山口県萩市に位置する「萩城」は、指月山を背に日本海に面した天然の要害に築かれた城です。慶長9年(1604年)に毛利輝元によって築城され、以来260年以上にわたり長州藩毛利氏の居城として、政治・経済・文化の中心地として栄えました。明治維新後、廃城令により天守閣をはじめとするほとんどの建物が解体されましたが、現在はその城跡が「萩城跡指月公園」として整備され、国の史跡に指定されています。
2015年には「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産の一つとして、世界遺産にも登録されました。城跡には、天守台や石垣、堀などが当時の面影を残し、幕末維新の志士たちが駆け抜けた歴史の舞台を今に伝えています。この記事では、萩城の深い歴史から見どころ、美しい撮影スポット、そして周辺の魅力的な観光地やご当地グルメまで、萩城を心ゆくまで楽しむための情報をお届けします。ぜひ萩城で、歴史の重みと維新の息吹を感じる旅を体験してください。
萩城の歴史:毛利氏の拠点と幕末維新の舞台
毛利輝元による築城と萩の発展
萩城の歴史は、関ヶ原の戦いで敗れ、安芸・周防・長門など8カ国から防長2カ国(現在の山口県)に減封された毛利輝元によって、慶長9年(1604年)に築城が始まったことに端を発します。輝元は、指月山を背にした天然の要害の地に新たな居城を築き、同時に城下町の整備も進めました。
こうして萩は、毛利氏36万9千石(実高63万石とも言われる)の城下町として、政治・経済・文化の中心地として栄えることになります。堅固な石垣と五層の天守閣を持つ壮大な城が築かれ、慶長13年(1608年)に完成しました。萩城は、約260年間にわたり毛利氏の居城として長州藩の藩政を担いました。
幕末維新の胎動と萩城の役割
江戸時代後期、幕末の動乱期において、萩城は歴史の大きな転換点に深く関わります。長州藩は、吉田松陰、高杉晋作、木戸孝允、伊藤博文といった多くの志士を輩出し、明治維新の原動力となりました。萩城は、彼らが育ち、維新への思いを育んだ場所であり、その精神的支柱となりました。
しかし、文久3年(1863年)には、海岸に近く外国船からの攻撃を防ぐことが困難であるという理由から、藩庁が内陸の山口に移されることになります。萩城は藩庁としての機能を失い、明治元年(1869年)には城内の政事堂が藩校明倫館に移され、明治7年(1874年)には廃城令により解体されました。
世界遺産登録と現代への継承
萩城は解体されましたが、その城跡は「萩城跡指月公園」として整備され、国の史跡に指定されました。そして2015年には、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産の一つとして、世界遺産に登録されました。
これは、萩城が単なる城郭としてだけでなく、幕末から明治にかけての日本の近代化に果たした役割が国際的に評価された証です。現在、城跡には天守台や石垣、堀などが残り、当時の面影を偲ばせるとともに、幕末維新の志士たちの息吹を感じられる場所として、多くの観光客が訪れています。
萩城の見どころ:残された遺構と自然の調和
萩城は天守閣が解体された城跡ですが、残された遺構や自然との調和が美しく、見どころが豊富です。城内を巡ることで、当時の築城技術や、城を守る工夫を肌で感じられます。
天守台と石垣
萩城の象徴は、その天守台と石垣です。天守閣は現存しませんが、当時の五層の天守閣がそびえ立っていた天守台は、その規模から往時の壮大さを感じさせます。また、指月山を背にした天然の要害に築かれた城ならではの、自然の地形を巧みに利用した石垣は、堅固な防御力を物語っています。石垣に残る刻印を探しながら散策するのも、歴史のロマンを感じる楽しみ方です。
指月公園と四季折々の花々
