石川県の中心地、金沢市にそびえる金沢城は、かつて加賀百万石を誇った前田家の居城でした。壮大な石垣と広大な敷地は、訪れる人々へ当時の繁栄を伝えています。現在は金沢城公園として整備され、歴史的な建造物の復元が進むとともに、市民や観光客が憩える場所として親しまれています。この記事では、金沢城の深い歴史から見どころ、周辺の観光情報まで、初めて訪れる方でも存分に楽しめるよう詳しくご紹介します。金沢城の魅力を心ゆくまで味わい、思い出に残る旅を始めてはいかがでしょうか。
金沢城の歴史:誰がいつ築き、どんな役割を果たしたか
金沢城の歴史は、天文15年(1546年)に本願寺が金沢御堂を創建したことに始まると伝えられています。この地は、古くから戦略上の要衝として注目されていました。その後、天正8年(1580年)には織田信長の命を受けた佐久間盛政が築城を開始し、現在の城郭の基礎が築かれました。
金沢城の歴史で最も重要な役割を担ったのは、やはり加賀藩の祖である前田利家です。天正11年(1583年)、利家が金沢に入城すると、本格的な城づくりが始まります。彼はこの地を百万石の居城として整備し、加賀藩の発展の礎を築き上げました。江戸時代を通じて、金沢城は前田家14代にわたる居城として、北陸地方の政治、経済、文化の中心であり続けました。
明治時代に入ると、金沢城は陸軍の拠点となり、終戦後から平成7年(1995年)までは金沢大学のキャンパスとして利用されていました。金沢大学の移転に伴い、平成13年(2001年)9月に金沢城公園として一般公開される運びとなりました。現在も、菱櫓や五十間長屋、河北門、橋爪門、鼠多門など、往時の姿を伝える歴史的建造物の復元が進められており、当時の工法を忠実に再現する職人の技術も見どころの一つです。金沢城の歴史は、単なる城の成り立ちにとどまらず、加賀百万石の文化と繁栄の物語を今に伝えています。城内を巡ることで、その壮大な歴史に触れられます。
見どころ紹介:かつての面影を今に伝える遺構
金沢城公園には、かつての金沢城の姿を伝える貴重な見どころが数多く存在します。歴史好きの方でなくても、その荘厳な佇まいにはきっと心を奪われます。
菱櫓、五十間長屋、橋爪門続櫓
金沢城のシンボルとも言えるのが、平成13年に復元された菱櫓、五十間長屋、そして橋爪門続櫓です。特に、菱櫓はその名の通り、ひし形の内角を持つ独特の建物で、大手門の裏側を見張る物見櫓としての役割がありました。天守閣を持たなかった金沢城にとって、これらの建物は城の顔であり、県民に親しまれてきました。
五十間長屋は、かつて武器などを納める倉庫であり、戦時には二の丸を守る城壁としての防御機能も備えていたといいます。内部に入ると、釘やボルトを一切使わない日本古来の工法で忠実に再建された、職人の卓越した技術を見ることが可能です。ここがすごい、と感じる場所の一つです。
石川門
金沢城の搦手門(裏門)にあたる石川門は、重要文化財にも指定されています。現在の門は天明8年(1788年)に再建されたものです。門の手前には桜が植えられ、春には美しい桜と門の風景が広がります。金沢城といえばこの景色を思い浮かべる方も多いでしょう。夜間にはライトアップされ、昼間とは異なる幻想的な美しさを見せてくれます。
玉泉院丸庭園
平成27年に整備された玉泉院丸庭園は、かつて前田家歴代藩主が愛した庭園を再現したものです。色とりどりの石を配置した壮大な池泉回遊式庭園は、四季折々の美しい表情を見せます。特に、夜のライトアップは「幻想空間」と称されるほど魅力的です。水の流れや石の配置にも深い意味があり、当時の庭園文化の粋を感じられます。
鼠多門・鼠多門橋
令和2年(2020年)に復元された鼠多門と鼠多門橋は、金沢城の新たな見どころです。藩政期に兼六園と城を結ぶ重要な通路であり、かつては木橋が架けられていました。鼠多門は、敵の侵入を防ぐための厳重な造りをしており、城の防御機能の一端を垣間見ることができます。橋を渡ると、玉泉院丸庭園へと繋がり、歴史と自然が調和した美しい景観を楽しめます。
