【完全版】スーツの一番下のボタンは飾り?知らないと恥をかく「アンボタンマナー」と着こなしの鉄則

間違いやすいシリーズ

街中やオフィスで、ふと他人のスーツ姿を見て「何かが違う」「だらしないな」と感じることはありませんか? その違和感の正体は、スーツのサイズ感であったり、靴の汚れであったりしますが、意外と多いのが「ボタンの留め間違い」です。

「とりあえず全部留めておけば真面目に見えるだろう」
「座った時にボタンを外すのは失礼ではないか?」

もしあなたがそう思っているなら、知らず知らずのうちにマナー違反を犯している可能性があります。スーツの着こなしには、世界共通の厳格なルールが存在します。それはファッションというよりも、ビジネスにおける「共通言語」のようなものです。

本記事では、意外と知られていない「一番下のボタンを留めてはいけない理由」から、プロフェッショナルが見ている「袖・裾・小物」のチェックポイントまで、スーツ着こなしの正解を徹底解説します。明日からのスーツ姿が劇的に変わる、大人の教養講座です。

スーツのボタンは「全部留めない」が世界標準

まず、今回の核心である「ジャケットのボタン」について解説します。結論から言えば、一般的なスーツにおいて「一番下のボタンは留めない」のが鉄則です。

アンボタンマナー(Unbutton Manner)とは

スーツの一番下のボタンを留めずに開けておくことを、専門用語で「アンボタンマナー」と呼びます。これは「あえて外す」のではなく、「外しておくのが正式な着方」なのです。

なぜでしょうか。理由は大きく分けて二つあります。

  • デザイン上の理由:現代のスーツは、一番下のボタンを外した状態で最も美しいシルエットが出るように設計されています。無理に留めると、生地に不自然なシワ(X字のシワ)が寄り、裾が左右に引っ張られて型崩れを起こします。
  • 歴史的な理由:諸説ありますが、かつてのイギリス国王エドワード7世が、パーティで食べすぎてお腹が苦しくなり、ベストの一番下のボタンを外したところ、周りの貴族たちが「王に恥をかかせてはいけない」と同じように外したことが起源と言われています。これがジャケットにも派生し、現代のマナーとして定着しました。

ボタンの数別・正しい留め方ガイド

持っているスーツのボタンの数によって、留める位置は決まっています。自分のスーツを確認してみましょう。

2つボタンスーツの場合

最も一般的なタイプです。

  • 上のボタン:留める
  • 下のボタン:留めない(開けておく)
3つボタンスーツの場合

クラシックなスタイルに見られるタイプです。

  • 一番上:留める
  • 真ん中:留める
  • 一番下:留めない

ただし、最近の3つボタンスーツには「段返り(だんがえり)」と呼ばれるタイプが多く存在します。これは一番上のボタンが襟(ラペル)の裏側に隠れるように反り返っているデザインです。
この「段返り3つボタン」の場合は、実質2つボタンと同じ扱いになります。

  • 一番上(襟の裏):留めない
  • 真ん中:留める
  • 一番下:留めない

つまり、段返りの場合は「真ん中の一つだけ」を留めるのが正解です。

「座るとき」と「立つとき」の美しい所作

ボタンにはもう一つ、上級者に見える重要なルールがあります。それは「動作に合わせてボタンを開閉する」ことです。

着席時は「ボタンをすべて外す」

商談や会議で椅子に座る際、ジャケットのボタンはどうしていますか? 多くの日本人が「留めたまま」座っていますが、欧米のビジネスマナーとしては「座るときはボタンを外す」のが正解です。

ボタンを留めたまま座ると、ジャケットの前裾が大きく左右に割れたり、お腹周りの生地が上に持ち上がって窮屈に見えたりします。また、生地に強い負荷がかかり、ボタンが取れやすくなる原因にもなります。

「失礼にあたるのでは?」と心配する必要はありません。「リラックスして腹を割って話しましょう」というサインにもなり得ますし、何よりスーツを傷めないための合理的な所作です。
スッと椅子に腰掛けながら、流れるような動作でボタンを外す。これができれば、かなりのスーツ通に見られます。

起立時は「素早くボタンを留める」

重要なのはここからです。立ち上がるときは、素早く上のボタンを留めます。だらしない状態で歩き出さないよう、立ち上がると同時にボタンに手をかけるのがスマートな所作です。

「座るときは外し、立つときは留める」。この一連の動作を無意識にできるようになれば、あなたの立ち居振る舞いは洗練されたものになります。

ベスト(ジレ)を着用する場合のルール

最近はスリーピース(ジャケット+ベスト+パンツ)のスタイルも人気です。ベストを着る場合にも、固有のルールがあります。

ベスト着用時のボタンマナー

ベストに関しても、ジャケット同様「一番下のボタンは留めない」のが基本です(※例外として、礼服などで裾が水平にカットされているデザインの場合は留めることもあります)。

そして最大の特徴は、ベストを着ている場合、「ジャケットのボタンはすべて開けていて良い」ということです。
ベストが体の中心を隠し、きちんとした印象を作っているため、ジャケットの前を開けていても失礼にはなりません。むしろ、中のベストを見せることで、立体的でたくましい胸元を演出できます。

