日程調整の達人へ!「ご都合をお聞かせください」より”失礼のない”上級ビジネス表現と例文

間違いやすい敬語シリーズ

ビジネスメールの中で、最も頻繁に行われるやり取りの一つが「日程調整」です。

「来週、打ち合わせのお時間をいただけますでしょうか。ご都合をお聞かせください。

このフレーズ、毎日のように使っている方も多いのではないでしょうか。決して間違いではありませんし、相手に予定を尋ねる丁寧な表現です。

しかし、相手が非常に多忙な経営者や、スケジュールが分刻みで埋まっているクライアントだった場合、この「ご都合をお聞かせください」という言葉が、実は相手にとって「小さな負担」になっていることをご存知でしょうか。

「いつが空いているかカレンダーを確認して、候補日を書き出して、返信する」という作業を、相手に丸投げしてしまっているからです。

日程調整の達人は、相手に「考えさせない」メールを送ります。相手がカレンダーを一目見て、「あ、この日なら空いている。OK」と、たった数秒で判断できるようなお膳立てをするのです。

この記事では、いつもの「ご都合をお聞かせください」を卒業し、相手の負担を極限まで減らしつつ、スマートにアポイントを確定させる「上級ビジネス表現」と、その具体的なテクニックを解説します。

なぜ「いつが空いていますか?」は負担になるのか

具体的なフレーズの前に、なぜ「丸投げ(オープンクエスチョン)」が避けるべきマナーなのか、その心理的な背景を理解しておきましょう。

相手に「思考のコスト」を払わせている

「来週のご都合はいかがですか?」と聞かれた相手は、以下のプロセスを踏まなければなりません。

  1. 自分のスケジュール帳を開く。
  2. 来週の空き時間をすべてピックアップする。
  3. その中から、相手に提示しても差し支えない時間を複数選ぶ。
  4. メールに日時をタイプして返信する。

これは立派な「業務」です。特に忙しい人は、この作業を後回しにしがちです。その結果、返信が遅れ、アポイントが決まらないまま時間だけが過ぎていく……という悪循環に陥ります。

正解は「選んでもらう(クローズドクエスチョン)」

一方で、日程調整が上手な人は、相手に「選択肢」を提示します。

「以下の日程はいかがでしょうか。

・〇月〇日(火) 14:00~16:00

・〇月〇日(水) 10:00~12:00」

これなら、相手の作業は「その時間が空いているか見る(Yes/No)」だけです。思考のコストをかけさせないことこそが、最高レベルの「失礼のない対応」なのです。

「ご都合をお聞かせください」を格上げする上級フレーズ集

それでは、相手に候補日を提示した上で、どのように打診すればスマートに聞こえるのか。シチュエーション別の「言い換え表現」をご紹介します。

1. 候補日を提示して選んでもらう場合

これが最も推奨される基本パターンです。こちらから3つほど候補を挙げた後に添える言葉です。

基本の丁寧語
  • 「上記の日程で、ご都合いかがでしょうか。」
  • 「いずれかの日時で、お時間をいただけますでしょうか。」
より配慮が伝わる上級表現
  • 「勝手を申し上げ恐縮ですが、以下の日程でご調整いただくことは可能でしょうか。」
  • 「もし可能であれば、下記の日時よりご都合の良いお時間をご教示いただけますと幸いです。」

【ポイント】

「ご調整いただくことは可能でしょうか」という依頼形にすることで、相手のスケジュールに対する敬意を示します。「勝手を申し上げ(こちらの都合で候補を出してごめんね)」というクッション言葉を入れると、さらに謙虚な印象になります。

2. どうしてもこちらの都合がつかず、ピンポイントで打診する場合

こちらの空き時間が少なく、日時を指定せざるを得ない場合こそ、言葉選びが重要です。

上級表現
  • 「大変勝手ながら、当方の都合により、以下の日時でお時間をいただけますと大変ありがたく存じます。」
  • 「こちらの都合で大変恐縮ですが、〇月〇日の〇時にお伺いすることは可能でしょうか。」

【ポイント】

「私の都合で申し訳ない」という気持ちを前面に出します。「〜していただけると助かります(ありがたく存じます)」と感謝のニュアンスを含めることで、角を立てずにこちらの要望を通すことができます。

3. 相手に候補を出してもらう場合(例外パターン)

相手が役員クラスであったり、遠方からの来客であったりする場合、こちらから候補を出すこと自体が失礼(または非効率)になることもあります。その場合は、あえて相手に委ねますが、ここでも「丸投げ」はしません。

上級表現
  • 「〇〇様のご多忙な折とは存じますが、来週以降で30分ほど、ご都合のよろしい日時を2〜3候補いただけますでしょうか。」
  • 「私どもはいつでも調整可能ですので、〇〇様のご都合を最優先にお聞かせ願えますでしょうか。」

【ポイント】

「来週以降」「30分」と枠組みを提示することで、相手が考えやすくします。また「最優先に」という言葉で、相手への最大限の敬意を表します。

コピペで使える!シーン別・日程調整メールの構成例

ここでは、実際にそのまま使えるメールの構成例をご紹介します。「候補日の書き方」にもプロの技が光ります。

パターンA:こちらから候補日を提案する(標準)

