日本中世終焉の地!九戸城跡で戦国のドラマを体感

戦国時代のお城 一覧

岩手県二戸市に位置する九戸城は、別名「福岡城」とも呼ばれ、戦国時代末期の重要な舞台となりました。特に、豊臣秀吉による天下統一の最終局面で、九戸政実が抵抗した「九戸政実の乱」の地として歴史に名を刻んでいます。

馬淵川と白鳥川に囲まれた天然の要害に築かれたこの城は、その堅固な防御力で知られました。現在は「国指定史跡九戸城跡」として整備され、広大な敷地内に土塁や堀、そして東北最古とされる石垣の遺構が良好に残っています。この記事では、九戸城の奥深い歴史から、見どころ、さらには周辺の観光情報まで、余すことなくご紹介します。

この城跡の持つ歴史的な深さと、それが織りなす風景は、きっとあなたの心を捉えます。さあ、九戸城跡の魅力を一緒に紐解いてみませんか。

九戸城の歴史:誰がいつ築き、どんな役割を果たしたか

九戸城は、明応年間(1492年~1501年)に九戸光政によって築かれたと伝わります。九戸氏は、南部氏の一族でありながら、この地の有力な豪族として独自の勢力を築き上げました。城は、馬淵川と白鳥川が形成する河岸段丘の地形を最大限に利用し、南北500メートル、東西750メートルにも及ぶ広大な規模を誇る平山城でした。それぞれの川床までは約20メートルの落差があり、傾斜角45度以上の断崖が天然の要害となっていました。

九戸城が歴史の表舞台に登場するのは、天正十九年(1591年)の「九戸政実の乱」においてです。豊臣秀吉による奥羽仕置(おううしおき)によって、南部氏の家督が南部信直に継承されたことに不満を抱いた九戸政実は、反旗を翻し、九戸城に立て籠もりました。これに対し、秀吉は豊臣秀次を総大将とし、徳川家康、上杉景勝、前田利家など、全国から九万にも及ぶ大軍を派遣して九戸城を包囲しました。この戦いは、秀吉による天下統一の最後の戦場となり、九戸城は激しい攻防の末に落城しました。

落城後、九戸城は南部信直に引き渡され、「福岡城」と改称されました。信直が盛岡城へ移るまでの間、この城が南部氏の本城として機能しました。その後、寛永十三年(1636年)に廃城となり、その役目を終えました。現在、城跡は国の史跡に指定され、発掘調査と整備が進められています。この歴史の舞台で、激動の戦国時代を生きた人々の営みに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

見どころ紹介:石垣、空堀、土塁などの特徴と魅力

九戸城には天守は現存しませんが、東北地方では最古級とされる石垣や、大規模な空堀、土塁が良好に残されており、当時の城の堅固さと規模を今に伝えています。特に注目すべきは、本丸と二の丸の間に残る石垣です。これは、加工されていない自然石を積み上げた野面積み(のづらづみ)と呼ばれるもので、古式穴太積(こしきあのうつみ)石垣としては東北最北のものとして貴重な存在です。その力強い佇まいからは、往時の築城技術の高さと、敵の侵入を阻むための工夫が感じ取れます。

また、城郭全体に張り巡らされた大規模な空堀も、九戸城の大きな見どころです。特に、松の丸外側の空堀は幅25~40メートル、二の丸外側の空堀は幅40メートル、深さ10~12メートルにも及び、その深さと広さには目を見張るばかりです。これらの空堀は、敵の侵入を阻むだけでなく、城内の区画を明確にする役割も果たしていました。本丸や二の丸、三の丸といった主要な郭の跡地は、広々とした空間が広がり、当時の様子を想像できます。特に、本丸南西隅櫓跡からは、広がる城跡全体を見下ろすことができ、その戦略的な重要性を肌で感じることができます。

城跡には、天正時代の様式を良く残したクランク状の虎口(こぐち)の跡も明確に残されており、巧妙な縄張り(城の設計)を間近で観察できます。これらの遺構一つ一つが、戦国時代の息吹を今に伝えているのです。城内には説明板も設置されており、当時の役割や構造について学びながら散策ができます。歴史の重みと、そこに息づく自然の美しさを肌で感じられる場所です。

映える撮影スポット:人気の撮影場所や時期・時間帯のおすすめ

九戸城跡は、歴史的な価値だけでなく、その美しい景観も写真愛好家にとって人気の撮影スポットです。特に、東北最古級の石垣と、広大な空堀が織りなす地形の美しさは、素晴らしい被写体となります。本丸の石垣は、その力強い存在感が写真に重厚感を与えます。また、二の丸から本丸へ続く空堀の奥行きは、壮大なスケール感を表現するのに最適です。

春には、城跡公園内に植えられた桜が満開となり、ピンク色に染まる城跡は息をのむような美しさです。特に、桜と石垣や土塁のコントラストは、見る者に強い印象を与えます。この時期は多くの観光客で賑わうため、早朝や夕暮れ時を狙うと、より落ち着いて撮影できます。

