山深い栃木の地に、かつて天空にそびえ、難攻不落と謳われた山城があります。それが烏山城です。戦国時代の激しい攻防を今に伝えるこの城跡は、訪れる人々に深い感動を与えます。豊かな自然に抱かれた城跡を巡り、歴史の息吹を感じる旅に出かけませんか。この記事では、烏山城の魅力から周辺の観光情報まで、あなたの旅を豊かにする情報をお届けします。
烏山城の歴史：激動の時代を駆け抜けた山城の物語
烏山城は、室町時代後期の1406年頃、那須資家によって築かれました。那須氏の居城として、北関東の要衝を抑える重要な役割を担いました。この地は、常陸国（現在の茨城県）との境に位置し、戦略上極めて重要な地点でした。城が築かれたのは、現在の那須烏山市の市街地を一望できる標高200メートルほどの独立峰です。その険しい地形は、まさに天然の要塞と言えました。
戦国時代には、宇都宮氏や佐竹氏など、周辺の有力大名との間で激しい攻防が繰り広げられた歴史を持ちます。特に、天然の地形を巧みに利用した堅固な守りは、「難攻不落の城」としてその名を轟かせました。幾度となく攻め込まれながらも、その堅牢さゆえに落城することは稀だったと伝えられています。城をめぐる戦いの記録からは、当時の武将たちの智謀と勇気が垣間見えます。
江戸時代に入ると、烏山藩の藩庁が置かれ、明治維新までその役割を果たしました。那須氏が関ヶ原の戦いで西軍に与したため改易された後、松下氏、堀氏、大久保氏、そして幕末まで大名として続いた大名家が城主となりました。
それぞれの時代において、烏山城は地域の政治、経済、文化の中心として栄えました。城の歴史を紐解くと、この地で繰り広げられた激しい戦いや、城を守り抜いた人々の強い意志が伝わります。また、江戸時代の平和な世では、城下町の発展と共に、文化的な側面も育まれました。
烏山城の見どころ紹介：山城ならではの壮大な遺構と絶景
烏山城は、今もなお、山城ならではの壮大な遺構を数多く残しています。現在、天守や御殿といった建物は残っていませんが、地形を巧みに利用した縄張りの妙や、強固な防御施設の跡から、往時の姿を想像できます。
堅固な石垣と広大な空堀
特に注目すべきは、本丸跡を取り囲むように広がる石垣です。これは、当時の高度な石積技術を示す貴重な遺構であり、現在でもその堅牢さを保っています。敵の侵入を阻むために築かれた石垣は、城の歴史の証人と言えます。
また、郭と郭の間を隔てる深い空堀や、防御の要となった土塁も随所に残っており、往時の堅固な守りを肌で感じられます。これらの空堀は、深い谷のような形状をしており、敵が容易に侵入できないよう工夫されました。
曲がりくねった大手道跡
城の主要な入り口であった大手道跡は、曲がりくねった形状をしています。これは、敵が一度に攻め上がれないように、また、視界を遮ることで城の構造を把握させないための工夫です。この道をたどると、当時の兵士たちがどのような困難を乗り越えて城を守ったのか、想像が膨らみます。山城の醍醐味を味わえる場所の一つです。
二の丸跡と本丸跡
城の中心となる本丸跡や二の丸跡からは、かつての城郭の広がりを体感できます。現在では平坦な広場となっていますが、ここに天守や御殿があったと想像すると、歴史へのロマンが一層深まります。特に本丸跡は、烏山城の最も高い場所に位置し、戦略上の重要拠点でした。
眺望の美しさ：天空からの絶景
烏山城は標高が高いため、本丸跡などからは烏山市街地や那須野ヶ原を一望できます。特に澄んだ日には、遠くの山々まで見渡せる絶景が広がります。この景色はまさに必見です。城から見下ろす景色は、かつての城主たちも同じように眺めていたに違いありません。季節や時間帯によって表情を変えるこの絶景は、何度訪れても新しい発見があります。
映える撮影スポット：四季折々の表情を見せる城跡と周辺
烏山城跡は、その歴史的な深さだけでなく、美しい景観も魅力です。特に写真撮影を楽しむ方には、いくつかの「映える」場所があります。
石垣と自然の調和
