広島市街の中心部に位置する広島城は、その美しい姿から「鯉城」の愛称で親しまれています。毛利輝元が築城を開始し、その後、福島正則、浅野氏へと城主が移り、約250年にわたり広島藩の拠点として栄えました。残念ながら、広島城は1945年の原爆投下によって壊滅的な被害を受けましたが、市民の熱い願いと復興への強い思いによって、かつての姿を取り戻しました。
現在、その天守は広島の歴史と文化を伝える博物館として、訪れる人々に感動を与えています。城内では、歴史学習はもちろん、当時の暮らしを垣間見る体験も可能です。この記事では、広島城の深い歴史から見どころ、美しい撮影スポット、そして周辺の魅力的な観光地やご当地グルメまで、広島城を心ゆくまで楽しむための情報をお届けします。ぜひ広島城で、歴史の重みと広島の復興の歩みを感じる旅を体験してください。
広島城の歴史:天下人の夢と城主たちの想い
毛利輝元による築城と広島の発展
広島城の歴史は、安土桃山時代の武将、毛利輝元によって天正17年(1589年)に築城が始まったことに端を発します。輝元は中国地方の中心となる新たな拠点として、太田川のデルタ地帯を選び、大規模な城と城下町の建設に着手しました。これが「広島」の地名の由来とも言われています。
輝元は最新の築城技術を駆使し、堅固な石垣と、五層の大天守、二基の小天守、そしてそれらを結ぶ渡櫓を備えた壮大な城を築き上げました。しかし、関ヶ原の戦いで西軍に与したため、毛利氏は防長二国(現在の山口県)へ移封となり、広島城は新たな歴史を刻むことになります。
福島氏と浅野氏による統治と繁栄
関ヶ原の戦いの後、広島城主となったのは福島正則です。彼は城の改修や城下町の整備に尽力し、広島のさらなる発展に貢献しました。しかし、城の無断修築を理由に改易され、元和5年(1619年)に浅野長晟が新たな城主として入城します。以後、浅野氏が明治維新までの約250年間にわたり、12代にわたって広島城を治めました。
浅野氏の時代には、本丸御殿や櫓、門などの整備が進み、城は藩政の中心として、また文化の中心地として大いに栄えました。城下町も整備され、活気あふれる城下町として発展を遂げました。
近代そして戦災からの復興
明治維新の廃城令により、多くの城が取り壊される中で、広島城も例外ではありませんでした。大部分の建物は解体されましたが、天守閣や一部の櫓は残されました。その後、明治時代には大本営が置かれるなど、軍事的な拠点としての役割も担うようになります。
しかし、1945年8月6日の原子爆弾投下により、広島城は天守閣を含むほとんどの建物が倒壊、焼失するという壊滅的な被害を受けました。戦後の復興期、市民の強い願いと努力により、昭和33年(1958年)に現在の天守閣が再建されました。現在の天守は、広島の歴史を伝える博物館として、平和のシンボルとして、多くの人々にその姿を見せています。
広島城の見どころ:復元天守と巧みな城郭構造
広島城は、その再建された美しい天守閣と、当時の面影を残す城郭構造など、見どころが豊富です。城内を巡ることで、戦国時代から近世にかけての築城技術や、城を守る工夫を肌で感じられます。
広島のシンボル「天守閣」
広島城の象徴は、何と言ってもその再建された天守閣です。五層六階建てのこの天守は、当時の資料に基づいて忠実に外観が復元されており、その威風堂々とした姿は訪れる人々を圧倒します。天守内部は歴史博物館となっており、広島城の歴史、毛利氏や浅野氏の時代の暮らし、そして城下町の様子など、貴重な資料や模型が多数展示されています。
