栃木県宇都宮市に位置する宇都宮城は、平安時代後期から約500年にわたり、関東の有力な豪族であった宇都宮氏の本拠地として栄えた平城です。幾重にも巡らされた堀と土塁に守られた堅固な城としてその名を歴史に刻みました。現在は城の建物は残されていませんが、大規模な土塁や堀の跡が良好な状態で残り、一部の櫓が復元され、当時の城の規模と防御の堅固さを今に伝えます。
宇都宮城跡を訪れる人々は、宇都宮氏がこの地でどのような歴史を築き、どのような役割を果たしたのかを想像し、深い歴史の趣を感じます。歴史に興味を持つ方々はもちろん、そうでない方々にとっても、この地で育まれた地域の文化や、活気ある街並みに触れられる特別な場所となります。宇都宮城を巡る旅は、きっと心に残る体験になります。この機会に、関東の歴史が息づく宇都宮城の魅力をご堪能ください。
お城の歴史：誰がいつ築き、どんな役割を果たしたか
宇都宮城の築城は、平安時代後期に藤原宗円または藤原秀郷によって始められたと伝わります。以来、約900年にわたり宇都宮氏の居城として代々受け継がれ、下野国（現在の栃木県）の中心的な役割を果たしました。宇都宮氏は、鎌倉幕府の有力御家人であり、京都とも深い繋がりを持ち、5代宇都宮頼綱は百人一首の成立にも深く関わりました。
日本中が戦乱に巻き込まれた南北朝時代から戦国時代にかけて、宇都宮城は敵の攻撃に備えるため、堀と土塁を幾重にも巡らせた守りの堅い城となりました。宇都宮城を巡っての戦いも頻繁に行われ、城下町が焼かれることもありました。
約500年間宇都宮を支配してきた宇都宮氏は、豊臣秀吉に滅ぼされました。近世（江戸時代）には譜代大名の居城となり、中でも本多正純は、城と城下町の大改造を行い、今日の宇都宮の中心市街地の骨格を作り上げました。宇都宮城は、将軍が日光東照宮へ参拝する際（日光社参）の宿泊場所となり、本丸には将軍のための御成御殿が建てられました。
日光社参は幕府の威信をかけた大事業であり、城も城下町も大変な賑わいでした。しかし、明治維新期の戊辰戦争で建造物は焼失し、明治以降にはほとんどの土塁や堀は失われました。現在は、わずかに残る遺構や絵図を手がかりに、本丸の土塁や櫓、堀などが復元されています。宇都宮城は、日本の激動の歴史と、宇都宮氏の歩みを今に伝える、貴重な存在です。
見どころ紹介：土塁、堀などの特徴と魅力
宇都宮城は平城であるため、かつての天守閣などの主要な建物は残されていません。しかし、現在では本丸の一部が「宇都宮城址公園」として整備され、往時の面影を伝える様々な遺構が良好な状態で残されています。復元された櫓や土塁、堀が見どころです。
復元された清明台櫓と富士見櫓
宇都宮城址公園の顔ともいえるのは、復元された2階建ての清明台櫓と富士見櫓です。それぞれ1階部分を見学できます。靴を脱いで上がれば、小窓から宇都宮の景色を眺めることができます。清明台櫓はほかの櫓よりも高い場所に建てられているため、天守閣としての役割を果たしていたという説もあります。
大規模な土塁と内堀
忠実に再現されているのは櫓だけではありません。大規模に築かれた土塁や、白漆喰塀、そして内堀も見ごたえがあります。掘の中には魚が泳いでいることもあります。土塁の上へは階段を使うか、中央にあるエレベーターを利用できます。これらの防御施設からは、当時の築城技術の高さと、敵の侵入を阻むための工夫が感じられます。
宇都宮城の歴史を学べる「清明館」
