戦乱の世、ストレス多く、医療も未発達だった戦国時代。武士の平均寿命が42歳、庶民に至っては30歳程度といわれる中、驚くべき長寿を全うした武将たちがいます。彼らはどのように死線を乗り越え、天寿を全うしたのでしょうか？
この記事では、戦国時代の長寿武将をランキング形式でご紹介し、彼らが過酷な時代を生き抜き、長命を保つことができた秘訣に迫ります。彼らの生涯と功績にも光を当て、その驚異的な生命力に学んでいきましょう。
（※本記事の年齢・情報は諸説あるものを含みます。）
戦国武将の平均寿命は？庶民との違い
冒頭でも触れた通り、戦国時代の平均寿命は、現代と比べると著しく短いものでした。しかし、武将と庶民の間にも差があり、武将の平均寿命は42歳程度と、庶民よりは若干長めでした。これは、武将の方が比較的良質な食事を得られたことや、漢方などの医療アクセスが庶民よりはあったことなどが要因として考えられています。
しかし、これから紹介する武将たちは、その平均さえも遥かに超える長寿を誇りました。一体どのような人物がいたのでしょうか？
驚異のTOP30！戦国長寿武将ランキング
多くの武将が志半ばで散った戦国時代において、まさに「生き抜いた」強者たち。その長寿ランキングを見ていきましょう。
第1位：滝川益氏（たきがわ ますうじ） – 伝109歳
織田信長、豊臣秀吉に仕えた武将。甲州征伐などにも参加したとされます。109歳という驚異的な長寿は、戦国時代ではまさに伝説級です。
第2位：南光坊天海（なんこうぼう てんかい） – 伝108歳
「黒衣の宰相」とも呼ばれ、徳川家康、秀忠、家光の三代にわたり将軍の側近として幕政に深く関与しました。その出自や前半生には謎が多いものの、108歳まで生きたとされる影響力絶大な僧侶です。（武将としての側面も持ちますが、主に政治顧問として活躍）
第3位：木幡高清（こわた たかきよ） – 伝106歳
相馬家の重臣として活躍し、相馬家の歴史に関する貴重な記録も残したとされる人物。106歳という長寿を全うし、息子も96歳まで生きた長寿家系であったと伝えられています。
第4位：石田重家（いしだ しげいえ） – 伝104歳
石田三成の息子。関ヶ原の戦い後に父と袂を分かち出家したとされますが、その後の詳細は不明な点が多いです。しかし、104歳まで生きたという説があり、もし事実であれば驚くべき長寿です。
第5位：国司元相（くにし もとすけ） – 伝101歳
毛利元就に仕え、吉田郡山城の戦いや厳島の戦いなど、毛利家の主要な戦いで活躍した重臣。101歳まで生き、毛利家の発展を支えました。
第6位：平賀元相（ひらが もとすけ） – 伝99歳
毛利家に仕えた武将で、豊臣秀吉から豊臣姓を賜るほどの信頼を得ていました。99年の生涯で毛利家の重要な局面に関わりました。
第7位：上条政繁（じょうじょう まさしげ） – 伝98歳
越後上杉氏の一族で、後に織田信長、豊臣秀吉、徳川家康に仕えました。激動の時代を98歳まで生き抜き、戦国時代の終焉を見届けた一人です。
第8位：北条幻庵（ほうじょう げんあん） – 97歳
後北条氏初代・北条早雲の子（三男または五男）。兄たちを支え、後北条家の発展に文化面からも貢献しました。97歳という長寿を保ち、一族の盛衰を見守りました。
第9位：大島光義（おおしま みつよし） – 97歳
美濃斎藤氏、織田信長、豊臣秀吉に仕え、朝鮮出兵でも戦功を挙げました。関ヶ原の戦いでは東軍につき、後に美濃で1万8千石を領しました。97歳まで生き、武勇と統治能力を示しました。
第10位：小梁川宗朝（こやながわ むねとも） – 96歳
伊達氏の家臣。伊達政宗の時代にも重臣として仕え、伊達家の発展に貢献しました。96歳の長寿を全うしました。