萩城跡は現在、「萩城跡指月公園」として整備されており、四季折々の美しい自然を楽しむことができます。特に春には約600本のソメイヨシノが咲き誇る桜の名所として知られ、珍しいミドリヨシノも鑑賞できます。5月にはツツジが池の周りを彩り、美しい回遊式庭園の面影を残しています。公園内には、梨羽家茶室や万歳橋などの旧跡も点在しており、歴史と自然が調和した空間で、ゆっくりと散策を楽しめます。
堀と城下町の面影
萩城の内堀は、当時の城の防御機能を今に伝える重要な遺構です。堀を巡ることで、城の広がりや、複雑な縄張りを実感できます。また、萩城の外堀から外側にあたる城下町は、碁盤目状に区画され、菊屋横町、伊勢屋横町、江戸屋横町といった小路には、現在でも城下町の面影が色濃く残っています。これらの通りを散策することで、当時の武家屋敷や町屋の雰囲気を味わうことができます。
萩城の映える撮影スポット:歴史と自然が織りなす情景を記録する
萩城跡は、その歴史的な遺構と豊かな自然が調和し、一年を通じて様々な表情を見せる撮影スポットに溢れています。訪れる時期や時間帯によって、異なる魅力的な写真を撮影できます。
天守台からの眺望
天守台からは、かつて天守閣から見渡したであろう萩の城下町や、日本海、そして指月山の雄大な景色を一望できます。特に、夕暮れ時には空が茜色に染まり、幻想的な情景が広がります。歴史の舞台となったこの場所から、悠久の時に思いを馳せながらシャッターを切るのもおすすめです。
堀と石垣のコントラスト
萩城の堀と石垣は、その堅固な造りから歴史の重みを感じさせる被写体です。水面に映る石垣や、季節ごとの木々とのコントラストは、美しい一枚を演出します。特に、桜や紅葉の時期には、堀と石垣が織りなす色彩豊かな景観を撮影できます。
城下町の風情
萩城下町は、江戸時代の面影を色濃く残す美しい街並みが広がっており、どこを切り取っても絵になる撮影スポットです。白壁の武家屋敷や、格子戸の町屋、そして石畳の小路など、歴史情緒あふれる風景は、訪れる人々を魅了します。
萩城跡フルコースガイドツアー
萩城跡では、ガイドの案内で本丸・二の丸・三の丸を巡る「萩城フルコースガイドツアー」がおすすめです。約3kmの道のりを歩きながら、萩城の構造や歴史、そして藩士たちの暮らしについて詳しく学ぶことができます。内堀での鯉のエサやり体験も楽しめ、より深く萩城の魅力を体験できます。
着物レンタルと城下町散策
萩城下町は「着物の似合う街」としても知られています。着物レンタルをして、城下町を散策するのは、非日常を体験できる特別な時間となるでしょう。歴史ある街並みを着物姿で歩けば、まるでタイムスリップしたかのような気分を味わえます。また、国指定重要文化財の菊屋家住宅では、美しい庭園を眺めながらお抹茶体験もできます。
萩焼体験
萩は、茶陶として名高い「萩焼」の産地としても有名です。萩城跡周辺には萩焼の資料館や直売店があり、萩焼の歴史や作品に触れることができます。
萩城への交通手段:スムーズなアクセス方法
萩城へのアクセスは、公共交通機関でも車でも非常に便利です。ご自身の旅のスタイルや、他の観光地への移動計画に合わせて、最適な方法を選んでください。
電車・バスでの行き方
萩城の最寄り駅は、JR「東萩駅」です。東萩駅から萩城跡指月公園までは、徒歩で約30分です。または、萩循環まぁーるバス(西回りコース「晋作くん」)に乗車し、「萩城跡・指月公園入口」バス停で下車すると、徒歩約5分で到着します。JR新山口駅からは、高速バス「スーパーはぎ号」が便利です。萩バスセンターで下車後、タクシーまたは循環バスを利用してください。
車での行き方と駐車場情報
お車でお越しの場合、中国自動車道美祢東JCTから小郡萩道路を利用し、絵堂ICから約20分で萩市街地へ到着します。萩城跡指月公園には「萩市指月第一駐車場」があり、普通車51台、大型車2台が駐車可能です。駐車場からは徒歩約4分で萩城跡に到着します。休日や観光シーズンには駐車場が混み合うこともあるため、時間に余裕を持って訪れることをおすすめします。
