岡山県の中心部にそびえる岡山城は、その漆黒の壁から「烏城」の愛称で親しまれています。戦国時代に宇喜多秀家によって築城が始まり、江戸時代には池田氏によって大規模な改修が行われました。残念ながら戦災で一度は焼失しましたが、昭和の再建を経て、往時の美しい姿を取り戻しています。旭川の流れを巧みに利用した堅固な城郭と、その中に息づく歴史は、訪れる人々を魅了する場所です。
日本三名園の一つである岡山後楽園と隣接しており、歴史と自然の調和した美しい景観も大きな魅力です。この記事では、岡山城の深い歴史から見どころ、美しい撮影スポット、そして周辺の魅力的な観光地やご当地グルメまで、岡山城を心ゆくまで楽しむための情報をお届けします。ぜひ岡山城で、歴史と絶景を満喫する旅を体験してください。
岡山城の歴史:天下人の夢と城主たちの想い
宇喜多秀家による築城の開始
岡山城の歴史は、天正18年(1590年)に豊臣秀吉の五大老の一人であった宇喜多秀家によって築城が始まったことに端を発します。秀家は、当時の最先端の築城技術を導入し、堅固な石垣や、現在の天守の基礎となる五層六階の天守閣を建設しました。旭川の流れを堀の一部として利用するなど、自然の地形を巧みに取り入れた縄張りが特徴です。関ヶ原の戦いで西軍に与した秀家は、敗戦後、八丈島へ流刑となり、宇喜多氏による岡山城の支配は終わりました。
池田氏による大規模改修と繁栄
関ヶ原の戦いの後、慶長8年(1603年)には、徳川家康の娘婿である池田忠継が岡山城主となります。その後、元和元年(1615年)には池田光政が城主となり、池田氏が幕末まで約250年もの長きにわたり岡山藩を治めました。池田氏は、岡山城の大規模な改修を行い、本丸御殿や櫓、門などを整備し、現在の城郭の姿を確立しました。特に、藩主の居間である本丸御殿は、豪華絢爛な造りであったと伝えられています。岡山城は、池田氏の統治の下、堅固な軍事拠点であると同時に、藩政の中心として、そして文化の中心地として大いに栄えました。
明治以降の歩みと再建
明治維新による廃城令で、全国の多くの城が取り壊される中、岡山城も例外ではありませんでした。大部分の建物は解体され、天守閣と月見櫓など一部の建造物が残されるのみとなりました。その後、太平洋戦争の戦火により、天守閣と石山門)が焼失するという大きな被害を受けました。
しかし、市民の熱い願いと努力により、昭和41年(1966年)に現在の天守閣が再建されました。現在の岡山城天守は、当時の図面や資料に基づいて忠実に復元されており、往時の威厳ある姿を偲ぶことができます。このように、岡山城は幾多の試練を乗り越え、現代にその雄姿を伝えているのです。
岡山城の見どころ:漆黒の天守と巧みな城郭構造
岡山城は、その漆黒の天守閣と、堅固な防御を誇る石垣、そして水堀など、見どころが豊富にあります。城内を巡ることで、当時の築城技術や、城を守る工夫を肌で感じられます。
「烏城」と呼ばれる漆黒の天守閣
岡山城の象徴は、何と言ってもその漆黒の天守閣です。黒漆塗りの下見板張りが特徴で、その姿はカラスのように見えることから「烏城」の愛称で親しまれています。再建された天守閣ですが、内部は当時の面影を残しながら、歴史資料や武具などが展示され、岡山城の歴史や、宇喜多氏・池田氏に関する詳しい情報を知ることができます。
最上階の望楼からは、岡山市街はもちろん、旭川の流れや、日本三名園の一つである岡山後楽園まで見渡せる360度の大パノラマが広がります。天守の黒い壁と青い空、そして眼下に広がる街並みのコントラストは、まさに絶景です。
複雑な縄張りと堅固な石垣
