東北の要衝!花巻城跡で戦国の息吹と賢治の世界に触れる旅

戦国時代のお城 一覧

岩手県花巻市に位置する花巻城(はなまきじょう)は、中世から近世にかけて、この地の支配を巡る重要な拠点でした。もとは南部氏以前の領主である稗貫氏(ひえぬきし)の居城「鳥谷崎城(とやがさきじょう)」でしたが、豊臣秀吉の奥羽仕置によって南部氏がこの地を領有し、「花巻城」となりました。北上川と複数の支流に囲まれた天然の要害を活かした平山城で、南部藩の南の守りの要として重要な役割を担いました。

現在は「花巻城跡公園」として整備され、一部に復元された西御門や、当時の土塁、堀の跡が良好に残ります。また、花巻は宮沢賢治ゆかりの地としても知られ、歴史と文学が融合した独特の雰囲気を持つ場所です。この記事では、花巻城の奥深い歴史から、見どころ、さらには周辺の観光情報まで、余すことなくご紹介します。

この城跡の持つ静かな魅力と、そこに秘められた物語を知れば、きっと心に残るひとときが生まれます。さあ、花巻城跡の魅力を一緒に探してみませんか。

花巻城の歴史:誰がいつ築き、どんな役割を果たしたか

花巻城の起源は古く、もとは稗貫氏の居城である「鳥谷崎城」として享禄年間(1528年~1532年)に築城されたと伝わります。稗貫氏は、花巻地方を支配した有力な国人領主でした。

花巻城が歴史の転換点を迎えるのは、天正19年(1591年)の豊臣秀吉による奥羽仕置です。この時、小田原征伐に参陣しなかった稗貫広忠は所領を没収され、代わって南部氏がこの地を領有することになりました。南部氏は、重臣の北信愛(きたのぶちか)・秀愛(ひでちか)親子を花巻城代に任命し、城を整備して「花巻城」と改称しました。花巻城は、南部藩の南の守りの要として、特に南に接する仙台藩との藩境警備の重要な拠点となりました。また、稗貫・和賀二郡内の行政の中心地としても機能し、城を中心とした城下町の発展が進められました。

慶長5年(1600年)の関ヶ原の戦いの際には、和賀・稗貫氏の残党による一揆が勃発し、花巻城は激しい攻防の舞台となりました。城代の北信愛は防戦に努め、一揆勢を撃退しました。その後も花巻城は、南部藩にとって重要な存在であり続け、参勤交代の際には、藩主一行の宿泊地となるなど、交通の要衝としても栄えました。江戸時代を通じて、城下町は盛岡に次ぐ第二の都市として繁栄を遂げました。明治維新後、廃城となり、多くの建物は解体されましたが、その歴史的な価値は今も花巻市に受け継がれています。

見どころ紹介:復元された西御門、土塁、堀跡などの特徴と魅力

花巻城には、残念ながら天守などの建物は現存しません。しかし、平成7年に復元された「西御門」は、往時の城の雰囲気を今に伝える貴重な建造物です。門の側には、当時の石垣が良好に残されており、その力強い佇まいからは、かつてここに堅固な防御ラインが存在したことが伺えます。

城跡は現在「花巻城跡公園」として整備されており、公園周辺には、かつての土塁や堀の跡が良好に残されています。特に、本丸跡は広々とした公園となっており、かつて城の中心であった場所を肌で感じられます。公園周辺には、かつての大手門があったとされる場所を示す石碑や、時鐘(じしょう)と呼ばれる鐘楼が設置されており、城下町の歴史を偲ばせます。この時鐘は、藩政時代に花巻城の二の丸に置かれていたものが移されたもので、現在も時を告げています。

また、花巻市役所近くには、円城寺門(えんじょうじもん)と呼ばれる唯一の現存する城門が移築されています。これは、花巻城の搦手門(からめてもん、裏門)であったとされ、花巻市指定有形文化財(建造物)に指定されています。移築された形ではありますが、当時の城門の姿を間近で見られる貴重な遺構です。これらの見どころを巡りながら、当時の築城技術や城の防御体制、そして城下町の賑わいを想像してみてはいかがでしょうか。

映える撮影スポット:復元された門、土塁、時鐘などを中心に

花巻城跡公園は、歴史的な遺構と自然が調和した、写真愛好家にとって魅力的な撮影スポットです。特に、復元された「西御門」は、その堂々とした姿が写真に重厚感を与えます。門と、その脇に残る石垣を背景に、広角レンズでその全景を収めるのがおすすめです。門の細部の意匠にも注目して、歴史を感じる一枚を撮影するのも良いでしょう。