第11位：三好政勝（みよし まさかつ） – 96歳
三好長慶の一族で、三好三人衆の一人・三好政康の子。父と共に三好家の内紛や織田信長との戦いを経験しながらも96歳まで生き抜きました。
第12位：中条藤資（ちゅうじょう ふじすけ） – 96歳
越後国の国人で、上杉謙信に仕えました。謙信からの信頼も厚く、越後の安定に寄与した武将で、96年の生涯を閉じました。
第13位：北条長綱（ほうじょう ながつな） – 96歳
後北条氏の一族で、北条氏綱の子、北条氏康の弟にあたります。兄・氏康を補佐し、多くの戦いで活躍しました。後北条氏の滅亡後も生き延び、96歳で没したとされます。
第14位：竹内久勝（たけのうち ひさかつ） – 96歳
戦国時代末期から安土桃山時代を生きた武将。詳細は不明な点も多いですが、96歳という長寿を全うしたと記録されています。
第15位：宮城政業（みやぎ まさなり） – 95歳
戦国時代から江戸時代初期にかけて生きた武将。95歳まで生き、泰平の世の到来を見届けました。
第16位：須田盛秀（すだ もりひで） – 95歳
二階堂氏、伊達氏に仕えた武将。多くの合戦に参加し、その智謀で知られました。95歳まで生きたとされます。
第17位：多羅尾光俊（たらお みつとし） – 95歳
近江国の甲賀武士で、六角氏、織田信長、豊臣秀吉に仕えました。甲賀の地で影響力を持ち、95歳まで生きました。
第18位：志賀親次（しが ちかよし） – 95歳
豊後大友氏の家臣。島津氏の豊後侵攻の際に岡城に籠城し、寡兵で大軍を退けたことで知られる勇将です。95歳まで生き、その武名を後世に伝えました。
第19位：多羅尾光太（たらお こうた） – 95歳
多羅尾光俊の一族と考えられ、同様に甲賀の武士として活動したとされます。95歳の長寿を全うしました。
第20位：立石正賀（たていし まさよし） – 94歳
後北条氏に仕えた武将。北条氏滅亡後も生き延び、94歳で没したとされます。
第21位：村井重勝（むらい しげかつ） – 94歳
織田信長の家臣で、村井貞勝の子（または弟）。本能寺の変後も生き延び、豊臣秀吉に仕えました。94歳まで生きたとされます。
第22位：龍造寺家兼（りゅうぞうじ いえかね） – 93歳
「肥前の熊」と恐れられた龍造寺隆信の曽祖父。龍造寺氏の再興を果たし、その後の発展の礎を築きました。93歳で没。
第23位：松平忠輝（まつだいら ただてる） – 92歳
徳川家康の六男（資料によっては七男）。様々な逸話が残る人物で、改易されたものの92歳まで長生きしました。
第24位：竹内久盛（たけのうち ひさもり） – 92歳
戦国時代から江戸時代初期を生きた武将で、捕手術の流派である竹内流の開祖として知られます。92歳まで生きました。
第25位：一栗放牛（いちくり ほうぎゅう） – 92歳・討死
大崎氏、伊達氏に仕えた老将。92歳という高齢でなお戦場に立ち、討死したと伝えられる特異な武将です。
【91歳の長寿武将たち】
- 鬼庭綱元（おににわ つなもと）: 伊達政宗の傅役・重臣。知勇兼備の将として伊達家を支えました。
- 真田信之（さなだ のぶゆき）: 真田昌幸の長男で、真田幸村（信繁）の兄。関ヶ原では東軍につき、徳川の世で松代藩初代藩主として家名を保ちました。
- 志道広良（しじ ひろよし）: 毛利元就の初期からの重臣で、毛利氏の勢力拡大に大きく貢献しました。
- 北信愛（きた のぶちか）: 南部氏の家臣。南部信直を支え、藩政の安定に尽力しました。
- 大道寺直英（だいどうじ なおひで）: 後北条氏の家臣。北条氏康、氏政、氏直の三代に仕えました。
- 山田有栄（やまだ ありなが）: 島津氏の家臣。多くの戦いで活躍し、島津家の発展に貢献しました。
【90歳の長寿武将たち】