金沢城公園を巡ることで、その壮大な歴史と、職人の技が光る建造物の数々に感動を覚えるはずです。時間をかけて、じっくりとその魅力を探してみてください。
映える撮影スポット:人気の撮影場所や時期・時間帯のおすすめ
金沢城公園は、写真撮影に最適なスポットが満載です。どの場所も魅力的ですが、特に「映える」と人気の撮影場所や、おすすめの時期・時間帯をご紹介します。
石川門と桜の競演
春の石川門は、金沢城公園で最も人気の撮影スポットの一つです。門の手前に植えられた桜が満開になると、歴史ある門と淡いピンクの桜が織りなす風景は息をのむ美しさです。特に、石川橋を渡りながら撮影すると、門全体を収めた雄大な一枚が撮れるでしょう。見頃は3月下旬から4月上旬で、早朝に訪れると、静かな中で桜と門のコラボレーションを独り占めできます。
玉泉院丸庭園のライトアップ
玉泉院丸庭園のライトアップは、金沢城公園の夜の顔とも言える絶景です。毎日日没から22時まで行われるライトアップは、庭園の池や木々が幻想的に照らされ、昼間とは全く異なる表情を見せます。特に、池に映り込む光の反射は、神秘的な雰囲気を醸し出します。撮影するなら、薄明かりが残る夕暮れ時がおすすめです。
菱櫓、五十間長屋、橋爪門続櫓の全景
これら三つの建物が連なる姿は、金沢城の象徴的な景観です。城内から見上げる壮大さはもちろん、離れた場所からその全景を収めるのもおすすめです。広々とした芝生広場から、これらの建物を背景に記念撮影をすると、金沢城の規模感を伝える一枚が撮れるでしょう。時間帯としては、建物の陰影が美しく映える午前中がおすすめです。
秋の紅葉と城郭
秋になると、金沢城公園内の木々が赤や黄色に色づき、城郭とのコントラストが美しい景色を作り出します。特に、玉泉院丸庭園周辺や水堀沿いの紅葉は見事です。11月上旬から下旬が見頃で、夕陽に照らされた紅葉は、より一層鮮やかに輝きます。
現地体験:博物館見学、歴史散策、地域の催し物など
金沢城公園では、ただ景色を眺めるだけでなく、様々な体験を通じて金沢の歴史と文化に触れることができます。五感を使って、この地の魅力を深く感じ取ってみてください。
金沢城公園内の施設で歴史を学ぶ
金沢城公園内には、金沢城の歴史や構造に関する情報が展示されている施設があります。例えば、菱櫓や五十間長屋の内部には、当時の木造建築技術や石垣の積み方に関するパネル展示が充実しています。釘を一切使わない伝統的な木造軸組工法で作られた建物は、熟練した宮大工たちの卓越した技術の証です。これらの展示を見ることで、金沢城がどのように築かれ、どのような工夫が凝らされていたかを深く知ることが可能です。
VR映像で二の丸御殿を体験
金沢城のかつての中心であった二の丸御殿は、現在復元に向けて取り組みが進められています。鶴の丸休憩館に設置されたシアターでは、VR映像を通じて、往時の二の丸御殿の様子を仮想体験できます。最新の技術で再現された豪華絢爛な御殿の内部を歩き、当時の生活を想像することは、貴重な経験になるはずです。歴史を視覚的に捉えることで、より深い理解が得られます。
県民参加による城づくりを体験する
金沢城の復元事業では、「県民参加による城づくり」という取り組みが行われてきました。河北門、橋爪門、鼠多門の復元にあたり、多くの人々が寄進し、その寄進者の名前が記された瓦や壁板が実際に建物に使われています。各復元建物内には「記名内容閲覧システム」が設置されており、寄進した瓦などの使用場所や記名内容を閲覧できます。
金沢市内での伝統工芸体験
金沢城公園の周辺では、金沢の豊かな伝統文化に触れる体験もできます。例えば、金沢箔を使った金箔工芸体験や、加賀友禅の着付け体験など、様々なワークショップが市内の各所で提供されています。池田屋安兵衛商店では、昔ながらの製法で薬を製造する様子を見学したり、実際に丸薬作りの体験も可能です。
交通手段:電車・乗合自動車・車での行き方、最寄り駅など
金沢城公園へのアクセスは非常に便利です。様々な交通手段があるため、ご自身の旅のスタイルに合わせて選ぶことができます。
電車でのアクセス
