初期にかけて、波乱の世を生き抜いた藤堂高虎。七度主君を変えながらも最終的に津藩の大名にまで成り上がった稀有な経歴を持ち、築城や内政にも優れた手腕を発揮しました。その実利主義的で現実的な思考は、多くの含蓄に富んだ言葉として現代にも伝わっています。

「己の立場を明確にできない者こそ、いざというときに一番頼りにならない。」この言葉は、渡り奉公を通して様々な組織や人物を見てきた高虎の経験から生まれた、人間や組織の本質を見抜く洞察と言えるでしょう。現代ビジネスにおいても、個人の役割や責任が曖昧なことで生じる問題は少なくありません。

本稿では、藤堂高虎の波瀾万丈な生涯と、この名言に込められた真意を掘り下げます。そして、現代ビジネスにおける個人の「立場」を明確にすることの重要性、それがもたらすメリット、そして「いざというときに頼りになる」存在となるための具体的な実践法を探求します。

高虎が見抜いた「頼りにならない者」の本質

渡り奉公で培われた眼力

藤堂高虎は、浅井長政、織田信長、豊臣秀長、豊臣秀吉、豊臣秀頼、徳川家康と、名だたる戦国大名に仕えました。これほど多くの主君を変えながらも、その都度自身の価値を示し、最終的に大大名にまで出世した背景には、卓越した能力と共に、状況や相手を冷静に見極める眼力があったはずです。

異なる組織文化や人間関係の中で生き抜くためには、自身の役割を理解し、何を求められているのかを把握し、それに応える能力が不可欠です。高虎は、こうした経験を通して、「己の立場を明確にできない」人物がいかに組織にとってリスクとなり、頼りにならない存在であるかを痛感したのでしょう。

戦国時代は、個人の力量が組織の存亡に直結する厳しい時代です。それぞれの立場の者が、自らの役割を理解し、責任を果たさなければ、組織は機能不全に陥り、滅びる可能性が高まります。高虎は、こうした状況を数多く見てきたからこそ、この言葉の重要性を強く認識していたのです。

「立場を明確にできない」とは

「己の立場を明確にできない者」とは、単に指示待ちの人間を指すだけではありません。

これは、自分が組織の中でどのような役割を担っているのか、何を期待されているのか、どのような責任があるのかを理解できていない状態を指します。また、自分自身の意見や判断基準を持たず、周囲の状況や他者の意見に流されてしまうような、主体性のない人物も含まれるでしょう。

このような人物は、自身の「立場」が曖昧であるため、どのような状況で、どのように行動すべきかが判断できません。そのため、「いざというとき」、つまり予期せぬ問題が発生したり、迅速な判断や行動が求められたりするような局面で、適切に対応することができず、周囲から頼りにされなくなってしまいます。

「立場を明確にできない」状態は、個人の問題だけでなく、組織全体のパフォーマンス低下にも繋がります。それぞれの役割が曖昧なため、業務に重複が生じたり、責任の所在が不明確になったりして、組織全体の効率が悪くなってしまうのです。

ビジネスで「頼りになる存在」となるために

自身の役割と責任を理解する

藤堂高虎の言葉は、現代ビジネスにおいて「頼りになる存在」となるための第一歩として、自身の役割と責任を正確に理解することの重要性を示しています。

自分が担当している業務範囲、果たすべき目標、そしてそれに伴う責任を明確に把握する必要があります。これは、入社時に渡されるジョブディスクリプションを確認するだけでなく、上司や関係者と密にコミュニケーションを取り、期待される役割について共通認識を持つことが重要です。

自身の役割と責任を理解することで、日々の業務に優先順位をつけ、限られた時間とリソースを効果的に活用することができます。また、自分が果たすべき責任を自覚することで、より主体的に業務に取り組み、質の高い成果を目指すようになります。

自身の立場が明確な人物は、周囲からの信頼を得やすくなります。「この人に任せれば大丈夫だ」という安心感を与えることができるため、「いざというとき」に重要な仕事を任される可能性が高まります。

チームにおける立ち位置と貢献

「己の立場」を明確にすることは、個人だけでなく、チーム全体の成果にも繋がります。

チームメンバーそれぞれが自身の役割と責任を理解し、チームの中でどのような立ち位置で、どのように貢献すべきかを意識することで、チーム全体のパフォーマンスを最大化することができます。誰が何を担当し、どのような強みを持っているのかが明確であれば、効率的な連携が可能になります。

自身の専門性やスキルを活かしてチームに貢献する、他のメンバーをサポートする、困難な課題に積極的に取り組むなど、チーム内での「立場」を明確にし、積極的に関与することで、チーム全体の目標達成に貢献できます。