公園内にある「清明館」では、宇都宮城の歴史や、宇都宮氏に関する資料が展示されています。江戸時代の宇都宮市を再現したジオラマも展示されており、5分ほどの動画で城の歴史を学ぶこともできます。イラストの解説も分かりやすく、無料で見学できます。
宇都宮城跡は、単なる広場ではありません。そこには、中世から近世にかけての宇都宮の歴史が詰まっており、その遺構からは、当時の人々の知恵と、城を護るための情熱が伝わってきます。時間をかけてじっくりと城内を巡り、その魅力を存分に味わってください。
映える撮影スポット：人気の撮影場所や時期・時間帯のおすすめ
宇都宮城址公園は、豊かな自然に囲まれ、四季折々の美しい表情を見せてくれます。写真撮影を楽しむ方々にとって、魅力的なスポットが数多く存在します。
復元された櫓と堀の景観
復元された清明台櫓や富士見櫓と、その手前に広がる堀は、写真映えする構図となります。特に、白漆喰の壁と木々の緑、そして水面のコントラストは美しい一枚になります。櫓を背景に、芝生広場から広角で撮影すると、その雄大さを表現できます。金曜日から日曜日の日没後から21時までライトアップも行われており、夜間の撮影もおすすめです。
四季折々の桜
宇都宮城址公園には、4種類の桜が植えられています。2月下旬から4月中旬にかけて、河津桜、しだれ桜、ソメイヨシノ、大山桜が次々と開花します。開花期の異なる桜と城跡を背景にした構図は、見事な写真になります。桜の季節には、櫓と桜のコラボレーションを狙うのも良いでしょう。
芝生広場やイベントと櫓の組み合わせ
広々とした芝生広場では、年間を通して様々なイベントが開催されます。例えば「宇都宮餃子祭り」など、イベント開催時に櫓を背景に撮影すると、活気ある雰囲気と歴史的建造物の組み合わせがユニークな一枚になります。
現地体験：催し物、展示など観光体験
宇都宮城の周辺では、歴史をより深く体感できる様々な取り組みが行われています。単に城跡を巡るだけでなく、積極的に参加して、思い出に残る体験をしてみてはいかがでしょうか。
清明館での展示見学
宇都宮城址公園内にある「清明館」では、宇都宮城の歴史に関する資料や、江戸時代の宇都宮城下を再現したジオラマなどが展示されています。無料で入場でき、短時間で宇都宮城の歴史を概観できます。
毎月第3日曜日の櫓開放
宇都宮城址公園の清明台櫓と富士見櫓は、通常は1階部分のみの見学ですが、毎月第3日曜日には櫓の内部が開放され、より高い場所から城下を眺められます。この機会に、当時の城主が見たであろう景色を想像してみてください。
二荒山神社（ふたあらやまじんじゃ）の参拝
宇都宮市の中心部に位置する宇都宮二荒山神社は、宇都宮の地名の由来ともいわれる歴史ある神社です。宇都宮城からは徒歩圏内です。源頼朝や徳川家康も戦勝祈願したと伝わるパワースポットであり、都会の中心にありながらも厳かな雰囲気が漂います。
これらの体験を通じて、宇都宮城の歴史と地域の文化に触れ、より充実した観光を楽しめます。単なる見学にとどまらない、五感で感じる歴史体験が待っています。
交通手段：電車・乗合自動車・車での行き方、最寄り駅など
宇都宮城へのアクセスは、様々な方法があります。ご自身の旅行スタイルに合わせて、最適な交通手段を選択してください。
電車と徒歩またはバスで向かう
鉄道を利用する場合、東武宇都宮線の東武宇都宮駅から徒歩約10分です。JR宇都宮駅からは市内循環バス「きぶな」で約20分、「宇都宮城址公園入口」で下車後、徒歩約1分です。JR宇都宮駅から徒歩では約25分かかります。公共交通機関を利用すれば、車の運転を気にすることなく、ゆっくりと景色を楽しみながら移動できます。