- 三好政康（みよし まさやす）: 三好三人衆の一人で、三好長慶の重臣。畿内を中心に勢力を振るいました。
- 丸目長恵（まるめ ながよし）: 剣術家として名高く、タイ捨流の開祖。相良氏に仕え、武勇にも優れていました。
- 赤星統家（あかほし むねいえ）: 肥後国の国人で、菊池氏、大友氏、龍造寺氏、島津氏と主君を変えながらも生き抜きました。
【その他の著名な長寿武将】
- 水野勝成（みずの かつなり） – 88歳：徳川家康の従兄弟。数々の武功を挙げ、「鬼日向」と恐れられました。
- 北条早雲（ほうじょう そううん） – 88歳：下剋上の代名詞ともいえる戦国大名の魁。伊豆・相模を平定し後北条氏の基礎を築きました。
- 島津義弘（しまづ よしひろ） – 85歳：「鬼石曼子（おにしまづ）」と恐れられた猛将。関ヶ原の退き口は伝説的です。
- 金森長近（かなもり ながちか） – 85歳：織田信長、豊臣秀吉、徳川家康に仕え、飛騨高山藩の初代藩主となりました。
- 尼子経久（あまご つねひさ） – 84歳：一代で山陰・山陽十一ヶ国を支配下に置いた謀将。
- 宇喜多秀家（うきた ひでいえ） – 83歳（流刑地で没）：豊臣五大老の一人。関ヶ原で西軍の主力として戦い、敗れて八丈島へ流罪となりました。
- 細川忠興（ほそかわ ただおき） – 83歳：文化人としても知られる武将。妻は明智光秀の娘・ガラシャ。
- 武田信虎（たけだ のぶとら） – 81歳：武田信玄の父。甲斐国を統一しましたが、信玄によって追放されました。
- 本多正信（ほんだ まさのぶ） – 79歳：徳川家康の謀臣として江戸幕府の基礎固めに貢献しました。
- 島津義久（しまづ よしひさ） – 78歳：島津家第16代当主。弟たちと共に島津氏の九州制覇を目指しました。
- 今川氏真（いまがわ うじざね） – 77歳：今川義元の子。桶狭間の戦い後、衰退する今川家を支え、文化人としても後半生を送りました。
- 細川幽斎（藤孝）（ほそかわ ゆうさい/ふじたか） – 77歳：足利将軍家、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康に仕えた知識人。古今伝授を受けたことでも有名です。
- 柳生宗矩（やぎゅう むねのり） – 76歳：徳川将軍家の剣術指南役。柳生新陰流を確立し、政治的な影響力も持ちました。
- 徳川家康（とくがわ いえやす） – 75歳：江戸幕府初代将軍。戦国時代を終焉させ、260年以上続く泰平の世の礎を築きました。
- 毛利元就（もうり もとなり） – 75歳：「三本の矢」の教えで知られる中国地方の覇者。謀略に長けた智将として名高いです。
- 藤堂高虎（とうどう たかとら） – 75歳：築城の名手として知られ、主君を7度変えながらも実力で生き抜きました。
「100歳超え武将も！驚きの生存戦略と長寿の秘密」
平均寿命が短い時代に、これほどの長寿を全うできた背景には何があったのでしょうか？
1. 比較的恵まれた栄養状態
武将、特に大名や上級武士は、庶民に比べて質の高い食事を摂る機会が多かったと考えられます。米を中心に、魚介類、野菜、豆類など、バランスの取れた食事は健康維持に不可欠です。
2. 漢方などの医療アクセス
当時の医療は現代とは比べものになりませんが、薬草や漢方を用いた治療は存在しました。高位の武将は、こうした医療へのアクセスも庶民よりはあったでしょう。
3. 日々の鍛錬と身体活動
武芸の鍛錬は日常的なものであり、これが結果的に適度な運動となって身体機能を維持するのに役立った可能性があります。また、鷹狩りなどの野外活動も体力維持に繋がったと考えられます。
4. 強靭な精神力とストレス管理
