犬山城巡り:国宝天守と歴史が息づく城下町

戦国時代のお城 一覧

愛知県犬山市の木曽川沿いにそびえる犬山城は、現存する五つの国宝天守の一つです。その美しい姿は、清流木曽川と緑豊かな自然に調和し、訪れる人々を魅了し続けています。別名「白帝城」とも呼ばれ、織田信長の叔父、織田信康によって築かれた歴史ある城です。戦国時代から江戸時代にかけて、多くの武将たちがこの城を巡る争いを繰り広げました。この記事では、犬山城の深い歴史から見どころ、周辺の観光情報まで、初めて訪れる方でも存分に楽しめるよう詳しくご紹介します。犬山城の魅力を心ゆくまで味わい、思い出に残る旅に出かけてはいかがでしょうか。

お城の歴史:誰がいつ築き、どんな役割を果たしたか

犬山城の歴史は、戦国時代の動乱期に始まります。天文6年(1537年)、織田信長の叔父である織田信康(おだのぶやす)によって、現在の犬山城の原型が築かれました。彼は、木曽川のほとりにあるこの地の戦略的な重要性を見抜き、城を築くことで尾張国(現在の愛知県西部)の北方を守る要衝としました。この頃の犬山城は、小規模な砦のようなものでした。

その後、犬山城は織田家内部の争いに巻き込まれます。信長の幼少期には、信長の弟である織田信清が城主を務め、一時は信長と対立した時期もありました。やがて信長が尾張を統一すると、犬山城は織田家の重要な支城としての役割を果たし、美濃国(現在の岐阜県南部)への侵攻拠点ともなりました。天正12年(1584年)には、小牧・長久手の戦いにおいて、豊臣秀吉方についた池田恒興(いけだつねおき)が犬山城を奪取し、秀吉軍の前線基地として利用されました。この戦いを通じて、犬山城の戦略的価値が改めて認識されることになります。

江戸時代に入ると、犬山城は尾張藩の付家老である成瀬正成(なるせまさなり)に与えられました。成瀬氏は、徳川家康の重臣であり、以降、成瀬氏が代々犬山城主を務めました。成瀬氏の時代に、現在の国宝天守の姿に大改修が行われ、城下町の整備も進みました。犬山城は、尾張藩の北の守りとして重要な役割を果たし、明治維新まで成瀬氏の居城として存続しました。

明治時代に入り、廃城令によって全国の多くの城が取り壊される中、犬山城も一時的に愛知県の所有となりましたが、成瀬家による私財を投じた修復活動が認められ、昭和10年(1935年)には国宝に指定されました。また、平成16年(2004年)には財団法人犬山城白帝文庫に寄付され、今日に至っています。犬山城の歴史は、戦国から江戸時代、そして近代へと続く激動の時代を物語るものです。城内を巡りながら、当時の武将たちの息遣いや、壮絶な戦いの様子に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

見どころ紹介:国宝天守、石垣、周辺の自然

犬山城公園には、日本に現存する最古級の天守をはじめ、かつての犬山城の姿を伝える貴重な見どころが数多く存在します。歴史好きの方でなくても、その荘厳な佇まいにはきっと心を奪われます。

国宝 犬山城天守

犬山城の最大の魅力は、やはり国宝に指定されている天守閣です。現存する五つの国宝天守の中でも最古の様式を持つとされ、その素朴ながらも力強い姿は、戦国の世を生き抜いた堅固な要塞であったことを物語ります。天守は望楼型三層四階地下一階の造りで、木造で非常に急な階段を上ると、最上階からは木曽川や犬山市街、遠くは岐阜城まで一望できます。

犬山城の石垣

犬山城は、木曽川のほとりの小高い山に築かれており、その地形を巧みに利用した石垣が見事です。特に、天守台の石垣は、自然石をそのまま積み上げる野面積みと呼ばれる工法で築かれており、ゴツゴツとした力強い印象を与えます。これは、築城当時の技術を今に伝える貴重な遺構です。石垣は、見る角度によって表情が異なり、堅固な防御を担っていたことがよく分かります。歴史の重みを感じさせる石垣の姿は、多くの訪問客を魅了します。

木曽川と犬山橋からの眺め

犬山城は、清流木曽川を望む高台に位置しています。犬山橋の上からは、木曽川と犬山城の美しいコントラストを望めます。特に、季節ごとに表情を変える木曽川の風景と、その背景にそびえる犬山城の姿は、一枚の絵画のような美しさです。夏には鵜飼が行われ、冬には澄んだ空気の中で遠くまで見渡せます。