車で訪れる
車でのアクセスも便利です。東北自動車道の鹿沼インターチェンジから約20分、または宇都宮インターチェンジから約25分です。宇都宮市役所の東側にある城址公園駐車場または市役所の東第2駐車場を利用できます。いずれも無料です。自家用車やレンタカーを利用すれば、時間を気にせず、周辺の観光地も巡りやすくなります。
周辺の観光名所：徒歩・公共交通で行ける名所
宇都宮城を訪れたなら、周辺の魅力的な観光名所にも足を延ばす価値があります。歴史と文化、そして自然に触れる旅をさらに充実させることができます。
宇都宮二荒山神社
宇都宮城址公園から徒歩圏内、JR宇都宮駅からバスで5分ほどの場所にあります。宇都宮の総鎮守として信仰を集める歴史ある神社です。
カトリック松が峰教会
宇都宮城址公園から徒歩約5分です。大谷石を使用した聖堂は、現存する最大級のロマネスク建築として知られる国の登録有形文化財です。
大谷資料館
宇都宮市北西部にあり、バスまたは車でアクセスできます。巨大な地下空間が広がる大谷石採掘場跡で、幻想的な雰囲気を味わえます。
これらの周辺施設を組み合わせることで、宇都宮城の旅をより豊かなものになります。それぞれの場所で、新たな発見や感動があります。
ご当地の味とおすすめ店：城の近くで楽しめる食事＆喫茶店
宇都宮城の観光を満喫したら、地元ならではの美味しい食事を楽しんでみてはいかがでしょうか。宇都宮市には、地域の特産品を活かした料理を提供するお店が点在します。
宇都宮餃子
宇都宮といえば「餃子」です。市内には200軒以上の餃子店があり、野菜をたっぷり使ったヘルシーな餃子が主流です。宇都宮餃子会が運営する「来らっせ本店」では、複数の有名店の餃子を食べ比べできます。
宇都宮焼きそば
宇都宮餃子と並ぶご当地グルメの一つが「宇都宮焼きそば」です。昔ながらの食堂風の店で味わえる、懐かしい味のソウルフードです。
かぶと揚げ
若鶏の半身を豪快に揚げた「かぶと揚げ」も宇都宮の隠れたソウルフードです。塩と胡椒のみのシンプルな味付けで、カリッとジューシーな味わいです。
旅の大きな楽しみの一つである食事は、宇都宮城周辺で、地元の美味しい味覚をぜひ探してみてください。
周辺名所への行き方：徒歩何分／交通手段などの簡潔な案内
宇都宮城周辺の観光名所への具体的なアクセス方法を案内します。効率よく観光を楽しむための参考にしてください。
宇都宮二荒山神社へ
宇都宮二荒山神社へは、宇都宮城址公園から徒歩約10分から15分です。
カトリック松が峰教会へ
カトリック松が峰教会へは、宇都宮城址公園から徒歩約5分から10分です。
大谷資料館へ
大谷資料館へは、JR宇都宮駅から路線バスで約30分から40分です。
これらの時間はあくまで目安です。ご自身の体力や交通状況に合わせて、時間に余裕を持った計画を立てることをおすすめします。
まとめ：歴史と現代が融合する宇都宮城の魅力
宇都宮城は、平安時代から続く歴史と、復元された櫓や土塁が魅力的な平城跡です。歴史散策の後は、宇都宮二荒山神社で厳かな雰囲気に触れ、カトリック松が峰教会の美しい大谷石建築を鑑賞する時間をおすすめします。宇都宮名物の餃子や焼きそば、かぶと揚げといった地元グルメを味わうのも旅の醍醐味です。歴史と現代が融合し、美食も楽しめる宇都宮で、心に残る特別な体験ができます。ぜひ一度、この城を訪れて、その魅力を肌で感じてみてください。
この記事を読んでいただきありがとうございました。