特に、甲冑や刀剣の展示は、歴史好きにはたまらないでしょう。最上階の望楼からは、広島市街はもちろん、遠く瀬戸内海まで見渡せる360度の大パノラマが広がります。ここからの眺めは、登り切った方だけが味わえる格別の感動を与えてくれます。
二の丸と表御門の再建
広島城の大きな見どころの一つに、本丸南側に位置する「二の丸」があります。ここは、城の出入り口を守る重要な防御拠点であり、敵の侵入を防ぐための馬出構造を持っています。現在の二の丸には、原爆で焼失した「表御門」をはじめ、「平櫓」、「多聞櫓」、「太鼓櫓」などが、江戸時代の姿に木造で忠実に復元されています。これらを巡ることで、当時の城の防御機能や、武士たちの生活空間を肌で感じられます。特に、復元された表御門は、その壮麗な姿に目を奪われます。
刻印石が残る石垣
広島城の石垣には、築城に関わった大名や職人の印である「刻印石」が数多く残されています。石垣の表面に刻まれた様々なマークは、当時の技術や、工事に携わった人々の息吹を今に伝えています。特に、福島正則が築いたとされる石垣には多くの刻印が見られます。これらの刻印を探しながら城内を散策するのも、まるで宝探しのような楽しみがあります。一つ一つの石に込められた歴史の物語を想像しながら、散策を楽しんでみてください。
広島城の映える撮影スポット:光と影が織りなす絶景を記録する
広島城は、その復元された美しい姿と広大な敷地、そして周囲の自然との調和から、一年を通じて様々な表情を見せる撮影スポットに溢れています。訪れる時期や時間帯によって、異なる魅力的な写真を撮影できます。
内堀と天守のコントラスト
広島城を最も美しく収めるには、内堀越しからの眺めがおすすめです。水面に映る天守閣や、石垣、そして周囲の木々が織りなす景観は、絵画のような美しさです。特に、天守と二の丸表御門を望むアングルは人気があります。午前中から午後にかけては天守に光が当たりやすく、その漆黒の姿がより一層際立ちます。堀の周囲を一周しながら、様々な角度から天守や櫓、門を撮影するのも、新たな発見があります。
夕焼けに染まるロマンチックな城
夕暮れ時の広島城は、昼間とは異なるロマンチックな表情を見せます。空が茜色に染まり、天守がシルエットとなって浮かび上がる光景は、訪れる人々の心に深く刻まれます。特に、内堀の水面が夕焼けを映し出す様は息をのむ美しさです。夜には城がライトアップされ、闇夜に浮かび上がる漆黒の天守が、幻想的な雰囲気を醸し出します。季節ごとのイベントや、ライトアップの時間帯を調べて訪れると、特別な一枚を撮影できます。
高層ビルからのパノラマビュー
広島城周辺の高層ビルからは、城郭全体の規模を俯瞰できる絶好の撮影スポットが見つかることがあります。例えば、リーガロイヤルホテル広島からの眺望は特に有名で、城全体を一枚の写真に収めたい方には最適な場所です。城の広がりや、複雑な縄張りを上空から捉えることで、その堅固な防御力をより実感できます。昼間はもちろん、ライトアップされた夜景を撮影するのも素晴らしい体験となります。
広島城での現地体験:歴史散策と文化の触れ合い
広島城では、ただ歴史的建造物を見て回るだけでなく、様々な体験を通して、その歴史や地域の文化に深く触れることができます。五感を使って、城の魅力を存分に味わいましょう。
天守閣内部での歴史学習と体験
広島城観光の中心となるのは、やはり天守閣内部の見学です。再建された天守内は歴史博物館となっており、広島城の構造、毛利氏による築城、広島藩の成立から幕末に至るまでの政治の流れなどが、実物の資料や模型、映像などで展示されています。歴史に詳しくない方でも興味を持って学べる工夫が凝らされています。また、天守内には、甲冑(大人用・子ども用)の試着体験コーナーもあり、実際に甲冑を身につけて記念撮影ができます。旅の思い出に、武将気分を味わってみるのはいかがでしょうか。
