徳島市街の中心部にそびえる城山に築かれた「徳島城」は、豊臣秀吉の四国平定後に蜂須賀家政が入城し、以来明治維新まで約280年間にわたり徳島藩蜂須賀氏の居城として栄えました。天守閣は現存しませんが、国の史跡に指定された広大な城跡は「徳島中央公園」として整備され、市民の憩いの場となっています。特に、徳島ならではの「阿波の青石」と呼ばれる緑色の結晶片岩(りょくでいへいがん)で築かれた石垣は圧巻で、独特の美しさを放っています。
城内には、復元された「鷲の門」や、国指定名勝である「旧徳島城表御殿庭園」、そして徳島藩の歴史を伝える「徳島城博物館」があり、訪れる人々にその歴史と文化を伝えています。この記事では、徳島城の深い歴史から見どころ、美しい撮影スポット、そして周辺の魅力的な観光地やご当地グルメまで、徳島城を心ゆくまで楽しむための情報をお届けします。ぜひ徳島城で、青石の輝きと阿波の歴史を感じる旅を体験してください。
徳島城の歴史:蜂須賀氏の拠点と阿波の発展
豊臣秀吉の四国平定と蜂須賀氏の入城
徳島城の歴史は、天正13年(1585年)の豊臣秀吉による四国平定に始まります。秀吉の家臣である蜂須賀家政が阿波国(現在の徳島県)の領主として入城し、その居城として徳島城の本格的な築城に着手しました。城山という天然の要害を利用し、石垣や堀を巡らせた堅固な城郭が築かれ、慶長年間にはほぼ完成したと言われています。
徳島城は、以来明治維新までの約280年間、蜂須賀氏14代にわたる徳島藩の居城として、阿波国の政治・経済・文化の中心地として大いに栄えました。城下町も整備され、活気あふれる都市へと発展を遂げました。
現存しない天守と代替の三階櫓
徳島城には、かつて本丸に天守閣があったとされていますが、その記録は少なく、何らかの事情で早い時期に取り壊されたと考えられています。その後、東二の丸に建てられた三階櫓が、天守の代用としてその役割を担っていました。
明治維新の廃城令により、城内の建物はほとんどが撤去され、現在の城跡には、石垣や堀、そして復元された鷲の門などが往時の面影を伝えています。
近代そして世界大戦からの復興
明治時代に入ると、廃城令により徳島城の建物はほとんどが取り壊され、城跡は公園として整備されました。しかし、太平洋戦争末期の1945年(昭和20年)7月4日の徳島大空襲により、唯一残されていた大手口の「鷲の門」も焼失するという甚大な被害を受けました。
戦後の復興期、市民の強い願いと努力により、市制100周年を記念して1989年(平成元年)に現在の「鷲の門」が復元されました。また、1941年(昭和16年)には旧徳島城表御殿庭園が国指定名勝となり、2006年(平成18年)には徳島城跡全体が国の史跡に指定され、歴史的価値が改めて評価されています。近年の発掘調査では、縄文時代や弥生時代の貝塚・土器片なども出土し、より古い時代の歴史遺産としても注目を集めています。
徳島城の見どころ:青石の石垣と名勝庭園
徳島城は天守閣が解体された城跡ですが、その石垣や庭園、そして復元された門など、見どころが豊富です。城内を巡ることで、当時の築城技術や、城を守る工夫を肌で感じられます。
「阿波の青石」が織りなす石垣
徳島城の最大の魅力の一つは、その独特の石垣です。地元眉山で産出される「阿波の青石」と呼ばれる緑泥片岩(りょくでいへいがん)を多用して築かれており、独特の深い緑色とつややかな質感は、他の城では見られない美しさを放っています。特に、大手口付近の石垣は、加工された大きな青石が用いられており、見る者を圧倒します。石垣に残る刻印を探しながら散策するのも、歴史のロマンを感じる楽しみ方です。
復元された「鷲の門」
徳島城の大手口に位置する「鷲の門」は、徳島大空襲で焼失しましたが、市民の寄付によって1989年(平成元年)に復元されました。4本の柱で切妻破風の屋根を支える格式高い薬医門で、往時の城の玄関口の威厳を今に伝えています。門をくぐると、徳島城博物館へと続く道が広がり、訪れる人々を歴史の世界へと誘います。
国指定名勝「旧徳島城表御殿庭園」
徳島城博物館の東側に広がる「旧徳島城表御殿庭園」は、江戸時代初期に蜂須賀家政が築造したと伝わる枯山水と築山泉水庭からなる庭園です。徳島ならではの青石が多く使われているのが特徴で、特に全長10mを超える青石橋は圧巻です。この橋が中央で折れているのは、徳島藩初代藩主蜂須賀至鎮が踏み割ったという伝説が残っています。
