「させていただく」の正しい使い方とNG例 | 乱用を避けるスマートな言い換え集
ビジネスシーンの会話やメールで、「確認させていただきます」「資料を配布させていただきます」といった「させていただく」という表現を頻繁に耳にしませんか?
この言葉は、丁寧な敬語表現として広く使われていますが、一方で「二重敬語だ」「恩着せがましい」といった批判を受けることもあります。丁寧なつもりで使っていても、相手に不快感を与えてしまっては本末転倒です。
本記事では、文化庁の指針に基づき、「させていただく」が持つ本来の意味と正しい使用条件を明確に解説します。また、多くの人が陥りがちなNGな使い方や、乱用を避けるためのスマートな言い換え表現をご紹介します。この記事を読んで、自信を持って「させていただく」を使いこなし、ワンランク上の敬語表現を目指しましょう。
1. 「させていただく」の本来の意味と正しい使用条件
「させていただく」は、「させてもらう」の謙譲語「させていただく」に丁寧語の「ます」が付いた表現です。しかし、本来は以下の二つの条件を同時に満たす場合に使うのが適切とされています。
1-1. 文化庁が示す「正しい使用条件」
「させていただく」は、以下の【1】と【2】の条件を両方満たす場合にのみ、正しい敬語として成立します。
- 相手または第三者の許可を得て行う行為であること
- その行為を行うことで、自分自身が恩恵を受けるという事実や気持ちがあること
この二つの条件に当てはまらない行為に使うと、「勝手にやっているのに、なぜ許可を得たような言い方をするのだろう」と相手に違和感を与えてしまいます。
1-2. 正しい使い方の具体例
相手に許可を得て、自分にメリットがある行為には正しく使用できます。
- 「お言葉に甘えまして、本日はお休みを頂戴させていただきます。」(許可を得て休むことで、自分が休養できる恩恵を受ける)
- 「先方の都合を優先し、来週に日程を変更させていただきます。」(相手と調整することで日程を変更する許可を得る)
- 「ご要望に応じ、資料を再送させていただきます。」(再送の許可を得て、顧客満足度を上げる恩恵を受ける)
2. 多くの人が陥りがちな「させていただく」のNGな使い方
「させていただく」は、丁寧さを強調しようとするあまり、本来の条件を満たさない場面で使われがちです。以下のNG例に当てはまっていないかチェックしましょう。
2-1. 【誤用】許可や恩恵を必要としない行為に使う
許可が必要ない、または恩恵と呼べるほどではない行為に使うと、過剰な謙譲表現となり違和感が生じます。
- NG例:「詳細は、配布させていただきます資料をご覧ください。」
- OK例:「詳細は、配布する資料をご覧ください。」(資料配布に相手の許可は不要)
- NG例:「本日は休業とさせていただきます。」
- OK例:「本日は休業いたします。」(店側の都合による休業に許可は不要、報告で十分)
2-2. 【二重敬語】すでに謙譲語を含む語に重ねて使う
「拝見」「拝読」「お伺い」など、すでに謙譲の意味を含む言葉に「させていただく」を重ねると、過剰な二重敬語となり誤用です。
- NG例:「メールを拝見させていただきます。」
- OK例:「メールを拝見いたします。」(「拝見」は「見る」の謙譲語のため、「いたします」で十分)
- NG例:「後ほど、ご説明させていただきます。」
- OK例:「後ほど、ご説明いたします。」(「ご説明する」は謙譲語のため、二重敬語を避ける)
2-3. 【過剰表現】一文の中に「させていただく」を連発する
丁寧な表現を連発すると、文章全体がくどく、まわりくどい印象を与え、かえってスマートさに欠けます。
- NG例:「早急に確認させていただき、ご連絡させていただきます。」
- OK例:「早急に確認し、ご連絡させていただきます。」(確認に許可は不要なため「し」に言い換え、ご連絡は相手の許可や都合が絡むため許容)
3. 乱用を避ける!「させていただきます」のスマートな言い換え集
「させていただく」を多用する傾向がある方は、「いたします」や「する」を意識的に使うことで、文章が引き締まり、よりプロフェッショナルな印象になります。
3-1. 許可が不要な行為:「いたします」「します」で簡潔に
相手の許可を必要としない行動や、自分の業務を報告する際には、シンプルに「いたします」や「します」に言い換えましょう。
- 「資料を作成させていただきます」→「資料を作成いたします」
- 「担当させていただきます」→「担当いたします」
3-2. 自分の意思を強く伝えたいとき:「所存です」
自分の意思や決意を表明する場合、「させていただきます」よりも「所存です」を使うことで、より明確で責任感のある表現になります。「所存です」は「〜するつもりです」の謙譲表現です。
- 「今後、再発防止に努めさせていただきます。」→「今後、再発防止に努める所存です。」
3-3. 許可を求める場合:「〜してもよろしいでしょうか」
本来の「許可を得る」という目的をストレートに伝えたい場合は、「〜させていただく」を回りくどく使うよりも、直接的に許可を求めましょう。
- 「明日、お電話させていただきます。」→「明日、お電話してもよろしいでしょうか。」
まとめ
「させていただく」は、適切に使えば相手への深い配慮と敬意を示すことができる、非常に便利な謙譲表現です。しかし、その誤用や乱用は、かえってあなたの印象を損ないかねません。
この記事で解説した、文化庁が示す以下の二つの条件を常にチェックリストとして活用しましょう。
- 相手または第三者の許可を得ているか
- その行為で自分自身が恩恵を受けているか
この二つの条件を満たさない場合は、「いたします」「します」などのシンプルな表現に言い換えましょう。正しい知識とTPOを意識することで、自信を持ってスマートなビジネスコミュニケーションを実現してください。
この記事を読んでいただきありがとうございました。