戦乱の世を生き抜くには、強靭な精神力が不可欠です。また、茶の湯や和歌、連歌といった文化的活動が、ストレスを和らげる役割を果たした可能性も指摘されています。
5. 情報収集力と危機回避能力
長生きするためには、戦で命を落とさないことはもちろん、政争などに巻き込まれないための情報収集力や状況判断能力、危機回避能力も重要だったでしょう。
6. 遺伝的要因
木幡高清のように、家族にも長寿が見られる場合、遺伝的な要因も少なからず影響していたのかもしれません。
もちろん、これらはあくまで推測であり、多くの「運」も作用したことは間違いありません。しかし、彼らがただ幸運だっただけでなく、何らかの努力や生活習慣が長寿に繋がった可能性は十分に考えられます。
戦国長寿武将 Q&Aコーナー
Q1: 戦国時代の一般庶民と武将の平均寿命に大きな差があったのはなぜですか？
A: 主な要因は「栄養状態」と「医療アクセス」です。武将は比較的安定した食料供給があり、栄養価の高い食事を摂る機会がありました。また、病気や怪我の際に漢方医などの手当てを受けられる可能性も庶民より高かったと考えられます。
Q2: 当時の医療は、長寿にどれくらい貢献できたのでしょうか？
A: 現代医学のような劇的な効果は期待できませんでしたが、薬草や鍼灸、漢方薬などは存在し、一定の治療効果や健康維持に役立ったと考えられます。例えば、徳川家康は自ら薬を調合するほど健康に関心が高かったと言われています。しかし、感染症（疱瘡、麻疹など）や重度の外傷に対する有効な治療法は乏しく、限界もありました。
Q3: 長寿の武将たちが特に重視していた健康法はありますか？
A: 特定の健康法というよりは、日々の生活習慣全般が影響したと考えられます。武芸による身体鍛錬、規則正しい生活（戦時下では難しいですが）、精神修養（禅や茶の湯など）、そして質の高い（当時の基準で）食事が挙げられます。また、情報を集め危険を察知し回避する能力も、結果的に長生きに繋がったと言えるでしょう。
Q4: 食生活で特に長寿に良かったものは何でしょうか？
A: 玄米や雑穀を中心とした主食、味噌や醤油などの発酵食品、季節の野菜や海藻、魚介類などが基本だったと考えられます。これらは現代の健康的な和食にも通じる要素が多く、バランスの取れた食事は長寿に寄与した可能性があります。ただし、塩分の過剰摂取による高血圧などのリスクもあったかもしれません。
Q5: ストレスの多い戦国時代、どのように健康を維持したのですか？
A: 武将たちは、武芸の鍛錬に没頭することや、鷹狩りなどの趣味、茶の湯、和歌、連歌、能といった文化活動を通じて精神的なバランスを保とうとしたと考えられます。また、強い目的意識や使命感、あるいは信仰心などが、困難な状況を乗り越える精神的な支えとなった可能性もあります。
Q6: 戦国武将の平均寿命42歳は、現代から見るとかなり短いですね？
A: はい、乳幼児の死亡率が高かったこと、戦いによる死、そして医療の未発達による病死などが主な要因です。そのため、42歳という平均寿命も、成人まで生き延びた人の中での平均と捉える必要があります。その中で70歳、80歳、ましてや90歳を超える長寿は驚異的と言えます。
まとめ：戦国武将の長寿から学ぶこと
戦国時代という、死と隣り合わせの過酷な環境の中で長寿を全うした武将たちの生き様は、私たちに多くのことを教えてくれます。それは、単に運が良かったというだけでなく、日々の鍛錬、精神的な強さ、そしておそらくは質の高い生活習慣の賜物だったのでしょう。
彼らの生き様から、現代社会における健康管理の重要性や、ストレスとの向き合い方、そして困難な状況でも生き抜く知恵と強さを学ぶことができるのではないでしょうか。彼らの驚異的な生命力は、時代を超えて私たちに勇気と示唆を与えてくれます。