池には地下水路を通して内堀の海水が導入された「潮入り庭園」であることも特徴で、季節や時間帯によって異なる表情を見せます。一面ガラス張りのラウンジから、かつて藩主たちが見ていたであろう景色を眺めながら、400年の時の流れを感じてみてください。
徳島城の映える撮影スポット:歴史と自然が織りなす情景を記録する
徳島城跡は、その歴史的な遺構と豊かな自然が調和し、一年を通じて様々な表情を見せる撮影スポットに溢れています。訪れる時期や時間帯によって、異なる魅力的な写真を撮影できます。
青石の石垣と「鷲の門」
徳島城のシンボルである「鷲の門」と、その背景に広がる青石の石垣は、徳島城を代表する撮影スポットです。特に、空が青く澄み渡る日中や、夕暮れ時のマジックアワーには、門と石垣のコントラストが際立ち、絵になる一枚を撮影できます。桜の季節には、満開の桜と門が織りなす美しい情景も楽しめます。
旧徳島城表御殿庭園の趣ある風景
国指定名勝である旧徳島城表御殿庭園は、どこを切り取っても絵になる美しい庭園です。特に、青石橋や池の水面に映る木々の姿は、趣のある写真を演出します。庭園内の散策路を歩きながら、様々なアングルから撮影を楽しんでみてください。ガラス張りのラウンジからの眺めも、絶好のシャッターチャンスとなります。
城山からの展望
城山の上部、本丸跡や東二の丸跡からは、徳島市街地を一望できるパノラマビューが広がります。遠くには吉野川や紀伊水道まで見渡せる開放的な眺めは、登り切った者だけが味わえる感動を与えてくれます。特に、夜景は徳島を代表する夜景スポットとしても知られ、きらめく街の灯りが美しいコントラストを生み出します。
徳島城での現地体験:歴史散策と文化の触れ合い
徳島城では、ただ歴史的建造物を見て回るだけでなく、様々な体験を通して、その歴史や地域の文化に深く触れることができます。
徳島城博物館での歴史学習
徳島城跡内にある「徳島市立徳島城博物館」は、旧徳島城表御殿と奥御殿があった場所に建てられています。館内には、旧徳島城表御殿の精巧な復元模型や、蜂須賀家政の阿波入国から廃藩置県までの歴史資料、蜂須賀家と阿波にゆかりの美術資料などが常設展示されています。季節ごとの企画展や年に1度の特別展も開催され、貴重な文化財に触れることができます。
旧徳島城表御殿庭園の散策
博物館の観覧料で旧徳島城表御殿庭園にも入場できるため、ぜひ散策を楽しんでください。江戸時代の趣を残す美しい庭園をゆっくりと歩きながら、自然の美と歴史の調和を感じることができます。特に、青石橋の伝説に思いを馳せながら歩くのも一興です。
春の「徳島城阿波おどり」を体験
毎年4月には、徳島城跡で「徳島城 阿波おどり」が開催されます。満開の桜の下で、臨場感あふれる阿波おどりを鑑賞できる貴重な機会です。開催時期に合わせて訪れるのもおすすめです。
徳島城への交通手段:スムーズなアクセス方法
徳島城へのアクセスは、公共交通機関でも車でも非常に便利です。ご自身の旅のスタイルや、他の観光地への移動計画に合わせて、最適な方法を選んでください。
電車・バスでの行き方
徳島城の最寄り駅は、JR「徳島駅」です。徳島駅から徳島城跡までは、徒歩で約10分と非常にアクセスが良いです。また、市営バスを利用する場合は、「徳島公園鷲の門前」バス停で下車するとすぐです。
車での行き方と駐車場情報
お車でお越しの場合、徳島自動車道「徳島IC」から国道11号経由で約10分、または神戸淡路鳴門自動車道・高松自動車道「鳴門IC」から国道11号経由で約20分です。徳島中央公園(徳島城跡)には、公園利用者のための駐車場(有料)があります。
東側駐車場と西・南側駐車場があり、合計で約200台以上駐車可能です。休日や観光シーズンには駐車場が混み合うこともあるため、時間に余裕を持って訪れることをおすすめします。
徳島城周辺の観光名所:歴史と平和、芸術を満喫する
徳島城の周辺には、他にも魅力的な観光名所がたくさんあります。徳島城と合わせて訪れて、徳島市全体の奥深い魅力をさらに感じてみてください。
眉山:徳島市街を見下ろすシンボル
