【「でございますね」は実はくどい?】電話対応のプロが教える「自然な敬語トーン」と「スマートな復唱」術

間違いやすい敬語シリーズ

電話対応において、相手が話した内容を正確に聞き取り、確認する「復唱」は、ミスの防止と相手への安心感を与える上で非常に重要なプロセスです。その際、「〇〇でございますね」「〇〇様でいらっしゃいますね」といった、最大限に丁寧な表現を使うよう指導されることがあります。

これらの表現は、形式的には正しい敬語であり、特にホテルや高級な接客業などでは有効です。しかし、一般のビジネスシーンや、スピード感を求める取引先とのやり取りにおいては、「でございますね」という表現が、かえって「くどい」「まどろっこしい」「芝居がかった」といった、不自然で過剰な印象を与えてしまうことがあります。

本記事では、この「でございますね」がなぜくどく聞こえるのかを分析し、電話対応のプロが実践する、「敬意は保ちつつ、自然でスマート」な「復唱術」を解説します。相手に「この人はデキる」と思わせる「自然な敬語トーン」への転換術と、具体的な例文をご紹介します。

「でございますね」が「くどい」と感じられる構造分析

相手の言葉を復唱する際、「〇〇でございますね」という表現が、なぜ不自然に聞こえるのか、その構造を分析します。

「二重敬語」がくどさの原因ではない

「〜でございますね」は、「〜です」の丁寧語である「〜でございます」に「ね」という確認の助詞をつけたものです。「でございます」自体は二重敬語ではありません(「です」の丁重語)。

しかし、この「ございます」という丁重語が持つ「重さ」が、日常の会話には不向きなのです。

「丁重語の過剰使用」による不自然さ

「ございます」は、もともと「ある」の丁寧語(ございます)や、「です」の丁寧語(でございます)として、非常に格式高く、改まった場面で使われます。

これを、電話で何度も繰り返される「復唱」のたびに使うと、会話全体のトーンが必要以上に重くなり、「かしこまりすぎ」という印象を与えてしまいます。また、語尾の「ね」が、「ございます」の重さと相まって、どことなく「慇懃無礼(いんぎんぶれい)」、つまり丁寧すぎてかえって失礼なトーンに聞こえるリスクさえあります。

電話対応のプロが教える「自然な敬語トーン」の転換術

プロの電話対応は、「最も自然で、最も相手に負担をかけない」敬語トーンを意識します。それは、「ございます」よりも一段軽い、「です・ます調」を基本とし、「謙譲語・尊敬語」を必要な箇所でのみ使うというテクニックです。

【結論】復唱は「でございますね」ではなく「でよろしいでしょうか」へ

復唱の目的は、「正確な確認」です。この目的に最も適した、スマートで自然な敬語表現は、以下の形です。

  • NG(くどい): 「本日10時のご予約でございますね。」
  • OK(スマート): 「本日10時のご予約でよろしいでしょうか。」

「〜でよろしいでしょうか」は、「〜で間違いありませんか」と、相手に確認(評価)を求める際の正しい丁寧語です。「ございます」を使わないことで、会話のテンポを損なわず、軽やかに正確性を確認できます。

「スマートな復唱」を実現する例文10選

相手に「この人はデキる」と思わせる、自然な敬語トーンでの「復唱術」を、具体的な場面ごとにご紹介します。

カテゴリ1:日時・金額などの「事実確認」

内容の正確性を穏やかに確認する、最も汎用性の高い表現です。

1. 〇〇でよろしいでしょうか

(基本形)相手の負担なく、最も自然に「間違いがないか」を尋ねる表現です。

例文:「明日の14時スタートでよろしいでしょうか。」

2. 〇〇で間違いございませんか

「よろしいでしょうか」よりも、少し厳密に「間違いがないか」を確認したい場合に使う表現です。

例文:「金額は消費税込みで5万5千円で間違いございませんか。」

3. 復唱させていただきます

相手に「これから確認します」と宣言し、ミスを防ぐ意識を示す、プロの定番フレーズです。

例文:「念のため、もう一度復唱させていただきます。〜〜で相違ございません。」

カテゴリ2:相手の「氏名・会社名」の確認

相手自身に関わる情報は、尊敬語を用いて丁寧に確認します。

4. 〇〇様でいらっしゃいますね

(この表現はOK)相手の存在には尊敬語である「いらっしゃる」を使います。「でございます」と異なり、相手への敬意を示す必須の言葉です。

例文:「株式会社〇〇の田中様でいらっしゃいますね。」

5. 〇〇様と承りました

「聞きました」の謙譲語である「承る」を使い、相手の名前を「謹んで受け止めた」という姿勢を示します。復唱の後に付け加えることで、丁寧さを高めます。

例文:「〇〇様と承りました。いつもお世話になっております。」

カテゴリ3:依頼や意向の「理解確認」

相手の意図や指示が正確に理解できたかを確認する表現です。

6. 〇〇ということで、承知いたしました

「わかりました」の謙譲語「承知いたしました」を使い、「理解した」ことを示します。この後に確認の内容を簡潔に復唱します。

例文:「資料はメールで送付するということで、承知いたしました。」

7. 〇〇と理解しましたが、相違ございませんか

やや硬い表現ですが、特に複雑な指示や専門的な内容について、曖昧さを残さずに確認したい場合に有効です。「相違(違い)」がないかを問うことで、正確性を期します。

例文:「こちらの解釈では〇〇となりますが、相違ございませんか。」

カテゴリ4:次のアクションの確認

復唱の後に、自分が次に取るべき行動までを宣言し、安心感を与えます。

8. 〇〇の件、かしこまりました。すぐに手配いたします

「承知いたしました」よりも、さらに迅速に対応する意思を示すのが「かしこまりました」です。復唱と同時に、具体的なアクションを宣言します。

例文:「来週月曜日の変更、かしこまりました。すぐに手配いたします。」

9. 念のため、再度確認させていただきます

聞き取った内容の重要度が高い場合に、あえて時間をもらい、確認の正確性を担保する表現です。

例文:「誠に恐縮ですが、金額の件は念のため、再度確認させていただきます。」

10. 〇〇の件、間違いなく承りました

全てのやり取りが終わり、電話を切る直前の最終確認として、強い安心感を与える表現です。

例文:「〇〇の件、間違いなく承りました。ご安心ください。」

まとめ:電話敬語は「重さ」ではなく「正確性」と「軽やかさ」

電話対応のプロが目指すのは、形式的に完璧な「重い敬語」ではありません。目指すべきは、相手との会話のテンポを崩さず、「正確な復唱」を通じて「安心感」を与え、「デキる人」という印象を与える「軽やかな敬語トーン」です。

過剰な丁重語である「でございますね」を避け、その代わりに「〜でよろしいでしょうか」を基本形とするのが、スマートな復唱術です。そして、相手の氏名などには「いらっしゃる」という尊敬語を正しく使うことで、全体のトーンを整えましょう。

このスマートな復唱術を実践することで、あなたの電話対応は、ただ丁寧なだけでなく、確実で信頼できる、プロフェッショナルなものへと進化します。

この記事を読んでいただきありがとうございました。

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