角を立てずに入金を促す!未払い・入金遅れの「督促メール」作成ステップと例文

間違いやすい敬語シリーズ

月末を過ぎ、通帳を確認したあなたの背筋が凍ります。

「あれ? 〇〇社からの入金がない……」

ビジネスにおいて、報酬や売上の「未回収」は死活問題です。しかし、それ以上に悩ましいのが、「どうやって相手に催促するか」というコミュニケーションの問題ではないでしょうか。

「強く言って関係を壊したくない」

「でも、言わないとなめられてしまうかもしれない」

「もしかして、こちらのミスだったらどうしよう」

そんな不安から、つい連絡を先延ばしにしてしまう人も少なくありません。ですが、入金遅れへの対応は「スピード」が命です。時間が経てば経つほど、言いにくくなり、回収率も下がります。

安心してくだい。相手を不快にさせず、むしろ「しっかりしたビジネスパートナーだ」と信頼を高めながら入金を促す魔法のフレーズと手順は存在します。

この記事では、未払い発生時の心構えから、絶対に角が立たない「クッション言葉」の技術、そして状況に応じたコピペOKのメール文例集までを完全解説します。

1. 督促メールを送る前の「マインドセット」

メールを書き始める前に、まずは心の持ち方を変えましょう。これだけで、文章のトゲが消え、スムーズに書けるようになります。

相手は「悪人」ではなく「うっかり屋さん」と思え

入金が遅れる理由の9割は、悪意のある未払いではありません。以下のようなヒューマンエラーがほとんどです。

  • 請求書が他のメールに埋もれていた
  • 担当者が経理に回すのを忘れていた
  • 振込予約の日付を間違えた
  • 銀行のシステム処理が遅れている

つまり、相手を「お金を払わない悪い人」と敵視するのではなく、「忙しくて忘れている人をサポートしてあげる」というスタンスに立つことが重要です。

「行き違い」を前提にする

これが最強の防御策です。「あなたが払っていない」と断定するのではなく、「もしかしたら、もう払ってくれたかもしれませんが、こちらで確認できていません」というスタンスを取ります。

これにより、万が一こちらの確認ミスだった場合でも、「失礼しました、行き違いでしたね」と笑顔で終わらせることができます。

2. 角を立てないための「3つの鉄則テクニック」

ビジネスメールにおいて、相手のプライドを傷つけずに要求を通すためのテクニックをご紹介します。

① 件名は「督促」ではなく「確認」にする

件名に【督促状】【至急】といった言葉が入っていると、相手は威圧感を感じ、防衛本能が働きます。

おすすめは【ご確認】【ご相談】です。

× 件名:【至急】〇月分請求書の入金について

○ 件名:【ご確認】〇月分のご入金状況につきまして

② 魔法のクッション言葉「行き違い」を使う

本文の冒頭には、必ず以下のフレーズを入れます。

「本メールと行き違いですでにご入金済みの場合は、何卒ご容赦ください。」

この一文があるだけで、「あなたを疑っているわけではありません」というメッセージになり、相手の逃げ道を作ることができます。

③ 請求書を「再添付」する優しさ

「請求書は前に送っただろ!」と思わず、再送のメールにも請求書(PDF)を添付しましょう。

「手元にないから探すのが面倒で後回し」という事態を防ぎ、「気が利く人だ」と思わせることができます。

3. 【段階別】そのまま使える督促メール文例集

それでは、遅延の日数や状況に合わせた具体的なテンプレートをご紹介します。

レベル1:入金予定日の翌日〜3日後(ライトな確認)

まだ「うっかり」の可能性が高い段階です。相手を責めず、「事務的な確認」のトーンで送ります。「経理処理上の確認」という体裁をとるのがスマートです。

件名:【ご確認】〇月分のご入金状況につきまして(株式会社〇〇 佐藤)

株式会社△△

経理担当者様(またはご担当者様)

いつも大変お世話になっております。

株式会社〇〇の佐藤です。

本日は、〇月ご請求分のご入金状況についてご連絡いたしました。

弊社にて通帳記帳を行いましたところ、

本日現在、貴社からのご入金が確認できていない状況でございます。

本メールと行き違いですでにお手続き済みの場合は、

大変失礼いたしました。何卒ご容赦くださいませ。

もし、お手続きがまだの場合は、

お忙しいところ恐縮ですが、状況をご確認いただけますと幸いです。

念のため、先日お送りした請求書を再添付いたします。

ご不明な点などがございましたら、お気軽にお申し付けください。

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【ご請求内容】

・請求書番号:No.2023-xxxx

・ご請求金額:¥110,000-(税込)

・当初お支払期限:2023年〇月〇日

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引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

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(署名)

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レベル2:1週間〜10日経過(少し強めの再確認)

最初のメールに返信がなく、入金もない場合です。少しトーンを強めますが、まだ「何かトラブルがあったのでは?」という心配の姿勢を崩しません。

件名:【再送】〇月分請求書のお支払いにつきまして(株式会社〇〇 佐藤)

