武ある者が武なき者を足蹴にし、才ある者が才なき者の鼻面をいいように引き回す。
これが人の世か。ならばわしはいやじゃ。わしだけはいやじゃ。
強き者が強きを呼んで果てしなく強さを増していく一方で、弱き者は際限なく虐げられ、踏みつけにされ、一片の誇りを持つことさえも許されない。
小才のきく者だけが、くるくると回る頭でうまく立ち回り、人がましい顔で幅をきかす。
ならば無能で、人が好く、愚直なだけが取り柄の者は、踏み台となったまま死ねというのか。
それが世の習いと申すなら、このわしは許さん。（のぼうの城：成田長親）
豊臣秀吉の小田原征伐で、北条方についた成田氏の忍城は、石田三成の大軍による水攻めにも耐え、小田原城が落ちるまで唯一持ちこたえた城でした。城代の成田長親が少ない兵で守り抜き、戦後、城主の成田氏長は秀吉に敵対したにもかかわらず領地を与えられました。
長親の言葉は、時代を超えて、現代を生きる私たちビジネスマンの心にも深く突き刺さります。
「いやじゃ！」の精神
私たちは、日々の仕事の中で、理不尽なことや納得のいかない状況に直面することがあります。上司の独断的な決定、不公平な評価、一部の都合の良いように進められるプロジェクト…。そんな時、心の中で「いやじゃ！」と叫びたくなることはありませんか？
長親の言葉は、そんな私たちの素直な感情を肯定してくれます。「嫌なものは嫌でいいんだ」と。自分の心の声に耳を傾け、安易に妥協しないことの大切さを教えてくれます。
もちろん、感情的に反発することが常に正しいわけではありません。しかし、信念を持って「それは違う」「もっと良い方法があるはずだ」と声を上げることは、組織をより良くしていくために不可欠な姿勢です。
リーダーシップの本質：弱き者の目線を持つ
長親は、武力や知略だけが全てではないと考えていました。むしろ、力を持たない者、不器用な者たちの気持ちを理解し、彼らの誇りを守ろうとしました。この姿勢こそ、現代のリーダーシップに求められる重要な要素です。
真のリーダーは、チームのメンバー一人ひとりの個性や能力を尊重し、それぞれの持ち味を生かせる環境を作ります。一部の優秀な人材だけを優遇するのではなく、全員が安心して力を発揮できるような、公平で温かい組織文化を育むことが大切なのです。
共感と励まし：人が好く、愚直なあなたの価値
もしあなたが、要領が良いとは言えないけれど、人が好きで、真面目に仕事に取り組むタイプなら、どうか自信を持ってください。長親の言葉は、そんなあなたの存在こそが、社会にとってかけがえのない宝であることを教えてくれます。
小手先のテクニックや口先だけの言葉は、一時的に評価されるかもしれませんが、最終的に人の心を動かし、信頼を得るのは、あなたの誠実さや温かさです。
ビジネスマンへの具体的な提案
- 自分の「いやじゃ！」に耳を傾ける: 日々の業務で、心の底から納得できないこと、理不尽だと感じることに気づいたら、その感情を無視しないでください。
- チームメンバーの多様性を尊重する: チームの中に、様々な個性や能力を持つ人がいることを理解し、それぞれの強みを活かせる役割を与えるように心がけましょう。
- 失敗を恐れず挑戦する文化を作る: 失敗を責めるのではなく、そこから学びを得て成長する機会と捉える組織文化を育みましょう。
- 誠実さと人間味を大切にする: 目先の利益や効率だけでなく、倫理観を持ち、人としての温かさを忘れずに仕事に取り組みましょう。
- リーダーは弱者の視点を持つ: チームの中で、声の小さい人、困っている人に目を配り、彼らが安心して力を発揮できる環境を作ることを意識しましょう。
まとめ
成田長親の「わしはいやじゃ！」という叫びは、単なる反抗の言葉ではありません。それは、人間としての尊厳を守り、誰もが誇りを持って生きられる世の中を願う、魂の叫びです。
現代のビジネスシーンにおいても、私たちは時に、この「いやじゃ！」の精神を思い出す必要があります。理不尽なことには毅然と立ち向かい、弱者の視点を持ち、誠実さと人間味を大切にする。そんな姿勢こそが、私たちをより良い未来へと導く力となるはずです。
心の奥底に眠る「いやじゃ！」の声を大切に、自分らしい働き方を追求してみませんか？
この記事を読んでいただきありがとうございました。
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