岡山城のもう一つの大きな見どころは、その複雑な縄張り(城の配置計画)と、随所に残る美しい石垣です。旭川の流れを天然の堀として利用し、いくつもの曲輪が配置された岡山城は、堅固な防御を誇りました。特に、天守台を支える石垣は、自然石を巧みに積み上げた野面積みが多く、その力強さに圧倒されます。
池田氏によって増築された部分の石垣には、切り込みハギ(石を加工して隙間なく積む方法)も見られ、築城技術の変遷を間近で観察できます。石垣に刻まれた刻印を探しながら城内を散策するのも、きっと心に残る面白い体験になります。
月見櫓と不明門の趣
岡山城には、戦災を免れ現存する貴重な建造物があります。その一つが、本丸の北西隅にある「月見櫓」です。江戸時代初期に建てられたもので、重要文化財に指定されています。その名の通り、月を眺めるために使われたとも言われ、趣のある外観が特徴です。また、本丸の東側にある「不明門」も、現存する建造物の一つです。
普段は開けられなかったことからこの名が付いたと言われ、当時の城の厳重な警備体制を伝えるものです。これらの現存建造物を訪れることで、往時の岡山城の姿をより鮮明に感じられます。
岡山城の映える撮影スポット:光と影が織りなす絶景を記録する
岡山城は、その漆黒の姿と広大な敷地、そして隣接する後楽園との調和から、一年を通じて様々な表情を見せる撮影スポットに溢れています。訪れる時期や時間帯によって、異なる魅力的な写真を撮影できます。
岡山後楽園からの絶景
岡山城を最も美しく収めるには、隣接する岡山後楽園からの眺めがおすすめです。後楽園の広々とした芝生や池、借景として取り入れられた岡山城の姿は、まるで一枚の絵画のようです。特に、園内の「廉池軒(れんちけん)」付近や、「沢の池」越しに望む岡山城は、後楽園の豊かな緑と水の美しさ、そして漆黒の天守が絶妙なコントラストを生み出し、息をのむような美しさです。午前中の早い時間帯は、天守に順光が当たり、より一層その黒が際立ちます。岡山城と後楽園を同時に一枚の写真に収めたいなら、ここが最適な場所です。
旭川と城の調和
岡山城のすぐ西側を流れる旭川も、素晴らしい撮影スポットを提供します。旭川の河川敷や、川を渡る橋の上から、水面に映る岡山城の姿を撮影するのも趣があります。特に、夕暮れ時には、空が茜色に染まり、川面にその色が映し出される中で、岡山城がシルエットとなって浮かび上がる光景は、非常にロマンチックです。夜には城がライトアップされ、闇夜に浮かび上がる漆黒の天守が、昼間とは異なる幻想的な姿を見せてくれます。
城内を散策しながら、様々な角度から天守閣を撮影するのもおすすめです。特に、天守台の石垣と天守の組み合わせは、その堅固さと美しさを同時に感じられる構図です。石垣の力強さと、天守の優美なラインが織りなすコントラストを捉えることができます。また、桜の季節には、城内に咲き誇る桜と漆黒の天守の共演が見事です。春の青空の下、満開の桜と城を背景に、旅の思い出を写真に残してください。
岡山城での現地体験:歴史散策と文化の触れ合い
岡山城では、ただ歴史的建造物を見て回るだけでなく、様々な体験を通して、その歴史や地域の文化に深く触れることができます。五感を使って、城の魅力を存分に味わってみましょう。
天守閣内部での歴史学習と体験
岡山城観光の核となるのは、やはり天守閣内部の見学です。再建された天守内には、岡山城の歴史や、宇喜多氏・池田氏に関する資料が展示されています。当時の暮らしや、城の役割について、映像やパネルで分かりやすく解説されており、歴史に詳しくない方でも興味を持って学べます。また、天守内には、備前焼(びぜんやき)の体験コーナーもあり、粘土をこねて自分だけのオリジナル作品を作ることも可能です。旅の思い出に、世界に一つだけの作品を作ってみるのはいかがでしょうか。
