岩手県遠野市に位置する鳥谷ヶ崎城(とやがさきじょう)は、中世から戦国時代にかけて、遠野地方を治めた阿曽沼氏(あそぬまし)の居城として栄えました。遠野盆地のほぼ中央、比高約60メートルの独立丘陵に築かれた天然の要害です。現在は「遠野城跡公園」として整備され、広大な敷地内に土塁や堀、そして曲輪の跡が良好に残ります。
また、遠野物語に登場する伝説の地としても知られ、歴史と民話が融合した独特の雰囲気を持つ場所です。初めて城を訪れる方も、歴史愛好家の方も、誰もがその雄大な規模と、そこに秘められた物語に心惹かれることでしょう。この記事では、鳥谷ヶ崎城の奥深い歴史から、見どころ、さらには周辺の観光情報まで、余すことなくご紹介します。鳥谷ヶ崎城を巡り、遠野の歴史と伝説を感じる旅へ出かけましょう。
この城跡の持つ静かな魅力と、そこに秘められた物語を知れば、きっと心に残るひとときが生まれます。さあ、鳥谷ヶ崎城跡の魅力を一緒に探してみませんか。
鳥谷ヶ崎城の歴史:誰がいつ築き、どんな役割を果たしたか
鳥谷ヶ崎城は、鎌倉時代後期から南北朝時代にかけて、阿曽沼氏によって築かれたと伝わります。阿曽沼氏は、本拠地を鳥谷ヶ崎城に置き、遠野盆地一帯を支配しました。城は、周囲を湿地帯に囲まれた独立丘陵に築かれ、天然の要害として優れた防御力を誇っていました。遠野盆地の中心に位置することから、地域の政治、経済、軍事の中心として重要な役割を担っていました。
戦国時代に入ると、阿曽沼氏は周辺の南部氏や葛西氏といった有力大名との間で激しい攻防を繰り広げました。鳥谷ヶ崎城は、度重なる攻撃に耐え抜き、阿曽沼氏の勢力を支えました。しかし、慶長二年(1597年)、豊臣秀吉による奥羽仕置(おううしおき)によって、阿曽沼氏は改易(かいえき)となり、鳥谷ヶ崎城もその役目を終え、廃城となりました。
その後、盛岡藩の直轄領となり、遠野は南部氏の支配下に入りました。そして、慶長四年(1599年)には、阿曽沼氏に代わって遠野に入部した八戸直政が、鳥谷ヶ崎城の東側に新たに遠野城(鍋倉城)を築城することになります。
現在、鳥谷ヶ崎城跡は「遠野城跡公園」として整備され、当時の土塁や空堀の跡が良好に残されています。この歴史の舞台で、激動の時代を生きた武将たちの営みに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
見どころ紹介:土塁、空堀、曲輪などの特徴と魅力
鳥谷ヶ崎城には、天守や石垣は現存しません。広大な敷地に良好に残る土塁と明確な空堀の跡は、当時の城の堅固さと規模を今に伝えています。特に注目すべきは、丘陵の地形を巧みに利用した複雑な縄張り(城の設計)です。本丸、二の丸、三の丸といった複数の曲輪(くるわ)が段々に配置され、それぞれの曲輪を深い空堀と高い土塁が囲んでいます。
城跡の周囲を巡る遊歩道を歩くと、その規模の大きさに驚かされます。特に、本丸を取り囲む土塁は、その高さと厚みから、かつてここに堅固な防御ラインが存在したことが容易に想像できます。空
も深く、敵の侵入を阻む上で重要な役割を担っていたことでしょう。堀の底から土塁を見上げると、その迫力に圧倒されます。また、城内には複数の井戸跡が残されており、水の確保が重要であったことが伺えます。
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本丸跡は、広々とした平坦な空間が広がっており、遠野盆地全体を見渡せます。ここに立つと、阿曽沼氏がこの地を治めた理由がよく分かります。広大な視野が広がるため、戦略的な重要性も感じ取れるでしょう。城内には説明板も設置されており、当時の役割や構造について学びながら散策ができます。歴史の重みと、そこに息づく遠野の自然の美しさを肌で感じられる場所です。
映える撮影スポット:人気の撮影場所や時期・時間帯のおすすめ
鳥谷ヶ崎城跡は、歴史的な価値だけでなく、その美しい景観も写真愛好家にとって人気の撮影スポットです。特に、広大な敷地と、残された土塁や空堀が織りなす地形の美しさは、素晴らしい被写体となります。深い空堀の陰影や、土塁の緩やかな起伏は、見る者に強い印象を与えます。本丸跡から遠野盆地を見下ろす眺めは、まさに絶景であり、開放感あふれる一枚を撮影できます。