からくり展示館

犬山城下町にある「からくり展示館」では、犬山祭で曳き出される車山(やま)に搭載されたからくり人形の仕組みや、その歴史について学べます。精巧な動きをするからくり人形の展示は、日本の伝統技術の高さを示すものです。

映える撮影スポット:人気の撮影場所や時期・時間帯のおすすめ

犬山城公園は、美しい写真が撮れるスポットが満載です。どの場所も魅力的ですが、特に「映える」と人気の撮影場所や、おすすめの時期・時間帯をご紹介します。

天守閣と桜の競演

春の犬山城は、桜に囲まれた天守閣の姿が最もフォトジェニックです。城郭周辺に植えられた桜が満開になると、まるで城が桜の霞の中から浮かび上がっているかのような幻想的な風景が広がります。桜の見頃は3月下旬から4月上旬です。早朝に訪れると、人影も少なく、澄んだ空気の中で桜と天守閣の美しいコラボレーションを独り占めできるでしょう。夜間のライトアップ時は、闇夜に浮かび上がる天守と桜が、昼間とは異なる神秘的な美しさを見せます。この景色は必見です。

木曽川からの犬山城

清流木曽川から眺める犬山城は、川と城、そして背景の緑が織りなす雄大な景色を撮影できます。遊覧船に乗って川から撮影すると、よりダイナミックな構図で城を捉えることができます。特に、朝霧が立ち込める早朝や、夕焼けに染まる夕暮れ時は、幻想的な一枚を撮れるかもしれません。四季折々の木曽川の表情と、犬山城の佇まいを合わせて撮影してみましょう。

城下町の風情ある通り

犬山城下町は、江戸時代の面影を残す古い町並みが広がっており、レトロな雰囲気の写真を撮影できます。特に、本町通りは、昔ながらの商家が軒を連ね、歩くだけでも楽しい場所です。古い建物と、賑わう人々の様子をスナップ写真で切り取るのも良いでしょう。日中の時間帯に、散策を楽しみながら様々な角度から撮影してみてください。着物レンタルをして、城下町の雰囲気に溶け込んだ写真を撮るのも人気です。

天守最上階からのパノラマ

犬山城天守の最上階からは、360度に広がるパノラマビューを撮影できます。木曽川の流れや、犬山市街、そして遠くの山々まで見渡せる絶景です。特に、晴れた日の午前中は、空気が澄んで遠くまで見通せ、雄大な景色を写真に収められます。望遠レンズを使って、遠くの景色を切り取るのも良いでしょう。城主が見たであろう景色を、自分の目で確かめ、写真に残してください。

現地体験:博物館見学、歴史散策、地域の催し物など

犬山城公園では、ただ景色を眺めるだけでなく、様々な体験を通じて犬山の歴史と文化に触れることができます。五感を使って、この地の魅力を深く感じ取ってください。

国宝天守閣の内部を見学する

犬山城最大の現地体験は、やはり国宝天守閣の内部を見学することです。非常に急な階段を上り下りしながら、当時の建築様式や、城の構造について学ぶことができます。天守内部の壁や柱には、築城当時の木材がそのまま使用されており、その歴史の重みを肌で感じられます。最上階の望楼からは、犬山市街や木曽川を360度見渡すことができ、天守の歴史や建築に関する説明も充実しているので、じっくりと見学してください。

犬山城下町の散策と食べ歩き

犬山城を訪れたら、隣接する犬山城下町を散策するのは外せない体験です。江戸時代の面影を残す古い町並みには、魅力的なお店が軒を連ねています。食べ歩きグルメも豊富で、五平餅や田楽、犬山牛太郎など、地元の味を楽しめます。また、伝統工芸品店やお土産屋さんを覗いたり、お洒落なカフェで一息ついたりするのも良いでしょう。着物レンタルをして、城下町を散策するのも人気です。まるでタイムスリップしたかのような気分を味わえます。

木曽川鵜飼の見学

夏の夜には、犬山城の眼下の木曽川で伝統的な鵜飼が行われます。篝火を焚いた鵜舟に乗って、鵜匠が鵜を巧みに操り、鮎を捕らえる様子を間近で見学できます。約1300年の歴史を持つ鵜飼は、夏の犬山の風物詩です。犬山城を背景に、幻想的な雰囲気に包まれながら、日本の伝統文化を体験する貴重な機会となるでしょう。事前予約が必要な場合が多いので、確認してください。

