鳥取県鳥取市にそびえる鳥取城跡は、戦国時代の「鳥取城飢え殺し」と呼ばれる悲劇的な籠城戦の舞台となった場所です。久松山の自然の地形を巧みに利用して築かれた山城は、現在天守閣こそ残っていませんが、当時の石垣や堀、曲輪の跡が今も残り、訪れる人々に激動の歴史を伝えています。
特に、毛利氏と織田氏の攻防が繰り広げられたこの地は、日本の歴史に深く刻まれた出来事を肌で感じられる貴重な史跡です。歴史の舞台となった場所を訪れ、往時の武将たちの息遣いに耳を傾けてみませんか。この記事では、鳥取城跡の歴史から見どころ、美しい撮影スポット、そして周辺の観光情報やご当地グルメまで、鳥取城跡を満喫するための情報をお届けします。
鳥取城の歴史：悲劇の籠城戦と戦国武将たちの攻防
山名氏による築城と初期の支配
鳥取城の歴史は、室町時代に因幡国（いなばのくに）を治めていた山名氏によって築かれたことに始まります。久松山の自然の地形を利用した典型的な山城として、因幡国の中心的な役割を担っていました。戦国時代に入ると、中国地方の覇権を争う毛利氏と、天下統一を目指す織田氏の勢力争いの最前線となり、その戦略的価値は一層高まりました。
織田信長と豊臣秀吉による包囲戦
鳥取城の歴史で最も有名なのが、天正9年（1581年）に繰り広げられた、織田信長の家臣である羽柴秀吉（後の豊臣秀吉）による兵糧攻めです。当時、鳥取城主だった山名豊国は毛利氏に属しており、毛利氏は吉川経家を城主として送ります。秀吉は鳥取城を攻め落とすため、周囲の米を買い占め、城下の人々を城内へ追い込むという周到な準備を行いました。
これにより城内の兵糧はたちまち尽き、籠城した人々は飢えに苦しむことになります。この悲劇的な出来事は「鳥取城飢え殺し」として語り継がれ、約3ヶ月間の籠城の後、城は開城されました。この戦いは、秀吉の戦略の巧みさを示す一方で、戦国の世の非情さを今に伝えています。
池田氏による整備と明治以降の歩み
鳥取城は、秀吉の支配下に入った後も、引き続き因幡国の拠点として利用されました。江戸時代に入ると、鳥取藩池田氏の居城となり、城下町が整備され、藩政の中心として栄えました。しかし、明治維新による廃城令で、天守閣をはじめとする多くの建物が取り壊されてしまいました。
現在、鳥取城跡は久松公園として整備され、歴史公園として市民の憩いの場となっています。かつての天守閣は残っていませんが、今も残る石垣や堀の跡からは、鳥取城が経験した激動の歴史を肌で感じられるでしょう。日本の歴史を語る上で欠かせないこの地を訪れ、いにしえの武将たちの想いに触れてみてはいかがでしょうか。
鳥取城の見どころ：山城ならではの防御と歴史の痕跡
鳥取城跡は、天守閣がなくても、山城ならではの防御の工夫や、悲劇の歴史を今に伝える見どころが豊富にあります。久松山の地形を最大限に生かした、その堅牢な造りからは、当時の戦の厳しさを想像できます。
壮大な石垣と歴史を語る「巻石垣」
鳥取城跡の最大の見どころは、何と言ってもその石垣です。久松山の斜面に沿って築かれた石垣は、自然石を巧みに積み上げた野面積みが多く見られ、その力強さに圧倒されます。特に、本丸の石垣や、山麓にある大手門跡付近の石垣は、規模が大きく見応えがあります。
また、鳥取城には「巻石垣（まきいしがき）」と呼ばれる珍しい石垣があります。これは、石垣の角の部分が弧を描くように巻かれているのが特徴で、外から見るとまるで石垣が渦を巻いているように見えます。これは、石垣の強度を高めるための工夫の一つと言われています。このような細部にも、当時の築城技術の高さと工夫を感じられます。石垣に刻まれた刻印を探しながら歩くのも楽しいかもしれません。
