日本語の敬語表現は奥深く、特に自己紹介や目上の人への言動で迷うのが「申します」と「申し上げます」の使い分けではないでしょうか。どちらも「言う」の謙譲語ですが、そのニュアンスと適切な使用場面には明確な違いがあります。この記事では、これらの言葉をマスターし、自信を持って使いこなすための極意を深掘りしていきます。
謙譲語とは?再確認から始めよう
「申します」も「申し上げます」も、どちらも謙譲語に分類されます。謙譲語は、自分がへりくだることで相手への敬意を示す表現です。相手を立て、自分を低く見せることで、スムーズな人間関係を築くための重要なツールとなります。
しかし、一言で謙譲語といっても、その「へりくだり方」には度合いがあります。この度合いの違いが、「申します」と「申し上げます」の使い分けの鍵となるのです。
「申します」:控えめな謙譲、自己紹介や軽い言及に
「申します」は、自分自身が何かを「言う」という行為を、比較的穏やかに謙遜する際に用いられます。日常会話や、そこまでかしこまる必要のない場面でよく使われます。
「申します」の具体的な使用例
- 自己紹介:
- 「〇〇と申します。」(最も一般的な自己紹介の形)
- 「株式会社〇〇の田中と申します。」
- 名前や所属を伝える時:
- 「担当は山田と申します。」
- 「先ほどお電話差し上げました、鈴木と申します。」
- 軽い情報伝達や言及:
- 「本日、会議は10時からと申しました。」(自分が言ったことを伝える)
- 「部長が、明日は晴れると申しておりました。」(他者の言葉を伝える際にも使われますが、より丁寧にするなら「おっしゃいました」などが適切です)
ポイント: 「申します」は、自己紹介や自分の名前を伝える際など、「私自身が〇〇です」という事実を謙遜して述べるときに非常に自然です。また、相手への尊敬の度合いがそこまで高くない場合や、日常的な会話で自分の行動を述べる際にも使われます。
「申し上げます」:より丁重な謙譲、目上の人への発言や重要な報告に
一方、「申し上げます」は、相手に対する敬意をより強く表し、自分の発言を非常に丁重に伝える際に用いられます。目上の人への報告や、公の場での発言、重要な内容を伝える際に適しています。
「申し上げます」の具体的な使用例
- 目上の人への報告や意見表明:
- 「ご報告申し上げます。」(丁重な報告の始まり)
- 「一点、ご提案申し上げます。」
- 「先日の件につきまして、お詫び申し上げます。」(深く謝罪する際に)
- 「大変恐縮ではございますが、申し上げたいことがございます。」
- かしこまった場面での発言:
- 「皆様にご挨拶申し上げます。」
- 「改めて感謝の意を申し上げます。」
ポイント: 「申し上げます」は、相手への行為として「言う」という動作を最大限にへりくだることで、相手を強く立てる表現です。「申し上げる」の「上げる」という部分に、相手に対して何かを「差し上げる」というニュアンスが含まれており、その分、丁寧さの度合いが高まります。相手への敬意をより強く伝えたい場面で積極的に使いましょう。
まとめ:使い分けの極意は「相手への敬意の度合い」と「場面」
「申します」は比較的穏やかな謙遜で、自己紹介など、自分の存在や発言を控えめに伝えるときに使われます。主な使用場面は、日常会話、自己紹介、名前や所属を伝える時、軽い情報伝達です。
これに対し、「申し上げます」はより丁重な謙遜で、相手への敬意を強く表し、発言を重く伝える際に用いられます。主な使用場面は、目上の人への報告や意見、謝罪、公的な場での発言、重要な内容の伝達です。
使い分けの極意は、一言で言うと「相手への敬意の度合い」と「場面」です。
- 「申します」は、自分の名前を名乗る際など、「私は〇〇です」という事実を謙遜して述べる場合に自然です。
- 「申し上げます」は、相手に対して何かを「(言葉で)差し上げる」という意識で、より丁寧に伝えたい場合に用います。
迷った際は、「より丁寧な方が良いか、それとも一般的な謙遜で十分か」を考えると良いでしょう。ビジネスシーンやフォーマルな場では、「申し上げます」を使うことで、より丁寧な印象を与えることができます。しかし、過剰に使いすぎるとかえって不自然になる場合もあるため、状況に応じた適切な使い分けが重要です。
この記事を読んでいただきありがとうございました。