チームメンバーから「この人がいてくれて助かる」「この人に相談すれば解決できる」と思ってもらえるような存在になることこそ、「いざというときに頼りになる」チームプレイヤーの証と言えるでしょう。

ブレない軸と意思決定

「己の立場を明確にできない者」は、往々にしてブレやすく、状況によって意見や態度が変わってしまう傾向があります。

「頼りになる存在」となるためには、自分自身の仕事に対する価値観や判断基準、つまり「ブレない軸」を持つことが重要です。これは、単に頑固になるということではなく、様々な情報や意見を踏まえた上で、自分自身の考えを持ち、責任を持って意思決定できる能力を指します。

予期せぬ問題が発生したり、複数の選択肢の中から最適なものを選ばなければならなかったりするような「いざというとき」に、ブレない軸を持っている人物は、冷静かつ迅速に判断し、適切な行動をとることができます。こうした判断力と実行力は、周囲からの信頼を勝ち取る上で不可欠です。

自身の「立場」を明確にし、ブレない軸を持つことは、キャリア形成においても重要です。自分が何を大切にし、どのような分野で専門性を高めたいのかが明確であれば、自身のキャリアパスを主体的に選択し、目標達成に向けて着実に歩みを進めることができます。

「己の立場」を明確にするビジネス実践論

ジョブディスクリプションの理解と超越

自身の「立場」を明確にするための最初のステップは、自身の職務内容や期待される役割を正確に理解することです。

所属部署の目標、自身の役職や等級に求められる責任範囲、具体的な業務内容などを記したジョブディスクリプションをしっかりと確認し、理解を深めます。上司との面談を通じて、自身の役割について擦り合わせを行うことも有効です。

ただし、ジョブディスクリプションに書かれていることだけをこなすのでは、「いざというときに頼りになる」存在にはなりにくいかもしれません。自身の役割を理解した上で、さらに一歩進んで、チームや組織全体の目標達成に貢献できることは何かを常に考え、「期待される役割を超える」ような貢献を目指すことが重要です。

ステークホルダーとの期待値調整

自身の「立場」は、自分自身だけで決まるものではありません。上司、同僚、部下、顧客など、様々なステークホルダーとの関係性の中で定義されます。

これらのステークホルダーが自分に何を期待しているのかを把握し、お互いの期待値を擦り合わせることが重要です。定期的なミーティングやカジュアルな会話を通じて、自身の業務状況や考えを共有し、相手の期待や要望を聞き取ります。

期待値がずれている場合は、正直にその旨を伝え、調整を行う必要があります。これにより、誤解を防ぎ、スムーズな連携を促進することができます。お互いの「立場」と期待が明確になることで、より強固な信頼関係を築くことができます。

フィードバックの活用と自己省察

自身の「立場」が周囲からどのように見られているのか、そして「いざというときに頼りになる」存在になれているのかを知るためには、他者からのフィードバックを積極的に活用することが重要です。

上司からの評価や、同僚、部下からの率直な意見に耳を傾け、自身の強みや弱み、改善すべき点を把握します。フィードバックは、自身の立ち位置を客観的に把握するための貴重な機会です。

また、フィードバックを待つだけでなく、自ら定期的に自己省察を行うことも重要です。自身の業務遂行状況、目標達成度、周囲との連携などを振り返り、自身の「立場」が適切に果たせているのかを評価します。

フィードバックと自己省察を通じて、自身の「立場」を継続的に見直し、必要な改善を行うことで、より「頼りになる」存在へと成長していくことができます。

高虎の言葉が示すプロフェッショナルの要件

藤堂高虎の「己の立場を明確にできない者こそ、いざというときに一番頼りにならない。」という言葉は、現代ビジネスパーソンにとって、プロフェッショナルとして不可欠な要件を示しています。

それは、単に与えられた業務をこなすだけでなく、自身の役割と責任を深く理解し、チームや組織の中でどのような価値を提供できるのかを明確にすることです。そして、ブレない軸を持ち、主体的に意思決定し、困難な状況でも頼りになる存在であることです。

自身の「立場」を明確にし、それを周囲に示す努力を継続すること。これこそが、ビジネスにおける信頼を勝ち取り、キャリアを築いていく上で不可欠な要素です。藤堂高虎が激動の時代を生き抜き、大名にまでなったように、私たちもまた、自身の「立場」を明確にすることで、ビジネスの舞台での成功を掴み取っていけるはずです。

この記事を読んでいただきありがとうございました。

歩です。

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