苔むした石垣と周囲の木々が織りなすコントラストは、山城ならではの美しさです。特に、木漏れ日が差し込む時間帯は、幻想的な写真が撮れます。季節ごとに異なる表情を見せる石垣は、その背景となる木々や空の色と相まって、多様な写真表現を可能にします。
空堀の雄大さ
深く掘られた空堀は、その規模に圧倒されます。広角レンズで全体を捉えると、城の防御の堅固さが伝わる迫力ある一枚になります。空堀の底から見上げる構図も、その深さを強調し、臨場感あふれる写真を撮影できます。
眺望を背景に
本丸跡からの眺望を背景に、人物を入れて撮影すると、雄大な自然と歴史を感じさせる記念写真が撮れます。夕暮れ時は、空が茜色に染まり、一層ドラマチックな写真になります。特に、雲が少なく、空が広く見える日には、息をのむような美しい夕焼けを背景にした写真が撮れることでしょう。
おすすめの季節
- 春：新緑が美しく、城跡全体が瑞々しい緑に包まれます。桜の木も点在しており、桜と城跡の組み合わせも楽しめます。
- 夏：深緑の季節となり、木々の生命力に満ちた風景が広がります。暑さ対策は必要ですが、緑豊かな景色は心を癒やします。
- 秋：紅葉が城跡を彩り、色彩豊かな写真を楽しめます。特にモミジやカエデの赤や黄色は、石垣の灰色とのコントラストが美しく、絶好の撮影機会となります。
- 冬：木々が葉を落とし、城跡の縄張りや空堀の形状がより明確に見えます。澄み切った冬の空の下、凛とした城跡の姿を捉えられます。雪が積もれば、一層幻想的な景色が広がります。
烏山城跡は、どの季節に訪れても、あなたを魅了する美しい景色を提供します。
現地体験：歴史と文化に触れる旅の楽しみ
烏山城跡周辺では、歴史や文化をより深く体験できる施設や催しがあります。
那須烏山市歴史民俗資料館
烏山城や那須烏山市の歴史、民俗に関する資料が展示されています。烏山城のジオラマや当時の生活を伝える道具など、城への理解を一層深めることができます。城跡を訪れる前に立ち寄ると、より深く城の歴史背景を理解でき、城跡散策が何倍も楽しくなります。
烏山和紙会館
国の伝統的工芸品に指定されている「烏山和紙」の歴史や技術に触れられます。烏山和紙は、非常に丈夫で美しいことで知られています。会館では、和紙が作られる工程や、様々な和紙製品を見学できます。和紙作り体験ができる場合もあり、旅の思い出作りに最適です。自分で作った和紙は、きっと大切な記念品となるでしょう。
山あげ会館
国の重要無形民俗文化財にも指定されている「烏山の山あげ行事」に関する資料が展示されています。この祭りは、毎年7月に行われ、巨大な山車が街を練り歩く壮大なものです。会館では、祭りの迫力ある様子を、映像や展示で感じられます。祭りの時期でなくても、その熱気を体験できる貴重な場所です。
烏山和紙灯籠まつり
毎年秋には、烏山和紙を使った美しい灯籠が街を彩る「烏山和紙灯籠まつり」が開催されます。幻想的な光景は、訪れる人々を魅了します。この時期に訪れると、日中の城跡散策とは異なる、夜の烏山の魅力を発見できます。
交通手段：烏山城へのアクセスと快適な移動
烏山城跡へのアクセスは、公共交通機関でも車でも可能です。
電車とバスを利用する場合
最寄り駅はJR烏山線の烏山駅です。宇都宮駅からJR烏山線に乗り換え、約45分で烏山駅に到着します。烏山駅からは、城跡までは、徒歩で約20分から30分かかります。山道を登るため、歩きやすい靴での訪問がお勧めです。駅からはタクシーの利用も可能です。荷物が多い場合や、時間を短縮したい場合には便利です。
車を利用する場合
東北自動車道矢板インターチェンジまたは宇都宮インターチェンジから約40～50分です。城跡の麓には無料駐車場が整備されているので、車での訪問も便利です。駐車場から本丸跡までは、緩やかな坂道や階段を登る必要があります。
周辺の観光名所：烏山城下町とその周辺を巡る
烏山城跡の周辺には、他にも魅力的な観光スポットが点在しています。城跡を訪れた後は、ぜひこれらの場所にも足を延ばしてみてください。
龍門の滝
那珂川の支流、江川にかかる美しい滝です。幅約65メートル、落差約20メートルという雄大な姿は、見る者を圧倒します。特に新緑や紅葉の季節には、一層見事な景色が広がります。滝壺近くまで降りて、その迫力を間近で感じられます。春には桜、秋には紅葉と滝のコントラストが美しく、四季折々の表情を楽しめます。
