大田原城:桜と歴史が織りなす天空の城跡を巡る旅

戦国時代のお城 一覧

栃木県の北部に位置する大田原市に、かつて強固な防御を誇った城があります。それが大田原城です。現在はその壮大な姿を見ることはできませんが、残された遺構や美しい公園の姿から、往時の歴史と人々の営みに思いを馳せられます。

特に桜の季節には、城跡全体が淡いピンク色に染まり、多くの観光客を魅了します。歴史好きの方も、そうでない方も、大田原城を巡る旅はきっと忘れられない思い出となるに違いありません。この記事が、あなたの旅の素晴らしい手引きとなることを願っています。

大田原城の歴史:戦国から明治へ、300年の時を刻んだ居城

大田原城は、室町時代から戦国時代にかけての天文12年(1543年)頃、大田原資清によって築かれました。それまで本拠としていた町島(まちじま)の水口居館から移り、この地を新たな本拠地としたのです。城の築かれた場所は、現在の龍城公園がある丘陵地で、周囲を蛇尾川(さびがわ)に囲まれた天然の要害でした。

大田原氏は、この城を拠点に周辺地域を支配し、戦国の動乱期を生き抜きました。特に、豊臣秀吉の奥州仕置の際には、秀吉が二泊するなど、歴史の重要な局面で表舞台に登場しました。関ヶ原の戦いでは徳川方につき、会津攻めの前線基地としても重要な役割を果たします。徳川家康がこの地を重視し、城の補修を命じた記録も残っています。

江戸時代に入ると、大田原藩の藩庁が置かれ、明治維新までの約326年間にわたり、大田原氏の居城として栄えました。奥州道中の要衝として、また、幕府から有事の際の詰米(非常食)を預かるなど、その戦略的な重要性は江戸時代も変わらず維持されました。しかし、廃藩置県により明治4年(1871年)に廃城となり、多くの建物は取り壊されました。

その後、城跡は明治時代に大蔵大臣を務めた渡辺国武の所有となり、昭和12年(1937年)にその子である渡辺千冬(司法大臣)が大田原町(現在の那須烏山市)に寄贈し、公園として整備されました。城の歴史を紐解くと、この地で繰り広げられた激しい戦いや、城を守り抜いた人々の強い意志が伝わります。

大田原城の見どころ紹介:往時の面影と桜の共演

現在、大田原城に当時の天守や御殿などの建物は残っていません。しかし、残された遺構からは、かつての壮大な姿を想像できます。城跡は「龍城公園」として整備され、市民の憩いの場となっています。

強固な防御を物語る土塁と空堀

大田原城は、本丸、二の丸、三の丸に区画された複郭式平山城でした。最も高い場所に位置する本丸は、南北約65メートル、東西約50メートルの規模で、四方には高さ3メートルを超える強固な土塁が巡らされていました。

現在もその土塁が良好な状態で保存されており、城の堅牢な防御力を物語っています。本丸と二の丸の間には空堀が掘られ、橋でつながれていました。これらの遺構を歩くと、当時の築城技術の高さや、敵の侵入を防ぐための工夫が随所に見つかります。

二の丸、三の丸、北曲輪、西曲輪

本丸の南には二の丸、二の丸の西には三の丸が配されていました。また、本丸の北側には土塁で仕切られた二段構造の北曲輪があり、その西側には西曲輪が広がっていました。

これらの曲輪跡を巡ると、城の広大な規模と複雑な縄張りが実感できます。大手は三の丸の虎口(出入り口)から入り、二の丸を経て本丸に至る構造でした。搦手(裏口)は北曲輪の下段に蛇尾川に向かって設けられていました。

那須連山を一望する眺望

本丸跡からは、大田原の市街地を一望できます。天気の良い日には、遠くには那須連山や日光連山まで見渡せる雄大な景色が広がります。この眺望は、かつての城主たちも同じように眺めていたに違いありません。季節や時間帯によって表情を変えるこの絶景は、訪れる人々を魅了します。

桜の名所、龍城公園

大田原城跡は、春には約450本もの桜が咲き誇る、栃木県有数の桜の名所として知られています。特に4月上旬から中旬にかけて見頃を迎え、「大田原市さくら祭」が開催されます。夜にはライトアップも行われ、幻想的な夜桜を楽しめます。桜のトンネルを歩くと、まるでタイムスリップしたかのような気分になります。この景色は必見です。