夏には、青々とした木々の緑が城跡全体を包み込み、清々しい風景が広がります。木々の間から差し込む木漏れ日が、石垣や土塁に美しい陰影を落とします。

秋には、紅葉が城跡を彩り、赤や黄色、オレンジ色のグラデーションが壮大な歴史遺構と見事な調和を見せます。この時期の夕暮れ時には、西日に照らされた城跡が黄金色に輝きます。

冬には、雪に覆われた白銀の城跡が幻想的な美しさを見せます。静寂の中で雪化粧をまとった石垣や土塁は、墨絵のような趣があり、独特の雰囲気を醸し出します。どの季節に訪れても、九戸城跡公園はあなたを魅了します。

現地体験:催し物、展示など観光体験

九戸城跡では、常設の体験プログラムは少ないですが、二戸市では年間を通じて様々な催し物や展示が開催され、歴史や文化に触れる機会を提供しています。特に、二戸市埋蔵文化財センターは、九戸城の歴史を学ぶ上で欠かせない施設です。ここには、九戸城の発掘調査で出土した遺物や、九戸城に関する資料が展示されており、城の歴史や当時の人々の暮らしについて深く学べます。

二戸市埋蔵文化財センターでは、九戸城の御城印(ごじょういん)も購入できます。また、時期によっては、九戸政実を題材にした小説の挿絵展示や、九戸城で月を見る会など、ユニークなイベントが開催されることもあります。これらのイベント情報は、二戸市観光協会のウェブサイトや、現地の観光案内所で確認することをおすすめします。

さらに、「九戸城ボランティアガイドの会」によるガイド活動も行われています(要予約)。専門のガイドの方から、城の歴史や見どころについて詳しい解説を聞くことで、より一層、城巡りが充実します。城跡を巡る際には、散策路が整備されているため、自分のペースでじっくりと見学できます。歴史の重みと、そこに息づく人々の想いを肌で感じられる場所です。

交通手段:電車・乗合自動車・車での行き方、最寄り駅など

九戸城跡へのアクセスは、いくつかの方法があります。

電車を利用する場合: JR東北新幹線またはIGRいわて銀河鉄道の二戸駅が最寄り駅となります。二戸駅から九戸城跡までは、バスまたは徒歩でアクセスできます。二戸駅からは徒歩で約20分から30分かかります。二戸市埋蔵文化財センターまでは徒歩約15分です。

乗合自動車を利用する場合: 二戸駅西口バス乗り場から、JRバス東北の「スワロー号」久慈方面行きに乗車し、「福岡川又(ふくおかかわまた)」バス停で下車します。バス停から九戸城跡ガイドハウスまでは徒歩約5分です。所要時間はバスで約4分と短く、運賃も手頃です。バスの運行本数は限られている場合があるため、事前に時刻表を確認することをおすすめします。

車を利用する場合: 最もアクセスしやすい方法です。八戸自動車道「九戸インターチェンジ」から約15分から20分で九戸城跡に到着します。城跡の敷地内には無料の駐車場が整備されており、安心して駐車できます。名称で検索すると本丸や二の丸に案内される場合があるため、注意が必要です。道中には、岩手ののどかな田園風景が広がり、ドライブも満喫できます。

どの交通手段を選ぶにしても、事前にしっかりと計画を立てておくことが、スムーズな旅の秘訣です。

周辺の観光名所:徒歩・公共交通で行ける名所

九戸城跡を訪れたなら、周辺の魅力的な観光名所もぜひ巡ってみてください。二戸市や九戸村には、城跡以外にも見どころが豊富に存在します。

呑香稲荷神社(どんこういなりじんじゃ): 九戸城跡の南西に位置し、九戸政実の乱の際に、城内に水を供給したという伝説が残る神社です。九戸城跡から徒歩約5分と非常に近く、歴史に触れる散策路の一部として訪れることができます。静かな雰囲気の中で、九戸政実の悲劇的な最期に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

二戸市埋蔵文化財センター: 九戸城の歴史や発掘調査の成果を展示している施設です。九戸城跡から徒歩約20分、またはバスでアクセスできます。九戸城に関する貴重な資料や出土品が展示されており、城の理解を深める上で欠かせない場所です。ここで、九戸城の全貌を知ることができます。

折爪岳(おりつめだけ): 二戸市と九戸村にまたがる標高852.2メートルの山です。九戸城から車で約30分です。山頂からは、360度のパノラマが一望でき、晴れた日には遠く八甲田山や早池峰山を望めます。特に7月上旬から中旬にかけては、100万匹ともいわれるヒメボタルが乱舞する幻想的な光景が見られます。自然を満喫したい方には、ぜひ訪れてほしい場所です。

馬仙峡(ばせんきょう): 馬淵川と安比川の合流点から下流の馬淵川の渓谷で、奇岩「男神岩」と「女神岩」がそびえ立つ景勝地です。九戸城から車で約10分です。四季折々の自然美が人々を魅了し、特に秋の紅葉は素晴らしい景観となります。荘厳な渓谷美は、まさに絶景です。