広大な曲輪と土塁、空堀の跡
久松山の山頂から山麓にかけては、本丸、二の丸、三の丸、山下ノ丸など、複数の曲輪の跡が確認できます。それぞれの曲輪は、土塁や空堀によって区画され、敵の侵入を防ぐための堅固な防御ラインを形成していました。現在、これらの曲輪跡は平坦な広場として整備されており、当時の城の広大な規模を体感できます。特に、山頂の本丸から見下ろす景色は、当時の城主も同じ景色を眺めたに違いないと考えると、感慨深いものがあります。
大手門跡と堀跡
山麓にある大手門跡は、かつての城の正面玄関があった場所です。現在は門の建物は残っていませんが、その石垣や礎石からは、かつての壮大な門の姿を想像できます。また、城の周囲には、堀の跡が残されています。かつては水堀や空堀が巡らされ、城を堅固に守っていました。現在、一部は埋め立てられていますが、その痕跡を辿ることで、鳥取城の防御の要点を理解できます。
鳥取城の映える撮影スポット：四季の彩りと歴史の重みを写す
鳥取城跡は、その歴史的な背景に加え、久松山の豊かな自然が織りなす美しい景色が楽しめる撮影スポットの宝庫です。訪れる時期や時間帯によって様々な表情を見せてくれますので、ぜひお気に入りの一枚を撮影してみてください。
久松山から望む鳥取市街と日本海
鳥取城跡の最大の魅力の一つは、久松山の山頂からの眺望です。本丸跡からは、鳥取市街地はもちろん、遠く日本海まで見渡せる雄大なパノラマが広がっています。夕暮れ時には、空が茜色に染まり、街の明かりが灯り始める幻想的な光景が広がります。この景色を眺めながら、当時の城主が何を思ったのか、思いを馳せてみるのも良いかもしれません。
桜と石垣の共演
春には、鳥取城跡は桜の名所として多くの人々で賑わいます。久松公園全体に約400本のソメイヨシノが植えられており、満開の桜と歴史ある石垣が織りなす光景は、まさに絵画のような美しさです。特に、大手門跡付近や、曲輪の跡に咲き誇る桜は、その白さと石垣の力強さが絶妙なバランスで調和し、素晴らしい写真を撮影できます。桜の時期の訪問は、鳥取城跡を最も美しく写真に収められる絶好の機会となるに違いありません。
「巻石垣」と歴史の趣
鳥取城跡独特の「巻石垣」も、ぜひ写真に収めたい特徴的なスポットです。石垣が螺旋状に巻かれた独特の形状は、他ではあまり見られないものです。この珍しい石垣を背景に、歴史の深さを感じさせる一枚を撮影できます。
また、石垣の間に生える植物や、苔むした石の質感なども、写真に収めると趣のある一枚となります。城跡の散策路をゆっくりと歩きながら、様々な角度から撮影を楽しんで、鳥取城跡ならではの風景を見つけてみてください。
鳥取城での現地体験：歴史学習と自然散策の楽しみ
鳥取城跡では、ただ見て回るだけでなく、様々な体験を通して、その歴史や久松山の自然に深く触れることができます。五感を使って、城の魅力を存分に味わってみましょう。
久松公園での歴史散策
鳥取城跡は現在、久松公園として整備されており、広大な敷地を自由に散策できます。山頂の本丸を目指して登る道のりは、軽いハイキング気分で楽しめます。
道中には、各曲輪跡や門の跡を示す案内板が設置されており、当時の城の様子や、そこで繰り広げられた歴史的な出来事を学ぶことができます。土塁や空堀の跡をたどりながら、かつての城の防御の工夫を想像するのも面白いものです。歴史の舞台となった場所を自分の足で歩き、その場の空気を感じ取ってください。
鳥取県立博物館での学び