映える撮影スポット:歴史と自然のコントラストを楽しむ

大田原城跡は、その歴史的な深さだけでなく、美しい景観も魅力です。特に写真撮影を楽しむ方には、いくつかの「映える」場所があります。

桜と土塁の共演

春には、本丸の土塁に植えられた桜の巨木が満開となり、その壮大な姿は圧巻です。桜と土塁の組み合わせは、歴史と自然が調和した美しい景色を作り出します。特に、青空の下でピンク色の桜が映える写真は、SNS映えすること間違いなしです。

空堀と石垣の深み

深く掘られた空堀や、苔むした石垣は、歴史の重みを感じさせる撮影スポットです。木々の間から差し込む光が、遺構の陰影を際立たせ、一層趣深い写真が撮れます。

展望広場からのパノラマビュー

本丸跡の広場からは、市街地と那須連山、日光連山が織りなすパノラマビューが楽しめます。特に夕暮れ時は、空が茜色に染まり、幻想的な写真を撮影できます。雲の形や光の具合によって、様々な表情を見せる景色は、何度でもシャッターを切りたくなります。

おすすめの時間帯と季節

  • 春(4月上旬~中旬):桜の開花時期は、城跡が最も華やかになる時期です。昼間の青空と桜、夜のライトアップされた夜桜、どちらも美しい写真が撮れます。
  • 午前中:光が柔らかく、城跡全体を美しく照らします。人出が少ない時間帯を狙うと、より落ち着いて撮影を楽しめます。
  • 夕暮れ時:夕日が城跡を茜色に染め上げ、ドラマチックな写真を撮影できます。空の色の変化も楽しんでください。

どの季節に訪れても、大田原城跡はあなたを魅了する美しい景色を提供します。

現地体験:歴史と文化、そして自然に触れる

大田原城跡周辺では、歴史や文化をより深く体験できる様々な施設や催しがあります。

大田原市歴史民俗資料館

大田原城や大田原市の歴史、民俗に関する資料が展示されています。城の模型や発掘された遺物などが展示されており、城への理解を一層深めることができます。城跡を訪れる前に立ち寄ると、より深く城の歴史背景を理解でき、城跡散策が何倍も楽しくなります。

那須国造碑(なすのくにのみやつこのひ)

国宝に指定されている那須国造碑は、大田原市に現存する貴重な文化財です。奈良時代に建立されたと考えられており、当時の歴史や文化を今に伝えています。関連施設である「大田原市なす風土記の丘湯津上資料館」では、その歴史と背景について詳しく学べます。

栃木県なかがわ水遊園

栃木県唯一の水族館であり、全国的にも珍しい淡水魚専門の水族館です。那珂川に生息する魚を中心に、アマゾン川の魚など約330種の生き物を展示しています。家族連れはもちろん、大人も楽しめる体験講座も開催されています。

あじさいまつり

大田原城跡がある龍城公園では、6月下旬から7月上旬にかけて約6,000株の紫陽花が咲き誇る「あじさいまつり」が開催されます。色とりどりの紫陽花が城跡を彩る姿は、見る者を魅了します。桜の季節とはまた違った、しっとりとした美しさを楽しめます。

交通手段:大田原城へのアクセス

大田原城跡へのアクセスは、公共交通機関でも車でも可能です。

電車とバスを利用する場合

最寄り駅はJR東北本線の西那須野駅です。西那須野駅から大田原市営バス「大田原市内循環線」または「黒羽線」に乗車し、「大田原城址公園」バス停で下車すると、城跡はすぐ目の前です。

車を利用する場合

東北自動車道西那須野塩原インターチェンジから国道400号線を経由し、約20分で大田原市街地へ到着します。城跡の麓には無料駐車場が整備されているため、車での訪問も安心です。駐車場から本丸跡までは、整備された遊歩道を歩いて登ります。

周辺の観光名所:歴史と自然が息づく大田原の魅力

大田原城跡の周辺には、他にも魅力的な観光スポットが点在しています。城跡を訪れた後は、ぜひこれらの場所にも足を延ばしてみてください。

那須神社

大田原市にある歴史ある神社で、その創建は古く、地域の人々の信仰を集めてきました。静かで厳かな雰囲気の中で、歴史を感じながら散策できます。

道の駅 那須与一の郷

那須与一にちなんだ扇形の大屋根が特徴の道の駅です。地元産の新鮮な野菜や特産品が豊富に揃い、お土産選びに最適です。那須与一伝承館も隣接しており、歴史に触れることもできます。地元食材を使ったレストランもあり、食事も楽しめます。