金沢城の最寄り駅は、JR金沢駅です。北陸新幹線も停車する金沢駅は、東京方面からはもちろん、関西や東海方面からも特急列車で直接アクセスできます。金沢駅から金沢城公園までは、徒歩で約15分から20分ほどの距離です。金沢駅の兼六園口(旧東口)を出て、南へ進むと金沢城公園へたどり着きます。
路面電車・乗合自動車(バス)でのアクセス
金沢駅からバスを利用するのが、最も便利で一般的です。金沢駅兼六園口(旧東口)のバスターミナルからは、「城下まち金沢周遊バス」や路線バスが頻繁に運行しています。
- 城下まち金沢周遊バス:右回りルートを利用する場合、「兼六園下・金沢城(石川門向い)」停留所で下車すると、石川門口からすぐです。左回りルートを利用する場合は、「兼六園下・金沢城(白鳥路前)」停留所で下車します。料金は一乗車おとな200円、こども100円です。
- 路線バス:金沢駅から「兼六園下」停留所または「広坂」停留所で下車すると、金沢城公園の各入口にアクセスできます。
バスを利用すれば、駐車場の心配をすることなく、快適に金沢城を訪れることができます。
車でのアクセス
車で訪れる場合、北陸自動車道の金沢西IC、金沢東IC、金沢森本ICが最寄りのインターチェンジです。各ICから金沢城公園までは、約20分から30分程度の所要時間です。金沢城公園の周辺には、いくつかの有料駐車場があります。兼六園下駐車場や金沢城公園地下駐車場などが便利ですが、観光シーズンや週末は混雑することもありますので、早めの到着や公共交通機関の利用も視野に入れることをおすすめします。
周辺の観光名所:徒歩・公共交通で行ける名所
金沢城公園の周辺には、金沢の魅力をさらに深く味わえる観光名所が点在しています。金沢城を訪れた際は、ぜひこれらの場所にも足を延ばしてみてください。
兼六園
金沢城公園に隣接する兼六園は、岡山後楽園、水戸偕楽園と並ぶ日本三名園の一つです。四季折々の美しい景観が楽しめ、特に冬の雪吊りは金沢の風物詩として有名です。金沢城石川門から兼六園桂坂口までは、徒歩数分でアクセスできます。歴史と自然が調和した美しい庭園は、ゆっくりと散策するのに最適です。
金沢21世紀美術館
金沢城公園の玉泉院丸口から徒歩3分程度の場所に位置する金沢21世紀美術館は、現代アートの宝庫です。円形のユニークな建物自体が芸術作品であり、体験型の展示も多く、子どもから大人まで楽しめます。屋外にもアート作品が点在しており、美術館全体が魅力的な空間となっています。金沢城の歴史的な雰囲気から一転、現代アートの世界に浸るのも楽しいものです。
ひがし茶屋街
金沢城公園からバスや徒歩でアクセスできるひがし茶屋街は、江戸時代の情緒が残る美しい街並みが魅力です。木虫籠(きむすこ)と呼ばれる美しい格子が特徴の茶屋建築が立ち並び、タイムスリップしたような感覚を味わえます。お洒落なカフェや伝統工芸品店、お土産店も多く、散策にぴったりです。金沢城公園からはバスで約10分、徒歩で約15分から20分程度です。
長町武家屋敷跡
金沢城公園からバスで香林坊を経由し、徒歩数分の場所にある長町武家屋敷跡は、土塀や石畳の小路が続く、加賀藩上級武士の屋敷跡です。今でも江戸時代の雰囲気が色濃く残されており、ドラマや映画のロケ地としてもよく使われています。武家屋敷野村家など、一般公開されている施設もあり、当時の武士の暮らしを垣間見ることができます。金沢城から徒歩でアクセスする場合は、約15分から20分かかります。
近江町市場
「金沢市民の台所」として親しまれる近江町市場は、新鮮な海の幸や地元の野菜、果物が豊富に揃う活気あふれる市場です。海鮮丼や新鮮な魚介を使った料理を提供する飲食店も多く、食べ歩きも楽しめます。金沢駅から徒歩圏内であり、金沢城公園からもバスや徒歩でアクセスしやすい場所にあります。金沢城からは徒歩約15分から20分です。
これらの周辺名所を巡ることで、金沢城の歴史だけでなく、金沢の豊かな文化や自然、そして現代の魅力にも触れることができるはずです。様々な側面から金沢を楽しんでください。
ご当地の味とおすすめ店:城の近くで楽しめる食事&喫茶店
金沢城を訪れたら、ぜひ金沢ならではのご当地グルメを味わってみてください。城の周辺には、美味しい食事が楽しめるお店や、休憩にぴったりの喫茶店が数多くあります。