鳥取城跡のすぐ近くには、「鳥取県立博物館」があります。ここでは、鳥取県の歴史や文化、自然に関する幅広い展示が行われており、鳥取城の歴史についても詳しく学ぶことができます。特に、鳥取城飢え殺しに関する展示や、当時の武具、発掘された遺物などが展示されていることもあります。歴史に詳しくない方でも、映像やパネル展示で分かりやすく解説されているので、理解を深められます。
鳥取東照宮での参拝と歴史に触れる
久松山の山腹には、徳川家康を祀る「鳥取東照宮」があります。こちらは、日光東照宮になぞらえて造られたと言われており、煌びやかな装飾が特徴です。鳥取城跡と合わせて訪れることで、歴史のつながりを感じられます。参拝の後には、境内の静かな雰囲気の中で、歴史の重みに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
鳥取城への交通手段：アクセス方法を詳しくご紹介
鳥取城跡へのアクセスは、公共交通機関でも車でも比較的便利です。鳥取市街地に位置しているため、旅のスタイルに合わせて、最適な方法を選んでください。
電車・バスでの行き方
鳥取城跡の最寄り駅は、JR「鳥取駅」です。鳥取駅からは、鳥取城跡まで徒歩で約20分から25分ほどかかります。駅を出て、まっすぐ北に進むと、やがて久松山が見えてきますので、それを目印に歩けば迷うことは少ないでしょう。
また、鳥取駅から路線バスを利用するのが最も便利です。鳥取駅バスターミナルから、循環バス「ループ麒麟獅子」または「くる梨（くるり）」に乗車し、「鳥取城跡」バス停または「県庁・県立博物館前」バス停で下車すると、城跡のすぐ近くに到着します。バスの所要時間は約5分から10分程度です。バスの本数も比較的多いので、気軽に利用できます。
車での行き方
お車でお越しの場合、鳥取城跡の周辺には久松公園駐車場（有料）など、複数の有料駐車場が整備されていますので、そちらをご利用ください。鳥取自動車道の「鳥取インターチェンジ」から一般道へ降り、約15分から20分ほどで到着します。鳥取市街地を通過することになりますので、交通量にご注意ください。休日や観光シーズンには駐車場が混み合うこともありますので、時間に余裕を持って訪れることをおすすめします。事前に駐車場の場所や料金、空き状況を確認しておくと、スムーズに観光を開始できます。
鳥取城周辺の観光名所：歴史と自然、アートを巡る
鳥取城跡の周辺には、他にも魅力的な観光名所がたくさんあります。鳥取城と合わせて訪れて、鳥取市の奥深い魅力をさらに感じてみてください。
仁風閣（じんぷうかく）：明治の西洋館
鳥取城跡の山麓に位置する「仁風閣」は、明治39年（1906年）に旧鳥取藩主池田家の別邸として建てられたフレンチルネサンス様式の美しい西洋館です。国の重要文化財に指定されており、明治天皇の行在所（あんざいしょ）としても利用されました。城跡の和風建築とは対照的な、洋風の華やかな建築様式が見どころです。
鳥取砂丘：日本を代表する絶景
鳥取城跡からは少し離れますが、鳥取市を代表する観光名所といえば、やはり「鳥取砂丘」です。日本海に広がる広大な砂の世界は、まさに圧巻の絶景です。風紋（ふうもん）と呼ばれる砂の模様や、夕焼けに染まる砂丘の美しさは、訪れる人々を魅了します。
砂丘のラクダに乗ったり、サンドボード体験をしたりと、様々なアクティビティも楽しめます。鳥取駅から砂丘行きの路線バスも頻繁に運行しているので、公共交通機関でもアクセスできます。鳥取城跡と合わせて、鳥取ならではの雄大な自然を満喫してみてはいかがでしょうか。
わらべ館：懐かしい童謡と遊びの世界
鳥取城跡から歩いてすぐの場所にあるわらべ館は、童謡や唱歌をテーマにしたユニークな博物館です。懐かしい童謡の展示や、昔のおもちゃ、楽器の展示など、お子さんから大人まで楽しめる工夫が満載です。