春には、城跡公園内に植えられた桜が満開となり、ピンク色に彩られた西御門は息をのむような美しさです。この時期は多くの観光客で賑わうため、早朝や夕暮れ時を狙うと、より落ち着いて撮影できます。夏には、青々とした木々の緑が城跡全体を包み込み、清々しい風景が広がります。木々の間から差し込む木漏れ日が、土塁や堀に美しい陰影を落とします。

秋には、紅葉が城跡を彩り、赤や黄色、オレンジ色のグラデーションが歴史遺構と見事な調和を見せます。また、花巻市役所近くの時鐘も、城下町のシンボルとして人気の被写体です。歴史ある鐘楼と、その背景に広がる街並みを対比させて撮影するのも興味深い試みです。冬には、雪に覆われた白銀の城跡が幻想的な美しさを見せます。どの季節に訪れても、花巻城跡はあなたを魅了します。

現地体験:催し物、展示など観光体験

花巻城跡では、大規模な常設の体験プログラムは少ないですが、花巻市では年間を通じて様々な催し物や展示が開催され、歴史や文化に触れる機会を提供しています。特に、花巻城の歴史を学ぶ上で欠かせないのが、花巻市博物館や、花巻市総合文化財センターです。

花巻市博物館では、花巻の歴史や文化、そして宮沢賢治に関する展示が豊富にあり、花巻城や南部藩の歴史についても深く学べます。花巻市総合文化財センターでは、花巻市内の文化財に関する情報が集約されており、時期によっては花巻城に関する企画展が開催されることもあります。これらの施設を訪れることで、花巻城が築かれた時代背景や、当時の人々の暮らしについてより深く理解できます。

花巻城跡公園内には、城の歴史や構造を解説する説明板が設置されており、自分のペースで歴史を学ぶことができます。復元された西御門や、土塁、堀の跡を巡りながら、かつての城の姿を想像する体験は、ここでしか味わえないものです。また、花巻は宮沢賢治ゆかりの地として、彼の文学の世界に触れる施設やイベントが多数存在します。

交通手段:電車・乗合自動車・車での行き方、最寄り駅など

花巻城跡へのアクセスは、非常に便利です。

電車を利用する場合: JR東北本線の花巻駅が最寄り駅となります。盛岡駅からJR東北本線に乗り換え、約30分で花巻駅に到着します。花巻駅から花巻城跡公園までは徒歩で約10分から15分程度と、非常にアクセスしやすい場所にあります。

乗合自動車を利用する場合: 花巻市内を巡る路線バスが運行しており、「市役所前」バス停などが城跡に近く、バス停から徒歩数分で到着します。バスの運行本数は比較的多いですが、事前に時刻表を確認することをおすすめします。

車を利用する場合: 東北自動車道「花巻南インターチェンジ」または「花巻インターチェンジ」から約10分から15分で花巻城跡に到着します。花巻城跡公園周辺には、無料の駐車場が整備されており、安心して駐車できます(薬研堀跡や花巻市民体育館の駐車場などを利用可能)花巻市内は比較的道が分かりやすいです。

どの交通手段を選ぶにしても、花巻城跡は花巻市の中心部に位置するため、アクセスに困ることはありません。特に徒歩でのアクセスが容易なため、花巻駅周辺の観光と合わせて散策するのもおすすめです。

周辺の観光名所:徒歩・公共交通で行ける名所

花巻城跡を訪れたなら、周辺の魅力的な観光名所もぜひ巡ってみてください。花巻市には、城跡以外にも見どころが豊富に存在します。

鳥谷崎神社(とやがさきじんじゃ): 花巻城跡のすぐ近くにある神社で、かつて花巻城であった鳥谷崎城の鎮守であったと伝わります。花巻城跡公園から徒歩約4分です。城の歴史と深く結びついた神社であり、静かな雰囲気の中で歴史に思いを馳せられます。

時鐘: 花巻城大手門跡の近く、花巻市役所前に位置する鐘楼です。花巻城跡公園から徒歩約3分です。かつて城の時を告げた鐘であり、今もその音を響かせることがあります。城下町の歴史を象徴する存在です。

円城寺門: 花巻城の唯一の現存する城門で、花巻市指定有形文化財です。花巻城跡公園から徒歩約4分です。移築されたものではありますが、当時の城門の姿を間近で見られる貴重な遺構です。

マルカンビル大食堂: 花巻市民のソウルフードとして親しまれている、レトロな雰囲気の食堂です。花巻城跡公園から徒歩約10分です。特に、高さ25cmのソフトクリームは名物で、多くの人々を魅了しています。懐かしい雰囲気の中で食事を楽しめます。

宮沢賢治記念館・宮沢賢治童話村・宮沢賢治イーハトーブ館: 花巻が誇る世界的文豪、宮沢賢治ゆかりの施設群です。花巻城跡から車で約10~15分(バスも利用可能)です。彼の作品の世界観を体験したり、生前の足跡を辿ったりできます。文学ファンには必見のスポットです。