株式会社△△

ご担当者 鈴木 様

いつもお世話になっております。

株式会社〇〇の佐藤です。

先日(〇月〇日)にお送りいたしました、

〇月分のご請求(請求書番号:No.2023-xxxx)の件でご連絡いたしました。

その後、ご確認いただけましたでしょうか。

本日改めて入金確認を行いましたが、

まだ着金の確認が取れていないようでございます。

もし、請求書が届いていない、あるいは内容にご不明点がある等の

事情がございましたら、至急再発行やご説明をさせていただきます。

お手数ですが、一度ご連絡をいただけますでしょうか。

万が一、お振込みをお忘れだった場合は、

【〇月〇日(金)】までにお手続きいただけますと幸いです。

ご多忙の折、度々のご連絡となり大変恐縮ですが、

何卒よろしくお願い申し上げます。

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(署名)

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【ポイント】

「いつまでに振り込んでほしいか」という具体的な期限を提示します。

レベル3:月末をまたいだ場合・連絡がつかない場合(警告)

ここまで来ると、会社の資金繰りにも影響しかねません。丁寧語は崩しませんが、毅然とした態度で「困っている」ことを伝えます。

件名:【至急】ご請求金額のお支払いに関する重要なお願い(株式会社〇〇)

株式会社△△

ご担当者 鈴木 様

平素よりお世話になっております。

株式会社〇〇の佐藤です。

大変申し上げにくいことではございますが、

〇月〇日期限の請求書(No.2023-xxxx)につきまして、

現在もご入金ならびにご連絡をいただけておらず、大変困惑しております。

本件につきまして、何か特別なご事情等はございますでしょうか。

もし本メール確認後、〇月〇日までにご入金、

あるいはご連絡をいただけない場合、

誠に不本意ではございますが、今後のサービス提供の見合わせや、

しかるべき対応を検討せざるを得なくなります。

弊社といたしましても、鈴木様とは今後も良好な関係を

続けていきたいと強く願っております。

至急、状況をお知らせいただけますよう、重ねてお願い申し上げます。

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(署名)

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【ポイント】

「サービス停止」などのデメリットを示唆します。ただし、「良好な関係を続けたい」というフォローを入れることで、最後の情に訴えます。

4. よくあるイレギュラー対応の切り返し

メールを送った後、相手から返信があった場合の対応例です。

ケースA:「忘れていました! すぐ払います!」と言われた時

ここで嫌味を言ってはいけません。罪悪感を持っている相手を許すことで、信頼残高が増えます。

ご連絡ありがとうございます。

ご状況、承知いたしました。ご多忙の中、ご確認いただき感謝申し上げます。

どなた様にもうっかりはあることですので、どうぞお気になさらないでください。

それでは、〇日のご入金をお待ちしております。

今後ともよろしくお願いいたします。

ケースB:「来月末まで待ってほしい」と言われた時

資金繰りの悪化が疑われます。安易にOKせず、条件をつけるか、上長確認とするのが無難です。

ご事情、拝読いたしました。

本来であれば期日までのお支払いをお願いしているところですが、

今回は社内で相談の上、検討させていただきます。

恐れ入りますが、確実にご入金いただける期日を

改めてお約束いただけますでしょうか?

(※場合によっては「一部入金」をお願いするのも有効です)

5. メールを送っても反応がない時の「電話」のマナー

メールを無視される場合、電話をするしかありません。しかし、いきなり「金払え」と言うのはNGです。

電話の第一声スクリプト

「お世話になっております。〇〇の佐藤です。

今お時間よろしいでしょうか?

実はメールでもお送りさせていただいたのですが、

〇月の請求書の件で、メールが届いているか心配でご連絡いたしました。

ひょっとして、迷惑メールなどに入ってしまっておりませんでしょうか?」

ポイントは「メール不達の確認」を口実にすることです。

これにより、相手は「無視していた」という気まずさを感じずに電話に出ることができます。そこで「あ、実は忘れてて……」となれば、「いえいえ、確認できてよかったです」とクロージングできます。

6. 二度と遅れさせないための予防策

督促業務は、生産性がゼロの時間です。そもそも督促をしなくて済む仕組みを作りましょう。

① 請求書送付時に「入金期限」を本文に明記する

添付ファイルを開かないと期限が分からないのは不親切です。メール本文に「お支払期限:〇月〇日」と太字で書きましょう。

② 期日の「3日前」にリマインドを送る

これが最も効果的です。「次回の打ち合わせの確認」などの用件にかこつけて、ついでにお金の話をします。

「次回の定例会ですが、〇月〇日でいかがでしょうか。

追伸:先日の請求書の期日が近づいておりますので、あわせてご確認をお願いいたします。」

③ 支払条件を明確にした契約書を結ぶ

口約束での取引はリスクが高いです。特に初回取引時は、「月末締め翌月末払い」などのルールを明文化しておきましょう。

まとめ:督促は「信頼確認」の作業である

お金の請求をすることを「卑しいこと」「申し訳ないこと」と感じる必要は全くありません。

あなたは素晴らしいサービスや商品を提供し、相手はその対価を支払う。これは対等で健全なビジネスの基本です。

むしろ、なあなあにせず、期日通りにしっかりと請求管理ができる人こそ、ビジネスパートナーとして信頼されます。

  1. 相手の「うっかり」を前提にする
  2. 「行き違い」というクッション言葉を使う
  3. 期限を区切って淡々と伝える

この3つを守れば、関係を壊すことなく、スムーズに入金を促すことができます。

さあ、まずは深呼吸をして。一通目の「優しい確認メール」から送ってみましょう。
この記事を読んでいただきありがとうございました。

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