雲巌寺(うんがんじ)

奥州街道沿いにある、歴史と趣のある曹洞宗の古刹です。特に秋の紅葉は美しく、多くの参拝者や観光客が訪れます。静かで落ち着いた雰囲気の中で、日本の禅の精神に触れられます。

那須野が原公園

広大な敷地を持つ総合公園です。四季折々の花が楽しめる花壇や、大型遊具のある広場、バーベキュー場など、家族連れで一日中楽しめる施設が充実しています。城跡散策の後に、自然の中でリフレッシュするのに最適です。

ご当地の味とおすすめ店:大田原の美食を堪能する

大田原には、地元の豊かな自然が育んだ美味しい食材がたくさんあります。城下町ならではの郷土料理や、新鮮な特産品を味わえる場所が豊富です。

とちぎ和牛

豊かな自然の中で育まれた「とちぎ和牛」は、きめ細やかな肉質ととろけるような旨みが特徴です。大田原市内には、美味しいとちぎ和牛を味わえるレストランや焼肉店があります。ステーキやしゃぶしゃぶで、その上質な味わいを堪能してください。

那須豚(なすとん)

那須野が原の恵まれた環境で育った「那須豚」も、大田原のブランド豚です。ジューシーで甘みのある肉質は、とんかつや生姜焼きなど、様々な料理で楽しめます。地元の飲食店で、その美味しさを味わってみてください。

そば、うどん

栃木県はそばの産地としても知られ、大田原市内にも手打ちそばを提供するお店が点在します。風味豊かなそばや、コシのあるうどんは、旅の途中のランチにぴったりです。

おすすめの食事処

  • 道の駅 那須与一の郷 レストラン:地元の食材をふんだんに使ったメニューが豊富に揃います。特に地元野菜を使った料理は、素材の味を存分に楽しめます。
  • 地元のラーメン店や洋食店:大田原市内には、地元の人々に愛されるラーメン店や、こだわりの洋食を提供するレストランが多数あります。事前に調べて、お好みの店を見つけるのも良いでしょう。
  • 和菓子店やカフェ:散策の合間に立ち寄りたいのが、地元の和菓子店やカフェです。大田原ならではのスイーツや、こだわりのコーヒーを味わいながら、ゆっくりと休憩できます。

周辺名所への行き方:大田原観光を充実させるルート

  • 大田原城跡から那須烏山市歴史民俗資料館:徒歩約5分。城跡の麓に位置しています。
  • 大田原城跡から道の駅 那須与一の郷:車で約10分。国道461号線を西へ進みます。
  • 大田原城跡から龍門の滝:車で約15分。少し距離がありますが、訪れる価値のある場所です。
  • 大田原城跡から栃木県なかがわ水遊園:車で約20分。お子様連れにもおすすめのスポットです。
  • 道の駅 那須与一の郷から那須神社:車で約5分。
  • 道の駅 那須与一の郷から雲巌寺:車で約20分。

まとめ:大田原城で歴史と自然、そして美食を満喫する旅へ

大田原城は、戦国の歴史を今に伝え、美しい桜をはじめとする豊かな自然に囲まれた魅力的な城跡です。難攻不落と謳われた城の面影を土塁や空堀に感じながら、歴史のロマンに浸れます。春には桜が咲き誇り、夏には紫陽花が彩るなど、季節ごとに異なる表情を見せてくれます。

周辺には、栃木県唯一の淡水魚水族館や、国宝の那須国造碑など、歴史や文化に触れられるスポットが豊富にあります。さらに、とちぎ和牛や那須豚など、地元の美味しい食材を使った料理も旅の楽しみを一層深めます。

大田原城を訪れる際は、歩きやすい靴と服装で、時間をかけてゆっくりと散策するのが良いでしょう。歴史と自然、そして美食が調和した大田原の旅は、きっとあなたの心に深く刻まれる素晴らしい思い出となるはずです。

この記事を読んでいただきありがとうございました。

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