【シャツとネクタイ】Vゾーンで決まる第一印象

ボタン以外にも、スーツスタイルには「ここだけは押さえておくべき」ポイントがあります。まずは顔周りの印象を決めるシャツとネクタイです。

シャツの袖は「1.5cm」見せる

ジャケットの袖口から、シャツが全く見えていない、あるいは出すぎているのはNGです。
理想は「1cm ~ 1.5cm」ほどシャツが覗いている状態です。これには「ジャケットの袖口が直接肌に触れて汚れるのを防ぐ」という実用的な役割もあります。

手を下ろした状態で、シャツの袖が手首のくるぶし(骨が出っ張っている部分)にかかるくらいの長さが目安です。

首の後ろの「襟の抜け」をチェック

後ろ姿も重要です。ジャケットの襟から、シャツの襟が「1cm ~ 1.5cm」ほど出ているのが正しいバランスです。
もしシャツの襟がジャケットに隠れてしまっている場合、ジャケットのサイズが大きすぎるか、シャツの襟が小さすぎる可能性があります。逆にシャツが出すぎている場合は、ジャケットが小さすぎます。

ネクタイの長さは「ベルトのバックル」基準

ネクタイを結んだとき、大剣(太い方の剣先)がどの位置に来ていますか?
短すぎてお腹が見えていたり、長すぎてズボンにかかりすぎていたりするのは、非常にバランスが悪く見えます。

正解は「大剣の先が、ベルトのバックルに半分かかる程度」です。直立した状態でベルトのバックルが隠れるか隠れないか、その絶妙な長さを目指しましょう。

【パンツと足元】「おしゃれは足元から」の真実

視線は先端に集まります。足元の乱れは、全身の印象を台無しにします。

パンツの裾丈は「ハーフクッション」が無難

パンツの裾が靴の甲にあたってできるシワを「クッション」と呼びます。

  • ワンクッション:裾が靴の甲にしっかりあたり、折り目ができる長さ。クラシックで落ち着いた印象。
  • ハーフクッション:裾が靴の甲にわずかに触れる長さ。現代のビジネススーツの標準。
  • ノークッション:裾が靴に触れない長さ。カジュアルで軽快な印象だが、ビジネスでは靴下が見えすぎるリスクがある。

迷ったら「ハーフクッション」を選びましょう。清潔感と誠実さを両立できる長さです。

靴下の鉄則「素肌を見せない」

ビジネスシーンにおける最大のタブーの一つが、「足を組んだときにすね毛が見えること」です。
くるぶし丈のスニーカーソックスなどは論外です。必ずふくらはぎまで隠れる「ロングホーズ(ハイソックス)」を選びましょう。

色は、スーツか靴の色に合わせます。ネイビーのスーツにはネイビーの靴下、黒の靴には黒の靴下。白い靴下は学生服のイメージになるため、ビジネスでは使用しません。

ベルトと靴の色合わせは絶対条件

これは基本中の基本ですが、「ベルトの色」と「靴の色」は必ず統一します。
黒い靴なら黒いベルト、茶色の靴なら茶色のベルトです。ここがちぐはぐだと、全体がまとまりのない印象になります。できれば革の質感(スムースレザーか、型押しレザーか)まで合わせると、より洗練されて見えます。

ポケットの「フラップ」と「詰め込みすぎ」問題

最後に、意外と知らないポケットの扱いについてです。

フラップ(雨蓋)は入れる?出す?

ジャケットの腰ポケットについているフタ(フラップ)。これは本来、雨やホコリがポケットの中に入るのを防ぐためのものです。

  • 屋外:雨除けのため「外に出す」
  • 屋内:埃が舞うわけではないので「中にしまう」

これが正式なマナーとされています。しかし、現代ではそこまで厳密に区別する必要はなく、屋内でも出しっぱなしで問題ないとされる傾向にあります。
最も重要なのは「左右で揃える」ことです。右は入っているのに左は出ている、という状態が一番だらしなく見えます。

また、フォーマルな場(結婚式や重要な式典)では、ポケットのないデザインが正式とされるため、フラップを中にしまってポケットがないように見せるのがスマートです。

ポケットは「物入れ」ではない

スーツのポケットに、分厚い長財布、スマートフォン、名刺入れ、キーケースなどをパンパンに詰め込んでいませんか?
スーツは美しいラインを見せるための服です。ポケットに物を詰め込んでシルエットが崩れるのは、最も避けるべき事態です。

基本的に、スーツのポケットには「何も入れない」のが理想です。入れるとしても、薄いハンカチやメモ帳程度に留めましょう。財布やスマホは鞄に入れるか、どうしても身につける場合は内ポケットを利用し、外側のシルエットに響かないように注意します。

まとめ:スーツの着こなしは「相手への敬意」

ここまで、ボタンの留め方から足元のルールまで解説してきました。これらを「面倒くさい」「堅苦しい」と感じるでしょうか。

しかし、スーツのマナーとは、単なる形式的なルールではありません。「私はビジネスの場におけるルールを理解し、細部まで気を配ることができます」という無言のアピールであり、対峙する相手への「敬意」の表現でもあります。

一番下のボタンを外す。座るときにボタンを外す。靴とベルトの色を揃える。一つ一つは小さなことですが、その積み重ねが「信頼できるビジネスパーソン」としてのオーラを作ります。

まずは明日、家を出る前に鏡の前で「一番下のボタン」を確認することから始めてみませんか? 正しい着こなしは、必ずあなたのビジネスを後押ししてくれる鎧となるはずです。
この記事を読んでいただきありがとうございました。

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