萩城周辺の観光名所:歴史と自然、芸術を満喫する
萩城の周辺には、他にも魅力的な観光名所がたくさんあります。萩城と合わせて訪れて、萩市全体の奥深い魅力をさらに感じてみてください。
萩城下町:世界遺産の街並みを散策
萩城下町は、高杉晋作誕生地や木戸孝允旧宅など、幕末維新の志士ゆかりの地が点在する歴史的な街並みです。世界文化遺産にも登録されており、白壁の武家屋敷や、昔ながらの町屋が軒を連ね、江戸時代の面影を色濃く残しています。人力車に乗って城下町を巡るのもおすすめです。
松下村塾:吉田松陰が教えを説いた場所
萩城下町から少し離れた場所にある「松下村塾」は、吉田松陰が多くの若者に教えを説き、明治維新の原動力となる人材を育成した私塾です。世界遺産にも登録されており、幕末維新の精神が息づく場所として、多くの歴史ファンが訪れます。当時の学びの雰囲気を肌で感じることができます。
萩博物館:萩の歴史と自然を学ぶ
萩城跡の近くにある「萩博物館」は、萩の歴史、文化、自然について総合的に学ぶことができる博物館です。萩城の歴史や、毛利氏の藩政、幕末維新の資料などが展示されており、萩の魅力を深く知ることができます。特別展も頻繁に開催されています。
ご当地の味とおすすめ店:萩城の近くで楽しめる食事
萩城周辺には、萩ならではの美味しい料理を楽しめるお店がたくさんあります。観光の合間に、ぜひ地元の味を堪能してください。
萩の新鮮な魚介類
日本海に面した萩は、新鮮な海の幸に恵まれています。特に、甘鯛や瀬つきあじ、ケンサキイカなどは萩を代表する魚介類です。お刺身はもちろん、煮付けや焼き物など、様々な調理法で味わうことができます。萩市内の飲食店では、旬の地魚を使った料理を提供しているお店が多くあります。
見蘭牛(けんらんぎゅう)
萩市見島原産の「見島牛」とオランダ牛を交配させた「見蘭牛」は、萩のブランド牛です。きめ細やかな霜降りと、とろけるような食感が特徴で、ステーキや焼肉、タタキなどで味わうことができます。牧場直営のレストランなどでも提供されており、萩の豊かな自然の中で育った上質な牛肉を堪能できます。
夏みかんを使ったスイーツ
萩は、夏みかんの産地としても有名です。城下町には夏みかんの木が至る所に植えられており、その夏みかんを使ったスイーツが人気です。夏みかんソフトクリームやプリン、ジュース、ゼリーなど、爽やかな酸味と甘みが特徴のスイーツを味わうことができます。お土産としても人気の「夏みかん丸漬」もおすすめです。
周辺名所への行き方:移動もスムーズに
萩城周辺の観光名所への移動は、徒歩や公共交通機関を利用することで非常にスムーズに行えます。萩市の中心部にあり、アクセスが良好なため、効率的に観光を楽しめます。
萩城下町へのアクセス
萩城跡から萩城下町へは、徒歩で約5分〜10分程度です。萩循環まぁーるバスも利用できます。
松下村塾へのアクセス
松下村塾へは、JR東萩駅から徒歩約20分、または萩循環まぁーるバス(東回りコース「松陰先生」)に乗車し、「松陰神社前」バス停で下車するとすぐです。
萩博物館へのアクセス
萩博物館は萩城跡から徒歩で約10分ほどの距離にあります。
まとめ:初心者にもおすすめの萩城、旅の秘訣
萩城は、指月山を背に日本海に面した天然の要害に築かれた城であり、長州藩毛利氏の居城として、そして幕末維新の舞台として、日本の歴史に大きな足跡を残しました。現在は城跡として整備され、世界遺産にも登録されています。天守台や石垣、堀などが当時の面影を伝え、訪れる人々に歴史のロマンを感じさせます。
見どころが多く、周辺の城下町や松下村塾、萩焼など、歴史と文化、自然を合わせて一日中楽しめる場所ですので、旅の際はぜひ時間にゆとりを持ってお越しください。歴史に触れ、美しい景色を眺め、萩ならではの美味しい料理を味わう。そんな萩城への旅は、かけがえのない思い出となるはずです。ぜひ、萩城で歴史と維新の息吹に触れてみてください。
この記事を読んでいただきありがとうございました。