那珂川
栃木県を代表する清流の一つです。夏には鮎釣りを楽しむ人々で賑わい、川沿いを散策するだけでも心が癒やされます。川遊びやカヌーなどのアクティビティも楽しむことができます。清らかな水の流れと、豊かな自然が広がる風景は、都会の喧騒を忘れさせてくれるでしょう。
太平寺
烏山城主であった那須氏ゆかりの寺院です。歴史を感じさせる静かな境内で、心を落ち着かせる時間を過ごせます。境内には、那須氏の墓所や、歴史的な建造物があり、烏山城との関わりを深く感じられます。
大金温泉
烏山から少し足を延ばすと、大金温泉があります。豊かな自然に囲まれた温泉地で、日帰り入浴施設や宿泊施設があります。城跡散策で疲れた体を、温泉でゆっくり癒やすのは最高の体験です。
ご当地の味とおすすめ店：烏山ならではの美食を堪能
烏山には、地元の豊かな自然が育んだ美味しい食材がたくさんあります。城下町ならではの郷土料理や、新鮮な特産品を味わえる場所が豊富です。
鮎料理
那珂川の清流で育った鮎は、烏山を代表する味覚です。川魚特有の臭みが少なく、身が締まっていて、豊かな香りが特徴です。塩焼きはもちろん、刺身や甘露煮など、様々な調理法で新鮮な鮎を味わえます。特に夏季は鮎の旬となり、多くの飲食店で提供されます。
那須烏山産そば
烏山は、そばの産地としても知られています。豊かな土壌と清らかな水が育むそばは、風味豊かで、のどごしが良いのが特徴です。手打ちそばを、地元のそば店で味わうのは格別です。温かいそば、冷たいそば、どちらもその美味しさを堪能できます。
おすすめの食事処
- 道の駅 きつれがわ：烏山市街地から少し離れていますが、地元の新鮮な野菜や特産品が豊富に揃い、食事処もあります。地元の食材を活かしたメニューが楽しめます。
- 地元のそば店：烏山駅周辺や市街地には、手打ちそばを提供する店がいくつかあります。それぞれの店で、異なる風味や食感のそばを体験できます。
- 鮎料理専門店：那珂川沿いには、夏季を中心に鮎料理を提供する店が点在します。旬の時期に訪れて、新鮮な鮎の味を心ゆくまで堪能してください。
- 地元の居酒屋や食事処：烏山駅周辺には、地元の人々に愛される居酒屋や食事処があります。そこで、地元の食材を使った郷土料理や、季節の味覚を味わうのは旅の醍醐味です。
周辺名所への行き方：効率的な散策ルートの提案
- 烏山城跡から那須烏山市歴史民俗資料館：徒歩約5分。城跡の麓に位置しています。
- 烏山城跡から龍門の滝：車で約10分。烏山城から北東方面へ向かいます。
- 烏山駅周辺から烏山和紙会館：徒歩約15分。駅の北東方面に位置します。
- 烏山駅周辺から山あげ会館：徒歩約10分。駅のすぐ近くにあります。
- 龍門の滝から太平寺：車で約5分。
- 烏山駅周辺から大金温泉：車で約15分。公共交通機関を利用する場合は、バスの利用も可能です。
これらの場所は、車や徒歩、タクシーを組み合わせることで効率よく巡れます。レンタサイクルを利用するのも、城下町をゆっくり散策するのに良い方法です。
まとめ：烏山城を巡る旅、その魅力と楽しみ方
烏山城は、戦国の歴史を肌で感じ、雄大な自然に癒やされる素晴らしい観光地です。山城ならではの難攻不落の雰囲気を味わいながら、残された石垣や空堀を巡ると、当時の武将たちの息遣いが聞こえてくるようです。歴史に詳しくない方でも、その静かで厳かな雰囲気や、残された遺構の迫力にはきっと心を動かされます。
周辺には、美しい龍門の滝や、伝統文化に触れられる施設もあり、一日では遊びきれないほどの魅力が詰まっています。また、那珂川の清流で育った鮎や、風味豊かなそばなど、地元の美味しい味覚も旅の楽しみの一つです。烏山を訪れる際は、歩きやすい靴と服装で、時間をかけてゆっくりと散策するのが良いでしょう。
歴史のロマンに浸り、地元の美味しい味覚を堪能する烏山城の旅は、きっとあなたの心に深く刻まれる思い出となるはずです。
この記事を読んでいただきありがとうございました。