のどぐろと海鮮料理
金沢の海の幸といえば、高級魚として名高い「のどぐろ」が外せません。脂がのったとろけるような食感と上品な旨味は、一度味わうと忘れられない美味しさです。その他にも、新鮮な日本海の魚介類を堪能できます。
のど黒めし本舗 いたる
のどぐろ料理で連日行列ができる人気店が、香林坊にある「のど黒めし本舗 いたる」です。特に「のど黒めし」は、焼きのどぐろを贅沢に使ったひつまぶしスタイルで、様々な食べ方で美味しさを堪能できます。金沢城公園から徒歩圏内(約10分)にあり、昼食や夕食におすすめのお店です。
金沢まいもん寿司
金沢はお寿司も美味しいことで知られています。中でも「金沢まいもん寿司」は、地元で人気の回転寿司店です。新鮮なネタはもちろんのこと、能登牛や加賀野菜など、地元の食材を使った創作寿司も楽しめます。金沢駅や香林坊にも店舗があり、金沢城からのアクセスも良好です。
金沢カレー
金沢独自の進化を遂げた「金沢カレー」も、地元で愛されるB級グルメです。濃厚でドロッとしたルーに、カツやソーセージが乗り、その上からソースがかかっているのが特徴です。キャベツの千切りが添えられていることも多く、独特のスタイルで提供されます。
カレーのチャンピオン
金沢カレーの代表的なお店といえば、「カレーのチャンピオン」、通称「チャンカレ」です。多くの県民に親しまれており、金沢市内に複数の店舗があります。
ハントンライス
金沢の洋食店で生まれた「ハントンライス」は、ケチャップライスの上に魚のフライや海老フライがのり、半熟卵で覆われた上からケチャップとタルタルソースがかかっている、見た目も華やかな一品です。地元の人々に長く愛されているソウルフードです。
グリルオーツカ
ハントンライスを食べるなら、昭和32年創業の老舗洋食店「グリルオーツカ」がおすすめです。テレビでも度々紹介される有名店で、観光客にも人気があります。金沢城公園から香林坊方面へ徒歩でアクセス可能です。
喫茶店で一息
金沢城公園を散策して疲れたら、近くの喫茶店で休憩するのも良いでしょう。兼六園や21世紀美術館周辺にも、お洒落なカフェや落ち着いた雰囲気の喫茶店が多く点在しています。
これらの美味しいお店で、金沢の食の魅力も存分に楽しんでください。旅の思い出が、より一層豊かなものになるはずです。
周辺名所への行き方:徒歩何分/交通手段などの簡潔な案内
金沢城公園から周辺の観光名所へのアクセスについて、簡潔にまとめました。
- 兼六園: 金沢城公園石川門から徒歩約数分。
- 金沢21世紀美術館: 金沢城公園玉泉院丸口から徒歩約3分。
- ひがし茶屋街: 金沢城公園からバスで約10分、徒歩で約15分から20分。
- 長町武家屋敷跡: 金沢城公園から香林坊までバスで移動後、徒歩数分。または金沢城公園から徒歩約15分から20分。
- 近江町市場: 金沢城公園からバスまたは徒歩約15分から20分。
- のど黒めし本舗 いたる: 金沢城公園から徒歩約10分(香林坊方面)。
- カレーのチャンピオン: 金沢城公園周辺にも店舗あり。
- グリルオーツカ: 金沢城公園から徒歩圏内(香林坊方面)。
まとめ:初心者にもおすすめの理由、旅の秘訣
金沢城は、歴史に詳しくない方でも十分に楽しめる魅力あふれる場所です。その理由は、金沢城公園として整備され、歴史的な建造物が分かりやすく復元されていること、美しい石垣や庭園など見どころが豊富であること、そして金沢市の中心部に位置し、アクセスが非常に便利だからです。歴史的な見どころだけでなく、美しい公園や周辺の現代的な施設も楽しめ、幅広い年代の方におすすめできます。
旅の秘訣は、時間に余裕を持って訪れることです。ただ城を見るだけでなく、兼六園や金沢21世紀美術館といった隣接する主要観光スポットを合わせて巡ると、より一層金沢の魅力を深く感じられます。
金沢城を訪れることで、加賀百万石の歴史と文化に触れることができます。ぜひこの機会に、金沢城を訪れてみてください。きっと素晴らしい思い出が作れるはずです。
この記事を読んでいただきありがとうございました。