童心に帰って昔の遊びを体験したり、童謡を口ずさんだりする時間は、お客様の心に深く刻まれる、楽しいひとときとなるはずです。雨の日でも楽しめる屋内の施設なので、天候を気にせずお立ち寄りいただけます。歴史散策の合間に、心安らぐスポットとして、ぜひ訪れてみてください。
ご当地の味とおすすめ店：鳥取城の近くで楽しめる食事
鳥取城周辺には、鳥取ならではの美味しい料理を楽しめるお店がたくさんあります。観光の合間に、ぜひ地元の味を堪能してください。
鳥取和牛：最高級のブランド牛
鳥取県は、品質の高い「鳥取和牛」の産地として知られています。きめ細やかな肉質と、とろけるような脂の甘みが特徴です。鳥取市内のステーキハウスや焼肉店では、鳥取和牛を使った贅沢な料理を味わうことができます。城下町の趣あるお店で、地元の銘柄牛を堪能してみてはいかがでしょうか。旅の思い出になること間違いありません。
海の幸：日本海の恵みを満喫
鳥取県は日本海に面しており、新鮮な海の幸にも恵まれています。特に、冬にはカニ（松葉ガニ）が有名ですが、それ以外の季節でも、イカやアジ、サザエなど、旬の魚介類を味わうことができます。鳥取市内の寿司店や海鮮料理店では、新鮮な海の幸をふんだんに使った料理を味わえます。新鮮な魚介は、その場でしか味わえない格別の美味しさです。
とうふちくわ：鳥取ならではの練り物
鳥取の特産品としてユニークなのが「とうふちくわ」です。魚のすり身に豆腐を混ぜて作られたもので、一般的なちくわよりもふわふわとした食感と、優しい味わいが特徴です。そのまま食べても美味しいですが、おでんに入れたり、炒め物にしたりと、様々な料理に活用されます。鳥取市内のスーパーやお土産物店で購入できますので、お土産としてもおすすめです。地元の人々に愛される素朴な味を、ぜひ体験してみてください。
周辺名所への行き方：移動もスムーズに
鳥取城跡の周りにある観光名所へは、歩いても公共交通機関を使っても、とてもスムーズに移動できます。鳥取市の中心部にあるため、効率よく観光をお楽しみいただけます。
仁風閣へのアクセス
仁風閣は鳥取城跡の山麓に隣接しています。鳥取城跡の入り口から徒歩で数分圏内です。城跡とセットで訪れるのがおすすめです。
鳥取砂丘へのアクセス
鳥取砂丘へは、鳥取駅から路線バスでアクセスするのが一般的です。鳥取駅バスターミナルから砂丘行きのバスに乗車し、約20分で到着します。バスの本数も多いので便利です。
わらべ館へのアクセス
わらべ館は、鳥取城跡から徒歩で約10分から15分ほどの距離にあります。鳥取県立博物館の近くに位置しており、歴史と文化の両方を体験できるエリアです。
まとめ：初心者にもおすすめの鳥取城、旅の秘訣
鳥取城跡は、戦国時代の悲劇的な籠城戦の舞台となった歴史ある山城です。天守閣は今はありませんが、残された石垣や堀、曲輪の跡からは、当時の激しい戦の様子や武将たちの息遣いを強く感じられます。特に、山頂からの雄大な眺望は、訪れる皆様の心に深く印象づける景色です。歴史に興味がある方はもちろん、美しい自然の中で山歩きを楽しみたい方にとっても、きっと素晴らしい体験となるに違いありません。
見どころが多く、周辺施設や地元グルメと合わせて一日中楽しめる場所なので、旅の際はぜひ時間にゆとりを持ってお越しください。歴史に触れ、美しい景色を眺め、鳥取ならではの美味しい料理を味わう。そんな鳥取城跡への旅は、かけがえのない思い出になるはずです。ぜひ、鳥取城で歴史のロマンに触れてみてください。
この記事を読んでいただきありがとうございました。