犬山祭への参加

毎年4月の第一土曜日と日曜日には、犬山祭が開催されます。国の重要無形民俗文化財にも指定されているこの祭りは、豪華絢爛な車山が城下町を巡行し、夜には提灯が灯されて幻想的な雰囲気に包まれます。車山に搭載されたからくり人形の演技は圧巻で、多くの見物客を魅了します。この時期に犬山を訪れるなら、ぜひ参加してみてください。

交通手段:電車・乗合自動車・車での行き方、最寄り駅など

犬山城公園へのアクセスは非常に便利です。様々な交通手段があるため、ご自身の旅のスタイルに合わせて選ぶことができます。

電車でのアクセス

犬山城の最寄り駅は、名鉄犬山線の犬山遊園駅、または犬山駅です。犬山遊園駅からは徒歩約15分、犬山駅からは徒歩約20分で犬山城に到着します。名鉄名古屋駅から犬山遊園駅、犬山駅へは特急列車で乗り換えなしでアクセス可能です。名古屋方面からの日帰り旅行にも非常に便利です。駅からの道中には案内表示も多く、迷うことなく城へたどり着けます。

乗合自動車(バス)でのアクセス

犬山駅からは、犬山城下町方面へのバスも運行しています。犬山駅東口のバス乗り場から、コミュニティバスに乗車し、「犬山城下町」停留所で下車すると、城下町の散策に便利です。ただし、犬山城自体へは駅から徒歩で十分アクセスできるため、バスの利用は限定的かもしれません。高齢の方や歩くのが苦手な方には、バスの利用も選択肢の一つとなります。

車でのアクセス

車で訪れる場合、中央自動車道の小牧東インターチェンジ(IC)または名神高速道路の小牧インターチェンジ(IC)が最寄りのインターチェンジです。各ICからは、一般道を経由して約20分から30分程度の所要時間で犬山城公園に到着します。犬山城公園周辺には、いくつかの有料駐車場が整備されています。犬山城第1駐車場や犬山城第2駐車場などが便利ですが、観光シーズンや週末は混雑することもありますので、早めの到着がおすすめです。公共交通機関の便が良いので、電車でのアクセスも検討してください。

周辺の観光名所:徒歩・公共交通で行ける名所

犬山城公園の周辺には、犬山の魅力をさらに深く味わえる観光名所が点在しています。犬山城を訪れた際は、ぜひこれらの場所にも足を延ばしてみてください。

犬山城下町

犬山城のすぐ麓に広がる犬山城下町は、江戸時代の風情が色濃く残る美しい町並みが魅力です。本町通りを中心に、古民家を改装したカフェやお土産屋さん、飲食店が軒を連ね、散策にぴったりの場所です。食べ歩きも人気で、様々なご当地グルメを味わえます。着物レンタルをして、レトロな街並みを背景に記念撮影を楽しむのもおすすめです。犬山城から徒歩圏内なので、セットで訪れるのが定番です。

三光稲荷神社

犬山城の登城口にある三光稲荷神社は、縁結びや金運アップにご利益があるとされる神社です。特に、ピンク色のハート型絵馬が人気で、多くの女性が願い事を書いて奉納します。千本鳥居の美しい朱色のトンネルは、写真撮影スポットとしても人気です。

針綱神社

犬山城の守護神として崇敬されてきた針綱神社は、安産や長寿にご利益があると言われています。犬山祭の際には、この神社から車山が曳き出され、祭りの出発点となります。趣のある本殿や、境内に立つ大きな木々が、厳かな雰囲気を作り出しています。犬山城のすぐ近くにあり、散策中に立ち寄れます。

有楽苑

犬山城の東側に位置する有楽苑は、織田信長の弟である織田有楽斎(おだうらくさい)が設計したとされる国宝茶室「如庵(じょあん)」がある庭園です。美しい庭園と、静寂な茶室の空間は、日本の伝統文化の粋を感じさせます。都会の喧騒を忘れ、心を落ち着かせるのに最適な場所です。犬山城から徒歩圏内なので、少し足を延ばして訪れてみましょう。