徳島城跡の南側に位置する「眉山(びざん)」は、徳島市のシンボルとして親しまれている山です。眉の形に似ていることからその名が付けられ、万葉集にも詠まれるほど古くから人々に愛されてきました。山頂からは、徳島市街地はもちろん、吉野川や阿讃山脈、瀬戸内海まで一望できる大パノラマが広がります。夜景も美しく、徳島を代表する夜景スポットとしても有名です。阿波おどり会館5階からロープウェイで約6分で山頂にアクセスできます。
阿波おどり会館:阿波おどりの魅力を体感
眉山ロープウェイの山麓駅がある「阿波おどり会館」は、徳島市を訪れたらぜひ立ち寄りたい場所です。阿波おどりの歴史や文化を学ぶことができるミュージアムがあり、立体映像で阿波おどりの熱気を疑似体験できるシアターもあります。また、毎日開催される阿波おどりの実演は必見で、観光客も一緒に踊りに参加できるコーナーもあります。徳島城から徒歩圏内なので、セットでの観光がおすすめです。
新町川水際公園:水辺の散策とLEDアート
徳島市中心部を流れる新町川沿いには、「新町川水際公園」が整備されています。ボードウォークが続き、水辺の散策を楽しめるスポットです。夜には橋がライトアップされ、幻想的なLEDアートが楽しめます。また、遊覧船「ひょうたん島クルーズ」も運航されており、水上から徳島の街並みを眺めることができます。徳島城からもアクセスしやすい場所にあります。
ご当地の味とおすすめ店:徳島城の近くで楽しめる食事
徳島城周辺には、徳島ならではの美味しい料理を楽しめるお店がたくさんあります。観光の合間に、ぜひ地元の味を堪能してください。
徳島ラーメン:すき焼き風ラーメンを体験
徳島のご当地グルメの代表格といえば「徳島ラーメン」です。豚骨ベースの甘辛い醤油ダレスープに、甘辛く煮た豚バラ肉と生卵をトッピングするのが特徴です。「すき焼き風ラーメン」とも呼ばれ、最初はそのまま、途中で生卵を溶いて味の変化を楽しむのが一般的です。スープはあっさり系の「白系」、マイルド系の「黄系」、ベーシックな「茶系」の3種類があり、お店ごとに異なる味を楽しめます。徳島城周辺にも多くのラーメン店があります。
阿波尾鶏(あわおどり):地鶏の旨味を堪能
徳島県が開発した地鶏ブランド「阿波尾鶏」は、広々とした鶏舎でのびのびと育てられた高級鶏肉です。旨味成分のイノシン酸を多く含み、適度な歯ごたえと締まった肉質が特徴です。焼き鳥や串焼き、チキン南蛮など、様々な調理法で味わうことができます。高タンパクで低脂肪というヘルシーさも魅力です。徳島城周辺の居酒屋や郷土料理店で、ぜひ本場の味を体験してください。
フィッシュカツ:徳島のソウルフード
「フィッシュカツ」は、徳島で地元の人々に広く愛されているソウルフードです。魚のすり身にカレー粉や唐辛子を加えて揚げたもので、ピリッとしたスパイシーな味わいが特徴です。徳島では「カツ」というとトンカツではなくフィッシュカツを指すほど親しまれています。軽食やおつまみとして、手軽に楽しめる一品です。徳島城周辺のスーパーや惣菜店、お好み焼き店などで見つけることができます。
周辺名所への行き方:移動もスムーズに
徳島城周辺の観光名所への移動は、徒歩や公共交通機関を利用することで非常にスムーズに行えます。徳島市の中心部にあり、アクセスが良好なため、効率的に観光を楽しめます。
眉山・阿波おどり会館へのアクセス
徳島城から眉山へは、阿波おどり会館まで徒歩でアクセスし、そこからロープウェイを利用するのが便利です。徳島城から阿波おどり会館までは徒歩約10分程度です。
新町川水際公園へのアクセス
新町川水際公園へは、徳島城から徒歩で約10分〜15分程度です。徳島駅からも近く、アクセスしやすい場所にあります。
まとめ:初心者にもおすすめの徳島城、旅の秘訣
徳島城は、青石の美しい石垣と、歴史ある庭園が魅力の城跡です。蜂須賀氏が治めた阿波国の歴史と文化を肌で感じられるだけでなく、周辺には眉山や阿波おどり会館といった徳島を代表する観光スポットが点在しており、見どころ満載です。
見どころが多く、周辺施設や地元グルメを合わせて一日中楽しめる場所ですので、旅の際はぜひ時間にゆとりを持ってお越しください。歴史に触れ、美しい景色を眺め、徳島ならではの美味しい料理を味わう。そんな徳島城への旅は、かけがえのない思い出となるはずです。ぜひ、徳島城で青石の輝きと阿波の歴史に触れてみてください。
この記事を読んでいただきありがとうございました。