花巻温泉郷: 花巻市は、豊かな温泉地としても知られています。複数の温泉旅館が点在し、それぞれ異なる泉質や雰囲気を持っています。花巻城跡から車で約15~20分です。城巡りの後に、温泉で旅の疲れを癒すのは最高の贅沢でしょう。

これらのスポットを巡ることで、花巻城の歴史探訪だけでなく、花巻の豊かな文化や自然、そして美食も満喫できます。

ご当地の味とおすすめ店:城の近くで楽しめる食事&喫茶店

花巻城周辺には、花巻ならではの美味しいご当地グルメを楽しめるお店が点在しています。城巡りの疲れを癒し、地元の味を堪能するのも旅の醍醐味です。

花巻温泉の湯めぐり: 花巻温泉郷では、複数のホテル・旅館で湯めぐりが楽しめます。温泉地ならではの食事処では、地元の食材を活かした会席料理や郷土料理を味わえます。特に、岩手のブランド牛「前沢牛」や「花巻黒ぶた」を使った料理は絶品です。

花巻ラーメン: 花巻市は、様々なラーメン店が点在する「ラーメンのまち」としても知られています。昔ながらの中華そばから、味噌ラーメン、担々麺など、個性豊かなラーメンが楽しめます。地元の人々に愛されるお店を訪れてみるのも良いでしょう。

マルカンビル大食堂のソフトクリーム: 上記の観光名所でも紹介しましたが、マルカンビル大食堂のソフトクリームは、花巻を訪れたらぜひ味わいたい一品です。約25cmの高さのソフトクリームを割り箸で食べるというスタイルもユニークです。そのレトロな雰囲気と、懐かしい味は、忘れられない体験となるでしょう。

地酒とクラフトビール: 花巻市には、酒蔵やワイナリーがあり、地元の米やぶどうを使った日本酒やワインが造られています。また、遠野市に隣接していることから、遠野産のホップを使ったクラフトビールも楽しめます。

おすすめの喫茶店・カフェ: 花巻駅周辺や、市街地には、おしゃれなカフェや、レトロな雰囲気の喫茶店も多く存在します。城巡りの後に、ゆっくりと休憩するのに最適です。地元の食材を使ったスイーツや、こだわりのコーヒーを提供しているお店もあります。観光案内所で、最新のおすすめ店情報を尋ねるのも良い方法です。

これらの美食体験を通して、花巻城の旅をさらに豊かなものにしてください。

周辺名所への行き方:徒歩何分/交通手段などの簡潔な案内

花巻城跡を拠点として、周辺の観光名所へのアクセスを簡潔に紹介します。

  • 鳥谷崎神社:
    花巻城跡公園から徒歩約4分。
  • 時鐘:
    花巻城跡公園から徒歩約3分。
  • 円城寺門:
    花巻城跡公園から徒歩約4分。
  • マルカンビル大食堂:
    花巻城跡公園から徒歩約10分。
  • 宮沢賢治記念館・童話村・イーハトーブ館:
    車で約10~15分。花巻駅からバスも運行しています。
  • 花巻温泉郷:
    車で約15~20分。花巻駅からバスも運行しています。

これらの情報はあくまで目安であり、時間帯や交通状況によって変動する場合があります。時間に余裕を持って計画を立てることをおすすめします。特に公共交通機関を利用する際は、乗り換えや運行本数に注意してください。

まとめ:初心者にもおすすめの理由、旅の秘訣

花巻城跡は、歴史に詳しくない方でも十分に楽しめる、魅力あふれる史跡です。天守などの建物は現存しませんが、復元された西御門や、残された土塁・堀の跡から、かつての堅固な城としての役割をはっきりと感じ取れます。整備された公園内を歩けば、歴史の重みを肌で感じながら、静かな環境で心を落ち着かせられます。

初めて城を訪れる方でも、現地に設置された説明板を読むことで、その歴史や構造を理解しやすい工夫が凝らされています。また、周辺には宮沢賢治ゆかりの施設や、花巻温泉郷、そしてマルカンビル大食堂のソフトクリームなど、花巻ならではの観光スポットやグルメが豊富にあり、歴史と文学、そして美食を一度に楽しめます。

旅の秘訣は、時間にゆとりを持って、城跡の隅々までじっくりと散策することです。その上で、地元のおいしい料理を味わい、花巻の魅力を存分に堪能することに尽きます。歴史のロマンと美しい風景、そして美食に満ちた花巻城への旅は、きっと忘れられない思い出となるに違いありません。

この記事を読んでいただきありがとうございました。

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