博物館明治村

犬山城から車で約20分程度の場所に位置する博物館明治村は、明治時代の建造物を移築・保存・展示している野外博物館です。聖ヨハネ教会堂や旧帝国ホテルなど、貴重な建物が数多く移築されており、明治時代の日本の様子を肌で感じられます。歴史的建造物の中に入って見学できるほか、当時の衣装を着て記念撮影も楽しめます。一日中楽しめる施設なので、時間に余裕を持って訪れるのがおすすめです。

ご当地の味とおすすめ店:城の近くで楽しめる食事&喫茶店

犬山城を訪れたら、ぜひ犬山ならではのご当地グルメを味わってみてください。城の周辺には、美味しい食事が楽しめるお店や、休憩にぴったりの喫茶店が数多くあります。

犬山城下町グルメ

犬山城下町には、食べ歩きにぴったりのグルメが豊富にあります。特に、串グルメが充実しており、散策しながら様々な味を楽しめます。

五平餅

愛知県や岐阜県で親しまれている五平餅は、犬山城下町でも定番の食べ歩きグルメです。潰したご飯に味噌ベースの甘辛いタレを塗って焼いたもので、香ばしい香りが食欲をそそります。複数の店舗で提供されており、お店ごとにタレの味や餅の形が異なります。

田楽

犬山地方の田楽は、味噌を塗って焼いた豆腐やこんにゃくなどが特徴です。特に「犬山串田楽」は、食べ歩きに便利な串刺しタイプで人気があります。香ばしい味噌の風味と、素材の味が絶妙にマッチします。城下町を散策しながら、小腹が空いた時にぴったりです。

犬山牛太郎

犬山牛太郎は、犬山城下町で人気の串グルメです。牛肉を串に刺して焼いたもので、手軽に美味しく牛肉を味わえます。ジューシーな肉の旨みが口の中に広がり、多くの人に愛されています。ビールとの相性も抜群です。

昭和横丁

犬山城下町にある「昭和横丁」は、昭和レトロな雰囲気を楽しめる複合施設です。昔懐かしいおもちゃや雑貨を販売するお店のほか、カフェや食事処も入っています。懐かしい雰囲気の中で、ゆっくりと休憩するのにぴったりの場所です。かき氷や昔ながらのジュースなども味わえます。

蔵元 義侠のカフェ

犬山城下町にある老舗酒蔵「義侠」には、直営のカフェが併設されています。こちらでは、日本酒の試飲ができるほか、酒粕を使ったスイーツや、こだわりのコーヒーなどを味わえます。趣のある空間で、大人な時間を過ごしたいときにおすすめです。

周辺名所への行き方:徒歩何分/交通手段などの簡潔な案内

犬山城公園から周辺の観光名所へのアクセスについて、簡潔にまとめました。

  • 犬山城下町: 犬山城から徒歩すぐ、約1分〜5分。
  • 三光稲荷神社: 犬山城の登城口に隣接、徒歩約1分〜3分。
  • 針綱神社: 犬山城のすぐ近く、徒歩約1分〜3分。
  • 有楽苑: 犬山城から徒歩約10分。
  • 博物館明治村: 犬山城から車で約20分。犬山駅からバスも運行。
  • 活魚廻転寿司いちもん 誉田店: 小弓城跡から車で数分。
  • 五平餅・田楽・犬山牛太郎: 犬山城下町の各店舗で販売、犬山城から徒歩圏内。
  • 昭和横丁: 犬山城下町内、犬山城から徒歩約5分〜10分。
  • 蔵元 義侠のカフェ: 犬山城下町内、犬山城から徒歩約5分〜10分。

まとめ:初心者にもおすすめの理由、旅の秘訣

犬山城は、日本に現存する国宝天守の中でも最古級の美しさを誇り、歴史の重みを感じられる特別な場所です。歴史に詳しくない方でも、その力強い姿や、木曽川の絶景、そして城下町の風情に感動を覚えます。天守内部の見学や、からくり展示館での学習を通じて、城の深い歴史や文化に触れることができます。

また、春の桜、夏の鵜飼、秋の紅葉、冬の澄んだ空気と、四季折々の美しい表情を見せるのも魅力です。名古屋方面からのアクセスも良く、日帰り旅行にも最適です。国宝犬山城を訪れることで、戦国時代の息吹を感じ、日本の建築技術の粋を肌で感じられます。ぜひこの機会に、犬山城を訪れてみてください。きっと素晴らしい思い出が作れます。

この記事を読んでいただきありがとうございました。

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