最も汎用性が高い、基本の形です。

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件名:次回お打ち合わせ日程のご相談(株式会社〇〇 佐藤)

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〇〇株式会社

営業部 田中様

いつも大変お世話になっております。

株式会社〇〇の佐藤です。

先日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

さて、次回のプロジェクト定例会につきまして、

来週以降で30分〜1時間程度のお時間をいただけますでしょうか。

勝手ながら、当方の空き状況より候補日を挙げさせていただきました。

下記の中で、ご都合のよろしい日時はございますでしょうか。

【候補日時】

10月15日(火) 14:00〜17:00の間

10月16日(水) 10:00〜12:00の間

10月17日(木) 15:00以降

※上記日程でご都合が悪い場合は、

大変お手数ですが、別日の候補をいただけますと幸いです。

お忙しいところ恐縮ですが、ご調整のほどよろしくお願いいたします。

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【達人のテクニック】

  • 「〜の間」という幅を持たせる:「14:00開始」とピンポイントで指定すると、相手は合わせづらくなります。「14:00〜17:00の間で開始できる時間」と幅を持たせるのがマナーです。
  • 「逃げ道」を作る:「上記日程で都合が悪い場合は〜」の一文は必須です。これがないと、候補日が全滅だった場合、相手は「断る」というストレスを感じてしまいます。

パターンB:Web会議(Zoom/Teams)を打診する

最近はオンライン商談が主流です。場所の確保が不要な分、URLの発行について触れておくとスムーズです。

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(前略)

本件につきまして、オンライン(Zoom)にて15分ほど

画面を共有しながらご説明の機会をいただけますでしょうか。

もしよろしければ、以下の日程よりご都合の良い日時をご教示ください。

【候補日時】

(候補リスト)

日時が決まり次第、私の方でWeb会議のURLを発行し、

改めてご案内させていただきます。

ご検討のほど、よろしくお願いいたします。

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【達人のテクニック】

  • 「私の方でURLを発行します」:Web会議は、どちらがホストになる(URLを発行する)かで一瞬迷うものです。「私がやります」と宣言することで、相手の手間を一つ減らすことができます。

さらに差がつく!「気配り」のワンポイント・テクニック

言葉遣いだけでなく、日程提示の仕方そのものに気配りを添えることで、あなたの印象はさらにアップします。

1. 候補日は「3つ」が黄金比

候補日が1つだけだと「強引」に感じられ、5つ以上あると「読むのが面倒」になります。3つ、多くても4つ程度に絞って提示するのが、相手が最も選びやすい黄金比です。

2. 移動時間やランチタイムへの配慮

対面での打ち合わせの場合、前後の移動時間を考慮しましょう。例えば、「月曜の朝イチ(9:00〜)」や「昼休み直後(13:00〜)」は、相手が準備でバタバタしている可能性があります。

「もし可能でしたら、午後のお時間帯ですと比較的調整がつきやすくなっております」など、こちらの状況と相手への配慮をセットで伝えるとスムーズです。

3. 「仮押さえ」はしないのがマナー

「念のため日程を確保しておきました」と言う人がいますが、これは諸刃の剣です。まだ決まっていないのに予定をブロックされることを嫌う人もいます。

「確定のご連絡をいただくまでは、予定を空けておかなくても大丈夫ですよ」というニュアンスで、まずは打診ベースで進めるのが無難です。

リスケジュール(日程変更)を依頼する場合の申し訳なさの伝え方

どうしても都合が悪くなり、決まっていた日程を変更してもらう時こそ、真のビジネス力が試されます。「再調整してください」ではなく、「お願いできますか」という姿勢を崩さないようにしましょう。

フレーズ例

  • NG:「急な用事が入ったため、日程変更をお願いします。」
  • OK:「大変申し訳ございません。外せない急用が入ってしまい、お約束の日時にお伺いすることが難しくなってしまいました。こちらの都合で誠に恐縮ですが、日程の再調整をお願いできませんでしょうか。」

【重要】

リスケジュールをお願いする場合は、必ずこちらから新しい候補日を提示します。「いつならいいですか?」と相手に投げ返すのは、二重の失礼にあたります。

「勝手なお願いとは存じますが、以下の日程でしたら確実に時間を確保できます」と、再設定への積極的な姿勢を見せることが、信頼回復への鍵となります。

まとめ:日程調整は「仕事の段取り力」そのもの

「ご都合をお聞かせください」という言葉は、決して間違いではありません。しかし、その言葉の裏に「相手に手間をかけさせている」という事実があることに気づけるかどうかが、ビジネスパーソンとしての分かれ道です。

  • 丸投げせずに、選択肢(候補)を提示する。
  • 「ご都合いかがですか」ではなく「ご調整いただけますか」と配慮する。
  • 断りやすい「逃げ道」を作っておく。

こうした小さな気遣いの積み重ねが、「この人は仕事が早そうだ」「この人とならスムーズにプロジェクトが進みそうだ」という信頼感につながります。

たかが日程調整、されど日程調整。次回のメールからは、相手の顔を思い浮かべながら、相手が「1秒」で返信できるような、思いやりのある一通を送ってみてください。
この記事を読んでいただきありがとうございました。

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