春には、城跡公園内に植えられた桜が満開となり、ピンク色に染まる城跡は息をのむような美しさです。特に、桜と土塁や空堀のコントラストは、見る者に強い印象を与えます。この時期は多くの観光客で賑わうため、早朝や夕暮れ時を狙うと、より落ち着いて撮影できます。夏には、青々とした木々の緑が城跡全体を包み込み、清々しい風景が広がります。木々の間から差し込む木漏れ日が、土塁や堀に美しい陰影を落とします。
秋には、紅葉が城跡を彩り、赤や黄色、オレンジ色のグラデーションが壮大な歴史遺構と見事な調和を見せます。
冬には、雪に覆われた白銀の城跡が幻想的な美しさを見せます。静寂の中で雪化粧をまとった土塁や堀の線は、墨絵のような趣があり、独特の雰囲気を醸し出します。どの季節に訪れても、鳥谷ヶ崎城跡公園はあなたを魅了します。
現地体験:催し物、展示など観光体験
鳥谷ヶ崎城跡では、常設の体験プログラムは少ないですが、遠野市では年間を通じて様々な催し物や展示が開催され、歴史や文化に触れる機会を提供しています。特に、遠野市立博物館は、鳥谷ヶ崎城や遠野の歴史、そして遠野物語の世界について深く学べる重要な施設です。ここには、遠野の民話や伝説に関する資料、そして遠野の歴史を伝える展示が豊富にあります。
遠野市立博物館では、鳥谷ヶ崎城に関する発掘調査の成果や、阿曽沼氏に関する資料が展示されており、城の歴史や当時の人々の暮らしについて深く学べます。また、遠野は「民話の里」として知られ、遠野物語の世界を体験できる施設やイベントが多数存在します。例えば、遠野ふるさと村では、茅葺屋根の家屋が並び、昔ながらの日本の農村風景を体験できます。ここでは、語り部による遠野物語の朗読を聞くこともできます。
城跡を巡る際には、散策路が整備されているため、自分のペースでじっくりと見学できます。鳥谷ヶ崎城は、遠野物語に登場する「座敷童子」の伝説とも関連付けられることがあるため、民話の世界に思いを馳せながら散策するのも良いでしょう。歴史の重みと、そこに息づく民話の魅力が融合したこの場所で、心に残るひとときを過ごしてください。
交通手段:電車・乗合自動車・車での行き方、最寄り駅など
鳥谷ヶ崎城跡へのアクセスは、いくつかの方法があります。
電車を利用する場合: JR釜石線の遠野駅が最寄り駅となります。盛岡駅からJR釜石線に乗り換え、約1時間10分で遠野駅に到着します。遠野駅から鳥谷ヶ崎城跡までは、徒歩またはタクシーでアクセスできます。遠野駅からは徒歩で約15分から20分程度です。
乗合自動車を利用する場合: 遠野市内循環バスが遠野市内を巡る路線バスを運行しています。「遠野市役所前」バス停が城跡に近く、バス停から徒歩数分で到着します。バスの運行本数は限られている場合があるため、事前に時刻表を確認することをおすすめします。特に休日や時間帯によっては、便数が少ないことも考慮に入れてください。
車を利用する場合: 最もアクセスしやすい方法です。釜石自動車道「遠野インターチェンジ」から国道283号線を経由して約10分から15分で鳥谷ヶ崎城跡に到着します。城跡公園の入口付近には無料の駐車場が整備されており、安心して駐車できます。道中には、遠野盆地ののどかな田園風景が広がり、ドライブも満喫できます。
どの交通手段を選ぶにしても、事前にしっかりと計画を立てておくことが、スムーズな旅の秘訣です。特に公共交通機関を利用する場合は、時刻表の確認は必須です。
周辺の観光名所:徒歩・公共交通で行ける名所
鳥谷ヶ崎城跡を訪れたなら、周辺の魅力的な観光名所もぜひ巡ってみてください。遠野市には、城跡以外にも見どころが豊富に存在します。
遠野市立博物館: 鳥谷ヶ崎城の歴史や、遠野物語の世界について深く学べる施設です。鳥谷ヶ崎城跡から徒歩約10分と近く、城巡りの理解を深める上で欠かせない場所です。遠野の民俗文化や伝説に関する展示が充実しています。
カッパ淵: 遠野物語に登場するカッパの伝説が残る、小川のほとりにある淵です。鳥谷ヶ崎城から車で約10分です。カッパを釣るためのキュウリが置かれていたり、カッパの像があったり、ユニークな体験ができます。自然豊かな場所であり、散策にも最適です。
遠野ふるさと村: 茅葺屋根の南部曲り家などが復元され、昔ながらの日本の農村風景を体験できるテーマパークです。鳥谷ヶ崎城から車で約20分です。語り部による遠野物語の朗読を聞いたり、昔の農具を見学したりできます。
伝承園: 遠野の民話や伝説を伝える施設で、佐々木喜善(遠野物語の語り部)の生家「御蚕神堂(おしらさまどう)」が移築されています。鳥谷ヶ崎城から車で約15分です。遠野の精神文化に触れることができる場所であり、静かに遠野物語の世界に浸れます。