二の丸御殿での茶の湯体験
二の丸には、復元された「太鼓櫓」や「平櫓」などがあり、当時の城の様子を肌で感じられます。特に、平櫓内では、不定期で茶の湯体験が開催されることがあります。広島藩主浅野家の家老であった上田宗箇が創始した武家茶道「上田宗箇流」に触れる貴重な機会です。静謐な空間で、日本の伝統文化である茶の湯を体験することで、心安らぐひとときを過ごせます。
城下町散策と広島グルメ探訪
広島城周辺には、当時の面影を残す城下町の雰囲気が漂います。歴史ある商店街を散策したり、昔ながらの建物を眺めたりするのも良いでしょう。また、城周辺には広島ならではの美味しいグルメを楽しめるお店がたくさんあります。広島お好み焼きや牡蠣料理など、地元の味を堪能しながら、城下町のにぎわいを感じてみてください。散策の途中で、お気に入りのカフェや食事処を見つけるのも旅の醍醐味です。
広島城への交通手段:スムーズなアクセス方法
広島城へのアクセスは、公共交通機関でも車でも非常に便利です。ご自身の旅のスタイルや、他の観光地への移動計画に合わせて、最適な方法を選んでください。
電車・路面電車での行き方
広島城の最寄り駅は、JR「広島駅」です。広島駅から広島城へは、路面電車を利用するのが最も便利です。広島駅南口前の路面電車乗り場から、1・2・6番電車に乗車し、「紙屋町東」電停で下車してください。電停から広島城までは徒歩で約15分ほどです。または、アストラムライン「城北駅」から徒歩約4分、広島電鉄白島線「白島駅」または「家庭裁判所前駅」から徒歩約8分でもアクセスできます。
バスでの行き方
広島駅からバスを利用する場合は、広島駅南口前のバスのりばから、合同庁舎前経由のバスに乗車し、「合同庁舎前」バス停で下車すると、徒歩約8分で広島城に到着します。また、観光ループバス「めいぷるーぷ」も便利です。広島駅新幹線口側から乗車でき、主要な観光スポットを巡ることができます。
車での行き方と駐車場情報
お車でお越しの場合、広島城跡内には駐車場がありませんので、周辺の有料駐車場をご利用ください。城南通り北側にある「広島城三の丸駐車場」が城に最も近く便利です。ここから天守までは徒歩約5分です。山陽自動車道の「広島インターチェンジ」から一般道へ降りて約20分ほどで到着します。休日や観光シーズンには駐車場が混み合うこともあるため、時間に余裕を持って訪れることをおすすめします。
広島城周辺の観光名所:歴史と平和、芸術を満喫する
広島城の周辺には、他にも魅力的な観光名所がたくさんあります。広島城と合わせて訪れて、広島市全体の奥深い魅力をさらに感じてみてください。
平和記念公園・原爆ドーム・平和記念資料館:平和の尊さを学ぶ場所
広島城から路面電車または徒歩圏内にある「平和記念公園」「原爆ドーム」、そして「平和記念資料館」は、広島を訪れる上で決して外せない場所です。原爆ドームは、被爆の惨状を今に伝える世界遺産であり、平和記念公園は、原爆の犠牲者を追悼し、世界の恒久平和を願う場所です。平和記念資料館では、原爆投下の事実と被害の様子、そして平和へのメッセージが伝えられています。広島城の歴史を学んだ後にこれらの場所を訪れることで、平和の尊さをより深く心に刻むことができます。
縮景園:回遊式日本庭園の美
