見積書や提案書、あるいは契約書のドラフトをメールで送る際、結びの言葉として何を使っていますか?
おそらく、多くの方が「添付資料をご確認お願いいたします」というフレーズを使われているのではないでしょうか。これはビジネスにおいて基本の挨拶ですし、決して間違いではありません。礼儀正しく、丁寧な表現です。
ただ、もしこの一言を少し工夫するだけで、相手が資料を開く時のワクワク感が高まり、結果として契約や合意に一歩近づくとしたら、試してみたいと思いませんか?
実は、成果を出し続けている営業職の方や、スムーズにプロジェクトを進める方のメールを見ると、この「ご確認」という言葉を別の表現に言い換えていることが多いのです。
この記事では、いつもの「ご確認お願いいたします」を、相手への思いやりが伝わり、自然と前向きな検討を促すような「洗練された一言」にするためのヒントをご紹介します。明日からのメール作成で、少しだけ意識を変えてみませんか?
なぜ「ご確認」という言葉を変える必要があるの?
具体的な言い換えの例を見る前に、少しだけ「言葉の受け取り手」の気持ちになって考えてみましょう。なぜ、定型文である「ご確認」を変えることが、コミュニケーションを円滑にするのでしょうか。
「確認」は、時に相手の負担になることも
忙しい時に「資料をご確認ください」というメールを受け取った時のことを想像してみてください。もちろん悪気がないのは分かっているのですが、無意識のうちに「間違いがないかチェックしなきゃ」「数字を精査しなきゃ」と、少し身構えてしまうことはないでしょうか。
「確認」という言葉には、どうしても「間違いを探す作業」や「責任を持って承認する」という、少し重たいニュアンスが含まれてしまいます。そのため、忙しい相手だと「重たい作業は後回しにしよう」と思われてしまい、返信が遅れる原因になってしまうこともあるのです。
目指したいのは「未来」をイメージしてもらうこと
一方で、コミュニケーションが上手な人が大切にしているのは、資料を見ることを「作業」ではなく、「良い未来への第一歩」として感じてもらうことです。
「この資料を見れば、課題解決のヒントがあるかも」「この内容なら、プロジェクトが上手くいきそうだ」。そう思ってもらえるような言葉を添えることで、相手は「チェックしなきゃ」ではなく「早く見てみたい」という気持ちでファイルを開いてくれます。
言葉一つで、相手の心理的なハードルを下げ、ポジティブな気持ちを引き出すことができるのです。
シーン別:「ご確認」をグレードアップする言い換えのヒント
それでは、具体的にどのような言葉を使えば、相手に心地よく受け取ってもらえるのでしょうか。シーン別に、すぐに使える言い換えのアイデアをご紹介します。
1. 提案書・企画書を送る場合
ここでは、「読んでください」とお願いするのではなく、相手にとってのメリットや、ワクワク感を共有するような表現がおすすめです。
いつもの表現:「企画書を添付しました。ご確認お願いいたします。」
これでも十分丁寧ですが、少し事務的な印象になってしまうかもしれません。
言い換えのヒント:「御社の課題解決に向けた道筋を描いてみました。ご希望に沿えているか、お目通しいただけますでしょうか。」
言い換えのヒント:「理想の実現に向けたプランとなっております。イメージと相違ないか、ご覧いただけますと幸いです。」
【ポイント】
「課題解決」や「理想の実現」というポジティブな言葉を入れることで、「この資料には価値がある」と感じてもらえます。また、「確認」を「お目通し」や「ご覧いただく」とすることで、相手への強制感が薄れ、より柔らかな響きになります。
2. 見積書を送る場合
金額を提示する時は、どうしてもお互いに緊張が走る瞬間です。単なる「コストの提示」ではなく、「価値の提案」であることを意識してみましょう。
いつもの表現:「お見積書を作成しました。内容のご確認をお願いいたします。」
これだと、どうしても金額の「高い・安い」だけに目が向いてしまいがちです。
言い換えのヒント:「費用対効果を最大化できるプランで算出いたしました。導入後のイメージと合わせ、ご検討いただけますでしょうか。」
言い換えのヒント:「プロジェクト始動に必要な構成案となっております。最適なプランとなっているか、ご高覧ください。」
【ポイント】
「費用対効果」や「プロジェクト始動」といった言葉を添えることで、提示した金額が単なる出費ではなく、未来への投資であることを優しく伝えることができます。
3. 契約書・発注書を送る場合
契約の段階まで来たら、あとはスムーズにゴールまで進みたいものです。「間違い探し」を依頼するのではなく、「新しいスタート」を演出する言葉を選んでみましょう。
いつもの表現:「契約書をお送りします。条項のご確認をお願いいたします。」
契約書の「確認」は心理的な負担が大きい作業です。もう少し背中を押しやすい表現にしてみましょう。
言い換えのヒント:「来月からのスタートに向けて、契約内容をまとめました。手続きをスムーズに進めるため、内容をご覧ください。」
言い換えのヒント:「安心してプロジェクトを開始いただけるよう、詳細を記載いたしました。お手すきの際にお目通しをお願いします。」
【ポイント】
「スタートに向けて」や「安心して開始いただけるよう」という言葉があるだけで、契約書へのサインが「事務手続き」から「前向きな合意」へと印象が変わります。
相手の「YES」を引き出しやすくする、ちょっとした工夫
言葉の選び方に加えて、相手が返信しやすくなるような、ちょっとした気遣いのテクニックもご紹介します。
「間違い探し」ではなく「気になるところ探し」をお願いする
「これで問題ないですか?」と聞かれると、相手は「問題ない」と言い切ることに責任を感じてしまいます。そこで、少しハードルを下げてあげましょう。
- 言い換えのヒント:「もし気になる点や、方向性のズレなどがございましたら、お気兼ねなくお申し付けください。」
「NOがあれば教えてください」というスタンスで投げかけると、相手は「ざっと見て、大きな違和感がなければ大丈夫そうだな」とリラックスして資料を見ることができます。結果として、返信までのスピードが早まることが多いのです。
「もしも」の話として提案する
まだ発注が決まっていない段階で、詳細な資料を見てもらうのは気が引けることもありますよね。そんな時は「仮定の話」としてお渡しするのも一つの手です。
- 言い換えのヒント:「もし進めるとした場合のシミュレーションを作成してみました。具体的なイメージ作りの参考にご覧ください。」
「契約するかどうかは一旦置いておいて、まずはイメージだけ見てみませんか?」というスタンスです。これなら相手も警戒せずに資料を開いてくれますし、具体的な内容を見ることで「やっぱりやりたいな」という気持ちが芽生えるかもしれません。
まとめ:言葉を変えることは、視点を変えること
「ご確認お願いいたします」という言葉を使うことは、決して悪いことではありません。多忙な業務の中で、定型文を使うことで効率化することも大切です。
ただ、ここぞという大切な場面や、相手に気持ちよく動いてほしい時には、少し立ち止まって言葉を選んでみてはいかがでしょうか。
「確認してください」というお願いを、「一緒に未来を共有しましょう」という招待状に変えてみる。
そんな小さな心配りが、相手にとっては「自分のことを考えてくれている」という信頼感につながります。ぜひ、次にメールを送る際は、相手の顔を思い浮かべながら、あなたらしい「洗練された一言」を添えてみてください。
この記事を読んでいただきありがとうございました。