天台寺(てんだいじ): 奈良時代の開基と伝えられる、北東北の古刹です。九戸城から車で約35分です。深い歴史と神秘に包まれた山寺であり、静寂の中で心が洗われるような体験ができます。豊かな自然に囲まれ、四季折々の表情を見せます。

これらのスポットを巡ることで、九戸城の歴史探訪だけでなく、二戸地域の豊かな自然や文化も満喫できます。

ご当地の味とおすすめ店:城の近くで楽しめる食事&喫茶店

九戸城周辺には、二戸ならではの美味しいご当地グルメを楽しめるお店が点在しています。城巡りの疲れを癒し、地元の味を堪能するのも旅の醍醐味です。

二戸市内の麺料理: 九戸城跡周辺の二戸市内には、ラーメンやそばを提供する飲食店がいくつか見られます。地元の食材を活かした素朴な味わいの麺料理は、旅の途中にぴったりの一品です。例えば、地元の味噌を使ったラーメンや、野菜がたっぷりの定食を提供する店などがあります。

短角牛(たんかくぎゅう): 岩手県北部で飼育される「いわて短角和牛」は、赤身が多く、旨みが凝縮された牛肉として知られています。二戸市内には、短角牛を使ったステーキや焼肉、牛丼などを提供するレストランがあります。肉本来の味を存分に楽しめるでしょう。

南部せんべい: 青森県八戸市から岩手県二戸市にかけての地域で親しまれている伝統的なせんべいです。小麦粉を主原料とし、パリッとした食感と香ばしい風味が特徴です。甘いものから、ゴマやピーナッツなど、様々な種類があります。お土産にも最適であり、多くの店舗で購入できます。

道の駅おりつめ オドデ館: 九戸城から車で約25分ほどの九戸村にあります。地元の特産品や新鮮な野菜、果物が豊富に揃っています。食事処では、地元の食材を使った料理が楽しめます。特に、季節限定の郷土料理や、地元のスイーツも人気です。

おすすめの喫茶店: 二戸市内には、城巡りの後に落ち着いて休憩できる喫茶店やカフェも存在します。地元の食材を使った手作りのケーキや、こだわりのコーヒーを味わいながら、城巡りの思い出を振り返るのも良いものです。レトロな雰囲気の喫茶店で、懐かしい時間を過ごすのも一興です。

これらの美食体験を通して、九戸城の旅をさらに豊かなものにしてください。

周辺名所への行き方:徒歩何分/交通手段などの簡潔な案内

九戸城跡を拠点として、周辺の観光名所へのアクセスを簡潔に紹介します。

  • 呑香稲荷神社:
    九戸城跡から徒歩約5分。
  • 二戸市埋蔵文化財センター:
    九戸城跡から徒歩約20分。または二戸駅からバスで約4分。
  • 折爪岳:
    車で約30分。公共交通機関でのアクセスは不便なため、タクシーやレンタカーの利用が現実的です。
  • 馬仙峡:
    車で約10分。公共交通機関でのアクセスは限られているため、タクシーやレンタカーの利用が便利です。
  • 天台寺:
    車で約35分。公共交通機関でのアクセスは不便なため、タクシーやレンタカーの利用が現実的です。
  • 道の駅おりつめ オドデ館:
    車で約25分。

これらの情報はあくまで目安であり、時間帯や交通状況によって変動する場合があります。時間に余裕を持って計画を立てることをおすすめします。特に公共交通機関を利用する際は、乗り換えや運行本数に注意してください。

まとめ:初心者にもおすすめの理由、旅の秘訣

九戸城跡は、歴史に詳しくない方でも十分に楽しめる、魅力あふれる史跡です。天守などの建物は現存しませんが、東北地方では最古級の石垣や、大規模な空堀、土塁が良好に残されており、その雄大な規模と堅固な防御力を肌で感じられます。整備された公園内を歩けば、歴史の重みを実感しながら、静かな環境で心を落ち着かせられます。特に、九戸政実の乱という、天下統一の最終局面で繰り広げられた激しいドラマに思いを馳せる体験は、深い歴史の物語を感じ取れます。

初めて城を訪れる方でも、二戸市埋蔵文化財センターで城の歴史を学ぶことができ、園内の説明板も充実しているため、無理なく楽しめます。また、周辺には呑香稲荷神社や折爪岳、馬仙峡など、二戸ならではの観光スポットやグルメが豊富にあり、歴史と文化、そして自然を一度に楽しめます。旅の秘訣は、時間にゆとりを持って、城跡の隅々までじっくりと散策することです。その上で、地元のおいしい料理を味わい、二戸の魅力を存分に堪能することに尽きます。

歴史のロマンと美しい風景、そして美食に満ちた九戸城への旅は、きっと忘れられない思い出となるに違いありません。この機会にぜひ、二戸の地へ足を運んでみてください。

この記事を読んでいただきありがとうございました。

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