岡山後楽園での日本庭園散策
岡山城と隣接する岡山後楽園は、日本三名園の一つに数えられる広大な回遊式庭園です。広々とした芝生や池、そして築山などが巧みに配置されており、四季折々の美しい景色を楽しめます。園内をゆっくりと散策しながら、季節の花々や、池に泳ぐ鯉を眺めるのは、心安らぐひとときとなるはずです。岡山城を借景として取り入れた庭園の美しさは格別です。城と庭園、両方をじっくりと時間をかけて巡ることで、より深くその魅力を感じられます。
城下町散策と着物体験
岡山城の周辺には、当時の面影を残す城下町の雰囲気が漂います。歴史ある商店街を散策したり、昔ながらの建物を眺めたりするのも良いでしょう。また、岡山城周辺では、着物レンタルサービスを提供しているお店もあります。着物に着替えて城内や後楽園を散策すれば、まるでタイムスリップしたような気分を味わえます。いつもとは違う装いで、思い出に残る写真をたくさん撮影してみてはいかがでしょうか。
岡山城への交通手段:スムーズなアクセス方法
岡山城へのアクセスは、公共交通機関でも車でも非常に便利です。ご自身の旅のスタイルや、他の観光地への移動計画に合わせて、最適な方法を選んでください。
電車・路面電車での行き方
岡山城の最寄り駅は、JR「岡山駅」です。岡山駅から岡山城へは、路面電車を利用するのが最も便利です。岡山駅東口の路面電車乗り場から、東山行きまたは清輝橋行きの路面電車に乗車し、「城下(しろした)」電停で下車してください。電停から岡山城までは徒歩で約10分ほどかかります。路面電車での所要時間は約5分程度と短いです。また、岡山駅から徒歩で向かう場合は、約15分から20分ほどで到着します。駅の東口から桃太郎大通りをまっすぐ進み、旭川を渡ると岡山城が見えてきます。
車での行き方と駐車場情報
お車でお越しの場合、岡山城周辺には複数の有料駐車場が整備されていますので、そちらをご利用ください。城のすぐ近くには、岡山城公園駐車場や、岡山後楽園駐車場などがあります。山陽自動車道の「岡山インターチェンジ」から一般道へ降り、約20分から25分ほどで到着します。岡山市街地を通過することになりますので、交通量にご注意ください。休日や観光シーズンには駐車場が混み合うこともありますので、時間に余裕を持って訪れることをおすすめします。事前に駐車場の場所や料金、空き状況を確認しておくと、スムーズに観光を開始できます。
岡山城周辺の観光名所:歴史と自然、アートを満喫する
岡山城の周辺には、他にも魅力的な観光名所がたくさんあります。岡山城と合わせて訪れて、岡山市の奥深い魅力をさらに感じてみてください。
岡山後楽園(おかやまこうらくえん):日本三名園の一つ
岡山城の東側に隣接する「岡山後楽園」は、兼六園、偕楽園と並ぶ日本三名園の一つに数えられる、江戸時代を代表する回遊式庭園です。広々とした芝生や池、築山(つきやま)が巧みに配置されており、四季折々の美しい景色を楽しめます。特に、春の桜や秋の紅葉の時期は、その美しさが際立ちます。岡山城を借景として取り入れた景観は、まさに絶景です。庭園内には、茶屋や食事処もあり、ゆっくりと時間を過ごすことができます。岡山城との共通券も販売されているので、両方を巡るのがおすすめです。
林原美術館(はやしばらびじゅつかん):名刀と美術品の宝庫
岡山城から徒歩圏内にある「林原美術館」は、旧岡山藩主池田家ゆかりの美術品を収蔵・展示している美術館です。特に、刀剣のコレクションが充実しており、国宝や重要文化財に指定された名刀の数々を間近で見られます。刀剣ファンにはたまらないスポットです。その他にも、絵画や漆工芸品など、質の高い美術品が多数展示されており、岡山藩の歴史や文化を深く学ぶことができます。歴史散策と合わせて、日本の美意識に触れる良い機会となるでしょう。