道の駅遠野 風の丘: 遠野市の観光情報や特産品が豊富に揃う道の駅です。鳥谷ヶ崎城から車で約10分です。レストランでは、地元の食材を使った料理が楽しめます。お土産探しにも最適であり、旅の思い出を形に残せます。
これらのスポットを巡ることで、鳥谷ヶ崎城の歴史探訪だけでなく、遠野の豊かな自然や文化、民話の世界も満喫できます。
ご当地の味とおすすめ店:城の近くで楽しめる食事&喫茶店
鳥谷ヶ崎城周辺には、遠野ならではの美味しいご当地グルメを楽しめるお店が点在しています。城巡りの疲れを癒し、地元の味を堪能するのも旅の醍醐味です。
遠野ジンギスカン: 遠野のソウルフードとして親しまれているジンギスカンは、新鮮な羊肉を秘伝のタレに漬け込んで焼く料理です。市内には多くのジンギスカン専門店があり、それぞれのお店で独自の味を楽しめます。特に、遠野産のホップを使ったビールとの相性は抜群です。鳥谷ヶ崎城周辺の飲食店街で多く見られます。
遠野そば: 遠野地方で古くから食べられてきたそばで、独特の風味と香りが特徴です。地元のそば粉を使い、手打ちで作られるお店も多く存在します。温かいかけそばや、冷たいざるそばで、素朴な味わいを堪能できます。
遠野の地酒: 遠野市は、日本酒の生産が盛んな地域でもあります。地元の酒米と、遠野の清らかな水を使って醸造される日本酒は、辛口から甘口まで様々です。城巡りの後に、地元の居酒屋で地酒と郷土料理を味わうのも良いでしょう。遠野産のホップを使ったクラフトビールも人気です。
道の駅遠野 風の丘のレストラン: 地元の食材を活かした料理が楽しめるレストランです。遠野ジンギスカン定食や、遠野そば、地元の野菜を使ったメニューなど、遠野の味を気軽に楽しめます。窓から遠野の豊かな自然を眺めながら食事をするのは、最高の体験です。
おすすめの喫茶店: 遠野駅周辺や、市街地には、落ち着いた雰囲気で休憩できる喫茶店やカフェも存在します。城巡りの後に、温かいコーヒーを飲みながら、旅の思い出を振り返るのも良いものです。地元の食材を使ったスイーツや、手作りの焼き菓子を提供しているお店もあります。観光案内所で、最新のおすすめ店情報を尋ねるのも良い方法です。
これらの美食体験を通して、鳥谷ヶ崎城の旅をさらに豊かなものにしてください。
周辺名所への行き方:徒歩何分/交通手段などの簡潔な案内
鳥谷ヶ崎城跡を拠点として、周辺の観光名所へのアクセスを簡潔に紹介します。
- 遠野市立博物館:
鳥谷ヶ崎城跡から徒歩約10分。 - カッパ淵:
車で約10分。遠野駅からレンタサイクルも便利です。 - 遠野ふるさと村:
車で約20分。遠野駅からバスも運行しています。 - 伝承園:
車で約15分。遠野駅からバスも運行しています。 - 道の駅遠野 風の丘:
車で約10分。
これらの情報はあくまで目安であり、時間帯や交通状況によって変動する場合があります。時間に余裕を持って計画を立てることをおすすめします。特に公共交通機関を利用する際は、乗り換えや運行本数に注意してください。
まとめ:初心者にもおすすめの理由、旅の秘訣
鳥谷ヶ崎城跡は、歴史に詳しくない方でも十分に楽しめる、魅力あふれる史跡です。天守などの建物は現存しませんが、広大な敷地に良好に残された土塁や堀、そして曲輪の跡から、かつての堅固な山城としての役割をはっきりと感じ取れます。
整備された公園内を歩けば、歴史の重みを肌で感じながら、遠野の豊かな自然を満喫できます。特に、遠野物語に登場する伝説の地として、民話の世界に思いを馳せる体験は、訪れる価値があります。
初めて城を訪れる方でも、遠野市立博物館で城の歴史を学ぶことができ、園内の説明板も充実しているため、無理なく楽しめます。また、周辺にはカッパ淵や遠野ふるさと村、そして遠野ジンギスカンなど、遠野ならではの観光スポットやグルメが豊富にあり、歴史と文化、そして美食を一度に楽しめます。旅の秘訣は、時間にゆとりを持って、城跡の隅々までじっくりと散策することです。その上で、地元のおいしい料理を味わい、遠野の魅力を存分に堪能することに尽きます。
歴史のロマンと美しい風景、そして美食に満ちた鳥谷ヶ崎城への旅は、きっと忘れられない思い出となるに違いありません。この機会にぜひ、遠野の地へ足を運んでみてください。きっと、あなたにとって特別な場所となるでしょう。
この記事を読んでいただきありがとうございました。