広島城から東へ徒歩圏内にある「縮景園」は、広島藩主浅野長晟が作庭させた、江戸時代初期を代表する回遊式庭園です。様々な景観が凝縮されていることから「縮景」と名付けられました。池を中心とした美しい庭園で、四季折々の花々や木々が楽しめます。特に、春の桜や秋の紅葉の時期は、その美しさが際立ちます。歴史と自然が調和した空間で、ゆっくりと散策を楽しむのはいかがでしょうか。
ひろしま美術館:近代美術の殿堂
広島城の南側、徒歩圏内にある「ひろしま美術館」は、フランス印象派の作品を中心に、日本の近代洋画、日本画などを幅広く収蔵・展示している美術館です。モネ、ルノワール、ゴッホなどの有名画家の作品を鑑賞できます。歴史だけでなく、芸術にも触れたい方におすすめのスポットです。
ご当地の味とおすすめ店:広島城の近くで楽しめる食事
広島城周辺には、広島ならではの美味しい料理を楽しめるお店がたくさんあります。観光の合間に、ぜひ地元の味を堪能してください。
広島お好み焼き:広島のソウルフード
広島の味の代表格といえば「広島お好み焼き」です。薄く焼いた生地の上に、キャベツや豚肉、中華麺などを重ねて蒸し焼きにし、卵でとじるのが特徴です。お店ごとにこだわりや味が異なり、様々なバリエーションを楽しめます。広島城周辺の繁華街には、多くのお好み焼き店が軒を連ねています。熱々の鉄板で提供される本場の味を、ぜひ体験してみてください。
広島牡蠣:海の幸を堪能
瀬戸内海に面した広島は、豊かな海の幸に恵まれています。特に「広島牡蠣」は全国的にも有名で、新鮮な牡蠣料理を堪能できます。生牡蠣はもちろん、焼き牡蠣、カキフライ、土手鍋など、様々な調理法で味わうことができます。広島城周辺の飲食店や、観光客向けのレストランで、旬の牡蠣をぜひ味わってみてください。
もみじ饅頭:お土産の定番
広島のお土産として外せないのが「もみじ饅頭」です。カエデの葉をかたどった可愛らしい形と、しっとりとしたカステラ生地の中に餡が詰まった優しい甘さが特徴です。定番のこしあんのほか、クリーム、チョコレート、抹茶など、様々な味があります。広島城周辺のお土産物店や、駅構内で手軽に購入できます。旅の思い出に、ご家族や友人へのお土産にも喜ばれる一品です。
周辺名所への行き方:移動もスムーズに
広島城周辺の観光名所への移動は、徒歩や公共交通機関を利用することで非常にスムーズに行えます。広島市の中心部にあり、アクセスが良好なため、効率的に観光を楽しめます。
平和記念公園・原爆ドーム・平和記念資料館へのアクセス
広島城から平和記念公園、原爆ドームへは、路面電車「紙屋町西」電停まで移動し、そこから徒歩すぐです。広島城から約15分〜20分程度の距離です。
縮景園へのアクセス
縮景園は広島城から徒歩で約10分ほどの距離にあります。広島電鉄「縮景園前駅」から徒歩約2分でもアクセス可能です。
ひろしま美術館へのアクセス
ひろしま美術館は広島城から徒歩約5分、広島電鉄「紙屋町東駅」から徒歩約5分です。
まとめ:初心者にもおすすめの広島城、旅の秘訣
広島城は、漆黒の天守閣が美しい「烏城」として知られ、戦災からの復興を経て、歴史と平和の象徴としてその姿を今に伝えるお城です。城内の見学や天守からの雄大な眺望は、訪れる皆様の心に深く印象を残します。歴史的な城郭と、原爆からの復興の歩み、そして周辺の平和記念公園や美しい庭園が織りなす景観は、訪れる人々を魅了します。
見どころが多く、周辺施設や地元グルメを合わせて一日中楽しめる場所ですので、旅の際はぜひ時間にゆとりを持ってお越しください。歴史に触れ、美しい景色を眺め、広島ならではの美味しい料理を味わう。そんな広島城への旅は、かけがえのない思い出となるはずです。ぜひ、広島城で歴史と平和のロマンに触れてみてください。
この記事を読んでいただきありがとうございました。