岡山県立美術館:岡山ゆかりの芸術に触れる
岡山城の北側、徒歩圏内にある「岡山県立美術館」は、岡山県ゆかりの作家の作品や、岡山に縁のあるテーマの美術品を収集・展示しています。近代の日本画や洋画、彫刻、工芸など、幅広いジャンルの作品が楽しめます。企画展も頻繁に開催されており、訪れるたびに新たな発見があるかもしれません。歴史だけでなく、芸術にも触れたい方におすすめのスポットです。雨の日でも楽しめる屋内施設なので、天候を気にせず訪れることができます。
ご当地の味とおすすめ店:岡山城の近くで楽しめる食事
岡山城周辺には、岡山ならではの美味しい料理を楽しめるお店がたくさんあります。観光の合間に、ぜひ地元の味を堪能してください。
ままかり寿司:岡山を代表する郷土料理
岡山県を代表する郷土料理の一つが「ままかり寿司」です。ままかり(ニシン科の小魚)を酢漬けにしたものを握り寿司にしたもので、その昔、美味しすぎてご飯をおかわりする「まま(飯)を借りに行く」ほどだったことから、この名が付いたと言われています。酸味と旨味が絶妙なバランスで、さっぱりといただけます。岡山市内の寿司店や郷土料理店で味わうことができます。岡山ならではのユニークな味を、ぜひ体験してみてください。
きびだんご:お土産の定番
岡山のお土産として全国的に有名なのが「きびだんご」です。誰もが知る桃太郎伝説に登場するきびだんごは、もちもちとした食感と優しい甘さが特徴です。様々な味や種類のきびだんごが販売されており、お土産としてはもちろん、観光の途中で小腹が空いた時にもおすすめです。岡山城周辺のお土産物店や、駅構内で手軽に購入できます。自分用にも、大切な人へのお土産にも喜ばれる一品です。
デミカツ丼:岡山のソウルフード
岡山市のB級グルメとして、地元の人々に長年愛されているのが「デミカツ丼」です。ご飯の上にサクサクに揚げたトンカツを乗せ、濃厚なデミグラスソースをたっぷりとかけた丼ぶりです。洋食のデミグラスソースと和風のトンカツの組み合わせが絶妙で、一度食べたら忘れられない味わいです。岡山市内の洋食店や食堂で提供されており、お店ごとに味が異なります。ぜひお気に入りのお店を見つけて、岡山のソウルフードを味わってみてください。
岡山後楽園へのアクセス
岡山後楽園は岡山城のすぐ東側に隣接しています。岡山城と後楽園を結ぶ月見橋を渡れば、徒歩数分で移動できます。共通券も販売されているので、両方を一緒に訪れるのがおすすめです。
林原美術館へのアクセス
林原美術館は岡山城から徒歩で約5分から10分ほどの距離にあります。岡山城のすぐ南側に位置しており、城観光の後に立ち寄るのに便利です。
岡山県立美術館へのアクセス
岡山県立美術館は、岡山城から徒歩で約10分ほどの距離にあります。岡山城の北側に位置しており、歴史と芸術の両方を体験できるエリアです。
まとめ:初心者にもおすすめの岡山城、旅の秘訣
岡山城は、漆黒の天守閣が美しい「烏城」として知られ、歴史と文化が息づくお城です。再建された天守ですが、城内の見学や天守からの雄大な眺望は、訪れる皆様の心に深く印象を残します。日本三名園の一つである岡山後楽園と隣接しており、歴史的な城郭と美しい庭園が織りなす景観は、訪れる人々を魅了します。
見どころが多く、周辺施設や地元グルメを合わせて一日中楽しめる場所ですので、旅の際はぜひ時間にゆとりを持ってお越しください。歴史に触れ、美しい景色を眺め、岡山ならではの美味しい料理を味わう。そんな岡山城への旅は、かけがえのない思い出となるはずです。ぜひ、岡山城で歴史のロマンに触れてみてください。
この記事を読んでいただきありがとうございました。